
WOWWOWのドラマ『ドラフトキング』で、新人スカウトマン役を演じ、好評を博した宮沢氷魚さん。5月15日からは待望の続編がスタートした。撮影やプロモーションなど、慌ただしい日々を送るが、もし休みが取れたらどこへ行きたいか尋ねると、迷わず「渓流釣り」と答えた。宮沢氷魚さんが渓流釣りを趣味にしていることは、ファンの間では知られた話だ。しかも、数ある釣りの中でも特に難易度が高いといわれるフライフィッシングを嗜む。
「フライフィッシングだと、擬似餌のフライで釣るので、1日にチャンスが1回あるかないかってこともあります。興味ない人にとっては、過酷でつまらなそうって感じるのかもしれないですよね。でも、僕は釣れなかったとしても、楽しんでます。日本の渓流は幅が狭く、周囲に木や岩が迫っている地形が多いので、タイトな環境で釣りをしないといけない。竿を振りかぶれない状況も多いので、短い振りでフライを飛ばしたり、糸を川に弛ませておいて、手首の返しだけで狙った場所に落としたりと、いろいろな工夫が必要になります。釣ることがゴールですけど、そんなスキルを習得している時間も楽しいですね」
かつては、父とよく川に入り、1日を過ごした。
「断然、父の方が上手いですよ。山梨県出身で子供の頃から、遊びで釣りをしていた人なので、レベルが違います。僕はようやく自分が飛ばしたいと思ったところに、フライが飛ばせるようになってきた程度です。一緒に行っても、父はああしろこうしろとは言ってきません。子供の頃も竿を渡されて、じゃあまたあとでって感じで。もちろん目の届く場所で釣っているんですけど。ただ、僕らが手こずっていると、グリップを持って、お手本を示してくれることもありました。見るだけでは上達しない。体感してみることで、ああ、これくらいの力加減で投げるのかと、気づくことがあります」
釣りはレジャーであると同時に、大切な親子の時間でもあったのだ。
「しばらく父と釣りができていないのですが、ひさしぶりに行きたいですね。実家を出てからは行きの車の会話もどこかぎこちない。釣りの最中も交わす言葉は最小限。でも、釣りの時間を共有した帰りの車中は、ちょっと深い話ができる。釣りをしながら、同じ景色を見て、穏やかな時間を共有することで、波長があっていくのかもしれません」

釣りを通じて、多くのことを学ぶ宮沢氷魚さん。学生時代に「東京都内の川の環境変化」をテーマに、論文を執筆したこともある。
「釣りを趣味にしたことで、自然との関わり方を学びました。川に行っても、こちらがお邪魔しているという意識で常にいます。ゴミは持ち帰るし、フライや釣り糸などが落ちないようにするのが、家族のルールでした。釣った魚も、全部リリース。あらかじめ針の返しもつぶすなど、魚を傷つけないように細心の注意を払っています。そのぶん、釣りの難易度が上がるのですが、それもまた楽しい。糸のテンションをいかにキープして、ここぞのタイミングで釣り上げるかがポイントになります」
そんな渓流釣りに持っていく欠かせないアイテムは長年使っているフィッシングベストだという。
「ハサミとか、魚が針を飲み込んでしまった時に使う道具とか、どこに何が入っているか、見ないでも取り出せないといけないので、ずっと同じベストを愛用しています。あとは森のなかでも意外と日焼けするので、大きなツバのハットや日焼け止め、虫除けが欠かせません。多少、効果が下がっても、天然由来のものを選ぶようにしています」
話が尽きない釣りの話題を切り上げ、他にやりたいことを尋ねると、野球と語った。
「本当は草野球がしたいんですけど、自チーム9人を集めて、相手も含めたら、18人が集まらないとできない。なかなかハードルが高いので、河川敷で友達とキャッチボールですかね。グラウンドが取れたら、バットを車に積んであるので、ペッパーもできます。キャッチボールだけだと飽きちゃうし、みんな歳なんで肩があがらないんですよ。だからボールが届かない(笑)」
キャッチボールも難しいなら、バッティングセンターへ。マイバッドで白球を打ち返し、汗を流すと語る。

現在、WOWWOWで放送中の「ドラフトキング−BORDER
LINE−」は、プロ野球のスカウトに焦点を当てたドラマだ。前作から続投の宮沢氷魚さんは、元プロ選手で、スカウトに転身した神木良輔を演じている。
「なかなか続編が制作されるようなドラマはないので、とにかく嬉しいですね。前作の時も、野球好きが集まって真剣に撮影する良い現場だったので、次もやろうねという空気感がありました。自分のなかでも、この作品はいつかまたできる、そんな根拠のない期待があったのですが、3年も経つと、それも次第に薄れてきて……。だから、続編の話をいただいた時には、ついに来たか!と喜びました」
3年の時を経て、続編が制作される本作の魅力を宮沢さんは、こう分析する。
「いろんな要素があると思いますが、ひとつは野球が舞台のドラマで、そこにまつわるヒューマンドラマをしっかり描いているところだと思っています。ドラフトを通して、一人ひとりの葛藤や挫折が凝縮されているので、野球に詳しくない人でも、感情移入できて心を動かされるのではないでしょうか。プロになるのが、必ずしも正解じゃない、そんなエピソードも出てきます。あえて社会人野球に残り、家族のそばにいる人生を選択する。プロで成績が奮わなければ、いつ契約が切られるかわからない。野球に限らず、どんな仕事をしていても、あるいは学生だったとしても、人生にはいろんな正解があります。それを上手に描いている作品です」
また、1話30分で気軽に見られるし、テンポ感もある。そして何より、リアリティがあると語る。
「スタッフみんな野球好きだし、なかにはドラフトにかかるくらいの実力だった方もいます。だから演技指導はもちろんですが、野球経験者を多くキャスティングしています。当然、芝居ができないといけないし、経験者といってもブランクがある。でもクランクインの前から個人練習したり、ドラマチームでグラウンドを借りて、練習に明け暮れたと聞きます。カット割や撮影技術である程度の迫力は出せても、投球フォームやスイングは誤魔化せません。だから、ユニフォームの着方に至るまで、リアリティを追求しています。前作の放送のあとに制作された野球ドラマにたくさん役者が引き抜かれていきましたよ」
そう言って笑う。
「シーズン1は、僕が演じた神木の成長物語でもありました。モノローグも僕の声でしたし。ドラフトについての解説を挟みながら、視聴者の多くは神木に寄り添って見ていたはずです。でも、シーズン2では郷原が物語を動かしていきます。そして、彼の人間性がさらに見えてくるのが、今回の見どころのひとつになっています」