暮らし・住まい
【初心者向け】大人の戦車プラモ入門!モデラーたちの作品集
2021.05.27
第一弾では初心者向けのハウツー、第二弾では1DAYモデリングについて紹介した本“ミリタリースケールモデル”連載。最終回となる今回は、その道を極めたモデラーの方々が製作した、渾身の作品を多数紹介。コツコツとその道を極めれば、アートの領域まで到達するかも!? モチベーションを高める意味でも、ぜひ見てください。
▶第一弾:初心者向けキット・道具
▶第二弾:1日モデリングに挑戦
Edit&Text/Takunari Goshima
モデリングが上達する一番の近道とは
モデリングという趣味を楽しみながら長く続けていく、もしくはできるだけ早く上達するためのコツは何か。それは、他のモデラーのつくった多くの作品を見て研究し、さらに自分のつくった作品をより多くの人に見てもらって、お互いの感想や製作技術を共有することだ。
現在はSNSがあるため、自分のつくった作品を世界中の人たちと簡単に共有することができる。作品の投稿を通じて、新たな交友関係が生まれるなんてことも珍しくない。
逆に、直接のコミュニケーションが得意な人は、思い切って模型クラブや同好会に所属するというのも一つの手。同じ趣味を持った同志が集まるクラブなどのコミュニティに入ることで、より多くの情報が共有できるだろう。
コンテストへの出品を目標にするのもあり
もう一歩踏み込んで、コンテストやイベントへの出品を目標にするというのもおすすめ。じつは、コロナ禍前までは、世界中から約7万人のファンが集うプラモデルのビッグイベントが日本国内で開催されていた。このイベントには選ばれしモデラーしか出品できないが、開催期間中に足を運べば、世界中から集まったスペシャルな作品を見ることもできたのだ。
大きなコンテストやイベントには、それなりのスキルが求められるが、最寄りの地区や模型店が主催しているコンテストやイベントには気軽に出品できるものもある。筆者が主催する東京・荻窪で行われる「キヤホビー戦車模型コンテスト(キヤコン)」がそれだ。
毎年、日本全国から50〜100作品の応募があるこのコンテストは、結果発表の際に懇親会という交流の場もある。いうなればオフ会みたいなものだが、実際の作品を前にしての情報交換はかなり盛り上がる。なんといっても生の作品をみながら、作者と会話できるのだから、これ以上はないだろう。
興味をもった方は是非、コンテストやイベントに参加して、さらにミリタリースケールモデルの魅力にどっぷりとハマっていただきたい。
「キヤホビー戦車模型コンテスト(キヤコン)」入賞作品
では、まずは筆者が主催する「キヤホビー戦車模型コンテスト(キヤコン)」での入賞作品をご紹介。つくり手の個性が発揮されたミリタリースケールモデルは、男なら誰しも思わず見入ってしまうのではないだろうか。
01.最も有名なドイツ戦車を当時の仕様で製作
第二次大戦期に開発された、最も有名なドイツ戦車「タイガー戦車」。映画「フューリー」でも登場した世界で1台だけ現存する車輌を、実際に北アフリカで活躍していた時の仕様で製作。「キヤコン2020」銀賞受賞作品。こうしたベースをつけると見栄えも変わり、家に持ち帰っても展示ができる。
02.無改造でキットの造形を生かす
北アフリカでのイギリスのシャーマン戦車と、壊れたドイツ軍トラックを描いたディオラマ作品。なんとこちら、ベース以外のほとんどが買ってきたキットをストレートに組んだだけで構成されたもの。塗装など細部にまでこだわり、丁寧に製作することで目を見張る仕上がりに。「キヤコン2020」金賞作品。
03.タミヤのキットをフルディテールアップ
こちらも北アフリカのドイツ軍サイドカー。キットはタミヤのものをフルディテールアップ。高木氏の作品とは違い、こちらはフィギュアを全てスクラッチ改造して製作している。自然で動きのある作品になっており、随所につくり手のこだわりが感じられる。「キヤコン2019」銀賞作品。
04.映画のワンシーンのような情景
ところ変わってこちらは1960年代ベトナムの情景。M48パットン戦車はドラゴンモデルのキットとレジン製のフィギュアキットを製作し、それらを合わせたディオラマ作品。映画「フルメタル・ジャケット」のワンシーンを想像した人も多いのではないだろうか。こうした情景の製作は、自分がまるで映画監督や戦場ルポライターになったよう。「キヤコン2020」佳作作品。
05.ベトナムのジャングルを再現
ベトナム戦争といえばジャングル。そのジャングルを悠然と前進するM551シェリダン空挺戦車をモデリング。キットはタミヤの新キットを使用。青々としたジャングルの草木は、「紙創り」というメーカーの紙製キットを多用して製作している。「キヤコン2020」佳作作品。
スペシャリストがつくる四駆系スケールモデル
ここからは、コンテスト常連のスペシャリストたちが製作した四駆系のスケールモデルをご紹介。ここまで極めればきっと製作するのも楽しくて仕方ないはず。達人たちのスキルだけでなく、アイディアも参考にしたい。
01.キットの造形を生かした作品
模型誌各誌で活躍しているモデラー、土居雅博氏によるSASジープの作品。実は積載する荷物やバックのサスペンダーなどを追加し、塗装しただけで、ほとんどキットをストレートに組んだだけの作品 。キットの優秀さと楽しさが伝わる作品だ。
SASは、砂漠地帯を単独で長距離移動するためにジープのさまざまな箇所が改造され、荷物も満載されていた。キットはその姿を簡単に楽しめるようになっている。ベースの砂の部分は100円ショップの粘土製。
02.ベースで世界観をつくり込む
こちらは模型コンテストにも展示されたSASジープのディオラマ作品 。SASジープが砂漠で行動する姿にベースをつけてディオラマ作品にしたものだが、ジープ自体にはキットに手を加えていない。ベースをつくるだけでこんなシーンも再現できるのだ。SASは通常ジープ2輌以上で行動していたので、もう一つつくってディオラマにするのもオススメだ。
03.ピンクを生かした個性的な仕上り
このキットの特徴でもある、 ピンク色と車両のあだ名「ピンクパンサー」を生かした作品。車両の運転手を改造し、女性フィギュアとピンクパンサーのフィギュアを他のキットから持ってきて追加している。これもプラモデルならではの楽しさだ。つくり手のセンスが加わったことで、個性的な仕上がりになっているのがポイント。
04.水陸両用の小型四輪駆動車
今回最後にオススメするのは4駆の中でも変わり種 、水陸両用の小型四輪駆動車。アメリカ初の本格水陸両用車両で、フォードGPWのエンジンを使用した車両だ。キットは初期のタミヤキットだが、2014年にフィギュアをつけてリニューアルされたもの。第2次世界大戦中に上陸作戦などに使用され 、「海のジープ」「シープ」「アイゼンハワー のタクシー」などと呼ばれた。ちょっとしたディオラマをつくるには最適なキットだ。
3回の連載にてお届けした、ミリタリースケールモデルの入門企画。お家時間を充実させる趣味としても最適で、ハマればハマるほど奥が深く、飽きることなく楽しめるのも魅力。まずは一つ、製作してみてはいかがだろう。
▶第一弾:初心者向けキット・道具
▶第二弾:1日モデリングに挑戦