自分なりに価値を見出して選んだ愛車に対して、周りから「カッコいいクルマ乗ってるね」とか「そんなクルマあったんだ」と驚かれたり、褒められたりするのはやっぱり気持ちがいい。次に紹介するのはニッチな車種ながら、確固たるスタイルと明確な特徴をもったクルマたち。クーペ、ハッチバックにセダン。東京の街をキビキビと走る姿がなんとも様になる、魅惑のシティービーグルたちをご紹介。


BRACKETS 店主
飯田康貴さん
古着の名店「ジャンティーク」で10年間勤務後、2016年にヨーロッパ古着を主軸に扱う〈BRACKETS(ブラケット)〉を渋谷にオープン。現在は祐天寺と2店舗を展開する、筋金入りの古着好き。
IG:brackets_shibuya

カンヌ映画祭や米アカデミー、日本アカデミーなど国内外で数々の賞を受賞した映画「ドライブ・マイ・カー」。劇中で西島秀俊が演じる主人公の愛車として登場しているクルマが、〈SAAB 900〉というのはマニアの間では有名なハナシ。SAAB(サーブ)はスウェーデンの航空機メーカーを出目にもっていることもあり、当時から先鋭的なデザインを採用していたことでも知られるメーカー。今の時代でもコアなファンをもち、映画の公開以降は、中古車市場でも大人気となっている。

「購入したのは5年くらい前。僕の父親がこれとよく似たデザインのシトロエンBXに乗っていて、それが頭の片隅に残っていたこともあり、乗ってみたいと思ったのがきっかけ。独特の流れるようなフォルムで、チョロQみたいなトイカーっぽさもあり、絶妙なサイズ感も好き。運転していて凄く楽しいクルマです」(飯田さん)
大事に乗ってきたこともあり、大きな不具合もなく今まで快調に乗れているそう。その個体ならではの歴史や時代背景がひとつの魅力となるのは、古着もクルマも同じ。こんなクルマに出合うことができたら、毎日がもっと楽しくなるに違いない。





ビデオグラファー
古江優生さん
大阪生まれ、横浜市出身。ビデオグラファーとして活躍。服好きとしても知られ、インスタのフォロワーは4万人を超える。
IG:yukifurue_

ファッションセンスが良い人のクルマは、やっぱり魅力的だ。古江さんのプジョー106を見ると、それを痛感する。プジョー106といえば、かつてマニアックなクルマ好きたちを虜にした名車。ネオクラシカルなクルマだが、シンプルなのに洗練された雰囲気はヨーロッパ車ならでは。その顔つきやフォルムからもどこかセンスが滲み出ている。走行性能の良さにも定評があり、コンパクトな車体で東京の街中をキビキビと走る姿はなんとも粋。

「父親がクルマ好きでヨーロッパ車に乗っていたこともあり、自分もミッションのヨーロッパ車がいいなと思っていたところ、このクルマと出合いました。踏んだら踏んだ分だけ走ってくれるし、小回りが効くので運転していてとても楽しい。仕事のときは黒とか落ち着いた色の服を着ることが多いので、クルマは派手な色にしたくて、イエローを選びました」(古江さん)
フォトグラファーでもある古江さんは、クルマを手に入れたことで日常的に撮りたい被写体が増えたという。クルマとオーナーの雰囲気がばっちりあっていて、洒落感がある。クルマも含めて“ファッション”を楽しんでいるのだろう。





グーネットマガジン編集部
榎本剛さん
大手中古車情報サイト〈グーネット〉が運営する、カーライフサポートマガジン〈グーネットマガジン〉編集者。Youtubeチャンネル「井戸田潤のグーっとくる車探し」スタッフでもあり、日々多くの魅力的な中古車に触れている。
HP:https://www.goo-net.com/

高級車のイメージがあるメルセデス。確かに最新の設備を搭載した現行車やヴィンテージ車はなかなか手がでないが、90年代前後のヤングタイマーだとちょっと話が違ってくる。大手中古車情報サイトで、日々クルマ選びのヒントになる情報を発信している榎本さん。これまで数えきれないほどの中古車を見てきたなかで、自身のファーストカーに選んだのが、メルセデスの190Eだった。

「いろいろなクルマを見るなかで、一周まわってセダンってカッコいいなと。190Eは当時“小ベンツ”と言われ、5ナンバーサイズに収まるボディで取り回しやすいのですが、内装ひとつとっても当時のSクラスに匹敵するとても凝ったデザイン・仕様が採用されています。通常の190Eは1.9Lエンジンですが、これは2.3リッターエンジンを積んだモデル。走りもとてもパワフルだし、30年以上前のクルマなのに完成度がすごく高くて、一目見てグッときました」(榎本さん)
セダンというと「オジさんが乗るクルマ」というイメージがあったが、現代ではその野暮ったさが逆に新鮮で、ちょっとギラっとした雰囲気もなんだかオシャレに映る。だからと言ってヴィンテージカーほど手がかかるわけでもなく、価格相場だってお買い得すらあるほど。何より単なる懐古主義ではなく、若い世代がこのデザインやスタイルに惹かれ、敢えて選んで乗っているのがカッコいいんじゃないだろうか。



