友達や家族や荷物、ぜーんぶまとめて積めて、街乗りもアウトドアも仕事にも行ける、どこにでも機嫌良く連れていってくれるクルマは、いざ探すとなかなか難しい。いわゆる「ファミリーカー」がだいたいその条件を満たしてくれるから悩む必要はないのだけれど、やっぱり皆が乗っているクルマには乗りたくないし、どうせ乗るなら語れるクルマに乗りたい、という天邪鬼な人ほど難しくなるだろう。ミニバン、ワンボックス、フルサイズバン。そんな悩みに最適解をだした3人と3台をご紹介。


写真家
服部恭平さん
2018年にファッションモデルとして活動する傍ら写真を始める。日常の中で新たな視点を探し、作品を制作している。主な個展に、2020年『2019-2020』(BOOKMARC)、2024年『バコン』(haku kyoto / 229)、2024年『Through the lens of Kyohei Hattori』(agnès b. Shibuya & KyotoBAL)など。
IG:kyoheihattori

世界に誇る自動車大国日本にあっても、2002年の導入以来ずっと際立った存在感を発揮し続けているフレンチ・ミニバンの代表格「ルノー・カングー」。コンパクトなボディに荷物を満載できる積載力の高さから、日々多くの機材を持ち運ぶカメラマンからも人気の高いクルマだ。写真家の服部さんも、実際そんな実用性の面からこのクルマを選んだのだろうと思っていたら、意外な答えが返ってきた。

「カタチと色。ほんとそこが一番です。実際、中古車屋さんに見に行って試乗せず買っちゃったくらいなので(笑)。フランスに仕事で行くことが多いんですけど、カングーってフランスでは郵便配達や集荷車両としても使われている商用車。パリの街中を颯爽と荷物を積んで走っている姿を見て、いいなって思っていたこともあり、乗りたいなと」(服部さん)
気取ったところのない親しみやすいキャラクターと、どこかロマンを感じさせる佇まい。なるほど、服部さんとどこか雰囲気が似ていて、よく似合っているわけだ。





会社員
宇野女希さん
大の古着好きで、古着屋さん開店のため奔走中。年に1回はクルマに乗ってサーフトリップに行くサーファー。’60〜’70年代のレゲエやロックが大好き。
IG:_ride_natty_ride_

今でこそファミリーカーといえば、シエンタやフリードに代表されるミニバンが主流。だが、‘90年代中頃までは家族全員がゆったり乗れて、沢山の荷物が積み込めるワンボックスカーが主役だった。バネットラルゴは、まさにそんな時代に登場したモデルで、車内の快適性が高められた高級志向な1台だった。宇野女さんはそんなバネットラルゴをオークションサイトで、50万円で落札。壊れたところは直しながら少しずつ手を加え、日常の足としてはもちろん、趣味のサーフィンを共にするなど今では手離せない相棒となっている。

「この時代ならではの“いなたい”感じが自分的にはツボ。ヒッピーカルチャーが大好きなので、’60〜’70年代のレゲエやロックをカセットテープでかけながら、トコトコゆっくり走るのが最高の時間です」(宇野女さん)
ちなみに車名のラルゴは、音楽用語で「幅広く緩やかに」という意味のイタリア語。まさに宇野目さんの雰囲気にもぴったり。サーフボードを積み込んで、70年代のレゲエやロックを聴きながら海沿いの町をのんびりと走らせている姿が目に浮かぶ。





フリーランスバイヤー
田村 禪さん
主にアパレルや雑貨を取り扱うバイヤーとして、また各種アパレルやグッズ関連の製造と卸を行うなど幅広く活躍。大のキャンプ好きで、ブーム関係なく現在でも暇があればキャンプへ出掛けている。3児の父。

「デッカいことはいいことだ」が基本のアメリカらしい、いかにもアメリカンで大きなクルマ。アメリカを代表するフルサイズバン「エコノライン」のDNAを受け継ぐEシリーズは、一番コンパクトなモデルでも全長5.5mを超えるビッグボディで、間近で見るとさしずめ小型バスのよう。アメリカでは商用車として馴染み深いクルマだが、日本ではアウトドア好きの趣味人たちにも人気だ。

「アメリカのカルチャーが好きなのでいつかアメ車に乗ってみたかったのと、子供が3人いるので皆でキャンプに行ける大きなクルマがよかったんです。荷物が大量に詰めて、家族で車中泊もできる。実際運転してみると、東京の街でもそこまで大きさは気にならないですよ」(田村さん)
アメ車ならではの太いトルクで、ブロロンとエンジン音を轟かせながら進んでいく様は、やっぱり理屈抜き、問答無用でカッコいい。駐車スペースや燃費など、小さいことを気にしないオーナーパパの器の大きさも含めて。


