
心機一転、部屋の模様替えや持ち物を一新するなど、気分を新たにしたくなる季節だ。また、転職や転勤による引っ越しを控えている人もいるだろう。そんな新生活を迎えるにあたり、センスあるモノに囲まれた暮らしをしてみたいという人もいるのでは? 家具はもちろん、ステーショナリーや食器、植物など、デザイン性に優れたアイテムで生活を彩る。そんな誰もが憧れる、デザインされた暮らしに今こそ挑戦してみては?
Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling:MARIKO KAWADA
Hair&Make:MADOKA FUJII
Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)
2024.1.15


ミッドセンチュリーを代表するデザイナーといえば、Charles & Ray Eamesだろう。Charles Eames(チャールズ・イームズ)は1907年ミズーリ州セントルイス生まれで、Ray Eames(レイ・イームズ)は1912年カリフォルニア州サクラメント生まれ。共にアメリカのクランブルック・アカデミー・オブ・アートで学び、1941年に結婚した。夫婦で活動し、新しい素材や加工技術を家具のデザインにいち早く取り入れたことで知られる。代表作はイームズシェルチェア。当時の最先端技術だったFRP(繊維強化プラスチック)を使った座面は、曲面のフォルムが美しく、令和の今でも特別な存在感を放つ。イームズ夫婦が生み出したシンプルかつ普遍的なデザインの数々は、家具の歴史に大きな革新をもたらしたといえるだろう。
そんな椅子と相対するのは日本が世界に誇るブランド、HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKEだ。「製品プリーツ」というイッセイ ミヤケを代表する技法のひとつをベースに、現代の人々の生活に寄り添う日常着を提案する。デザイン性もさることながら、伸縮性のあるプリーツ素材はシワにならず、乾きやすく、それでいて軽やかな着心地で着る人の個性を引き出してくれる。


GEORGE NELSONも、ミッドセンチュリーのキーパーソンのひとり。イエール大学やローマで建築を学び、建築雑誌の編集者になった彼は、家具メーカーのハーマンミラーを創業したD・J・デ・プリーからデザインディレクターへの就任オファーを受ける。そして、デザインディレクターを務めながら、自身でも自宅やオフィス向けの家具デザインを手がけるようになった。スチールのフレームに18個のクッションを取り付けた「マシュマロソファ」、掛時計のシリーズ「ネルソンクロック」、そして、ニューヨーク近代美術館の永久保存コレクションに加わっている「バブルランプ」などが特に有名な作品だ。また、チャールズ&レイ・イームズ、イサム・ノグチ、アレキサンダー・ジラードといったデザイナーたちに、ハーマンミラーで仕事をするよう働きかけたのも大きな功績だろう。
08サーカスは、デザイナーの森下公則が2010年に立ち上げたファッションブランド。ブランド名の「サーカス」は、イギリスの称号である“Sir”と、顧客を意味する“Customer”を組み合わせたもの。08は自身の名を冠したブランドに、当時から使われてきた「蜂」に由来する。日本製の素材を使い、軽さを意識してデザインされているほか、加工に徹底的なこだわりを見せる。そのためミニマルなデザインにも関わらず、繊細な技術によって日本特有の美しさがあると、世界から評されているブランドだ。年齢と経験を重ね、モノを見る目が育ってきたGOODA世代なら、最高の品質とその機能美を正しく評価できるだろう。




モデルであり、“畑オタク”でもある岡田章吾(Shogo)が、2021年に立ち上げたプロダクトブランドが「KEIMEN(カイメン)」だ。カイメンとは、ドイツ語で“発芽”を意味し、農という営みを通して、自然や知識、人、歴史、思想、発見や変化、そして共鳴に出会えるきっかけになれたらという思いが込められている。農業や畑での土いじりに適していて、なおかつ日常着としても楽しめるアイテムが揃う。いずれも従来の農業が持つファッションのイメージを覆すような、デザイン性の高いアイテムばかりで、注目が集まる。
ホワイトマウンテニアリングは日本発のファッションブランド。相澤陽介が2006年に立ち上げ、都市でもアウトドアというフィールドでも着られる洋服をブランドコンセプトにしている。デザイン、実用性、技術の3つの要素をひとつの形にし、マーケットに屈しない姿勢でのものづくりを掲げる、注目度が高いドメスティックブランドのひとつだ。

COGNOMEN(コグノーメン)は、デザイナーの大江マイケル仁が2020年に立ち上げたメンズブランド。2015年に文化服装学院を卒業した大江は、国内ファッションブランドで生産管理やセールスといった商品企画を経験。その後、自身のブランドとしてCOGNOMENをスタートさせた。デザイナーの大江のルーツである「イギリス」や、幼少期から夢中だったという「サッカー」の要素を落とし込んだストリートウェアである。なお、ブランド名のCOGNOMENはラテン語で「愛称」を意味する。過去の出会いと現在の出会いから新たな人間像を創造し、愛着をもって愛称をつけてもらえるような服づくりを目指しているという。躍進が目立つ東京発のデザイナーズブランドのなかでも、GOODA世代との親和性が高く、チェックしておきたい。

ポルトガルのカルダス・ダス・タイパスという閑静な町に工場をもつカトラリーメーカーが「Cutipol(クチポール)」。1920年代からカトラリーのデザイン、仕上げまでをすべて自社で行い、現在も職人の手によって、一本一本、丁寧につくられている。手作業だからこそ可能な、繊細なカーブやフォークの長い歯といった、洗練されたデザインが特徴だ。そんなCutipolのカトラリーのなかでもアイコン的存在となっているのが、「GOA(ゴア)」シリーズ。デザイナーのホセ・ホアキン・リベイロが人間工学に基づき完成させたもので、無駄を一切排除したエレガントな曲線美は、ほかのカトラリーの追随を許さない。また、同シリーズは、アクセサリーなどにも用いられるレジンという合成樹脂を持ち手部分に使用しているため、軽くて使いやすい。

YAECAは、2002年にデザイナーの服部哲弘と井出恭子が設立したファッションブランド。ブランド名の由来は「八重日(やえか)」で、シンプルで長く着ていけるような日常着をつくることをコンセプトにしている。良質な素材を使用するこだわりをもち、日々を重ねるごとに風合いが増していくのが特徴だ。YAECAに加え、YAECA WRITEとCONTEMPOというラインをもち、前者はヨーロッパのヴィンテージワークウェアをイメージして製作されており、後者はYAECAが独自に開発した2WAYストレッチ生地や上質なカシミヤ素材などを使ったアイテムを中心に展開している。さらに今季からYAECA CANVAS DESIGNというユニフォームラインも誕生。


ハイブリッド車やEV車など、環境に優しい自動車も魅力的だが、デザイン面やカラーリングのアンニュイさでは魅力に乏しい。若者を中心にレトロカルチャーを再評価する動きがあるが、往年のvolvo(ボルボ)のなかでも、クラシックな佇まいが光る240エステート。後継モデルが登場する際に引退するはずだったが、あまりの人気の高さから1993年までデザインと設計を引きずったまま生産され続けたという逸話をもつ。フィヨルドブルーと呼ばれる深みのあるブルーが、更に良い味を出している。
そんなクラシックなvolvo240エステートに合わせるのは、yoshiokuboだ。クチュールからデザインをはじめたデザイナーの久保嘉男が2004年にスタートさせたファッションブランドで、「今まで見たことのないパターンやディテールを追求したい」という思いが込められている。そう聞くと、独善的なクリエイティブを想像するかもしれないが、あくまで着る人の目線で“服のデザインやディテール”をもう一度考えてもらえるような洋服づくりを目指している。上質なパターンや、きめ細かな縫製技術などを生かした着心地の良さは、一度袖を通してみる価値ありだ。

