大人の好きなモノ語り
西川貴教

アーティストとしての表現の幅を広げた西川貴教 × 「ガンダムSEEDシリーズ」の軌跡

Photos:TATSUYA YAMANAKA(Stanford)
Hair & Make-up:KAOLU ASANUMA (Deep-End)
Text:HIROMI YAMANISHI(HISTOREAL)2024.1.26
ストイックな体づくりから発せられるパワフルな歌声と表現力で30年以上にわたり音楽界の第一線で活躍する西川貴教さん。2024年は、自身にとっての“転機”にもなったという「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」への参加でスタート。平成から令和への移り変わりの中で感じたアニメ主題歌という役割、そして約20年という月日を経て完成した映画の一部を担う自身の意気込みを聞いた。

1日5kmのランニングが日課 毎日使うスニーカーの進化に注目

鍛え抜かれた身体にジャケットをスタイリッシュに着こなす西川貴教さん。徹底した肉体管理、健康維持を20年以上続けているという西川さんの日課は、「1日5kmのランニング」だという。

「フィットネスのエビデンスは毎日変わるので、肉体管理 に効果があると言われている動きや、健康維持に良いとされていたサプリメントが、1年も経たないうちに逆のことを言われることも多いんです。そんななかで『ランニング』は変わらず有用性があるとされているので、僕にとって長年、食事や歯磨きと同様の習慣になっています。あまり長時間走り続けてもストレスホルモンが分泌されるし、長距離を走れる体にするよりも皮下脂肪を燃焼させることに注力しているので、心拍数120前後を維持する“ランニングとウォーキングの間”くらいの“早歩き”で行うようにしています」

性格的には「モノに固執するほうではない」という西川さんだが、毎日のランニングのために、毎年注目してしまう“モノ”がある。

スニーカー

「毎年、スニーカーの機能がアップデートされていくんですが、最初は『毎年買い直す必要あるかな?』と半信半疑だったんですけど、実際試してみると前年よりさらに履きやすいし軽いし走りやすいものが出てくる。2024年1月リリースの『ナイキアルファフライ 3 プロト』を早速購入したんですが、これがすごい。かかとの部分が削られていて前傾になりやすいんです。毎日使うものなので、スニーカーの進化はついつい追ってしまいますね」

西川貴教

TVアニメ「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」(2002年〜2008年)ではT.M.Revolutionとして楽曲を提供、声優としても出演。思い入れのあるこの「ガンダムSEEDシリーズ」の最新作、公開中の『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』では主題歌を担当。その曲の入ったシングル「FREEDOM」は「オリジナルガンプラ」付きの完全生産限定盤も発売した。

「ガンプラブームの渦中だったのが、僕の子ども時代。そんな時代を過ごした自分がまさかガンダムシリーズに出演して、よもや専用機が持てるとは思ってもみなかったので、感無量でした。そういったこともあって、今回特殊な素材を使った素晴らしいクリアタイプ(ポラライズドクリア)の『フリーダムガンダム』を付属した形態も発売しました」

物語冒頭の主題歌には、作った人間の思いを刻む必要がある

楽曲「FREEDOM」は小室哲哉氏が作詞・作曲・プロデュース。小室さんと西川さんのタッグは意外にも“初”となる。西川さんの力強く艶やかな声で始まる、果てしない奥行きを感じさせる壮大なナンバーだ。

「小室さんが所属しているバンド、TM NETWORKと共通のスタッフがいたことからT.M.Revolutionは始まったので、今回はご先祖と一緒に仕事をさせていただいた思いです。最近のヒット曲はトータル3分くらいで、テンポが早くて歌詞にワードが詰め込まれているものが多いなか『FREEDOM』は5分以上あって、“言葉とメロディーを届ける”ことに注力したナンバーだと思います。不思議な魅力があって何度も聴いて口ずさむうちにどんどん世界観が見えてくる」

2006年に映画版の制作が発表され、その後は長らく続報が途絶えていた劇場映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、実に約18年の月日を経て完成に至った。

「作品と寄り添う形のものを小室さんと1から制作していったのですが、こちらが込めた思いを監督から作品を通して返していただくというリレーができた作品になりました。みなさんに18年という月日をお待たせした以上、冒頭で流れる主題歌には作品を作った人間、関わった人間がどんな思いをこの作品に込めているのかを刻む必要がある。それを表現した結果が今回のアプローチで、歌唱については僕がどうしようと考えたというより、自然と楽曲に引っ張られてこういう形になった気がします」

西川貴教

昭和で視聴者として『機動戦士ガンダム』に出会い、平成でTVシリーズ『機動戦士ガンダムSEED』に初めて携わり、そして令和で再び映画シリーズに名を連ねた西川さんにとって、ガンダムシリーズとはどんな作品なのか。

「キャストのみなさんのフレッシュな表現力もあって、作品は年月の経過をを全く感じない、地続きになっている印象を受けました。『機動戦士ガンダムSEED』以前では、ポピュラーミュージックのアーティストが楽曲を提供する際は、作品の内容やテーマ性とは多少、乖離したものがあったように思います。この20年で『一度でいいからアニメの主題歌を担当したい』というアーティストも増えてきた。キャストのみなさんを交えたイベントだったり、TVアニメの1クールずつで主題歌を変えて物語を紡いでいくシステムだったり、今ではあたりまえになっているものをゼロから作り上げた作品が『機動戦士ガンダムSEED』だと思うんです。

僕自身もアニメやコミック、ゲームが好きな人間なので、この作品を機に主題歌を提供するだけではなくて、作品の世界観を踏襲しながらアーティストとして表現し、聴く人に届けたいという思いが強くなりました。これ以降多くの作品に携わらせていただけるようになりましたし、転換期となった作品だと思っています。社会情勢も変化して、僕らの時代に観ていたアニメの中で起こっていたような事態も、現代では架空のものではなくなってきている部分もある。今後もアニメという舞台を使って、その時代だからこそ届けられる楽曲を発表していけたらと思っています」

西川貴教
映画情報 CD情報

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

『機動戦士ガンダムSEED 
FREEDOM』

【原作】矢立 肇、富野由悠季
【監督】福田己津央
【主題歌】西川貴教 with t.komuro 「FREEDOM」
【キャスト】保志総一朗、田中理恵、石田 彰、森なな子、鈴村健一、坂本真綾、折笠富美子ほか
【製作】バンダイナムコフィルムワークス
【配給】バンダイナムコフィルムワークス、松竹

2024年1月26日より、全国にて公開

C.E.75、戦いはまだ続いていた。独立運動、ブルーコスモスによる侵攻……、事態を沈静化するべく、ラクスを初代総裁とする世界平和監視機構・コンパスが創設され、キラたちはその一員として各地の戦闘に介入する。そんな折、新興国、ファウンデーション王国から、ブルーコスモス本拠地への合同作戦を提案される。 2002年10月より全50話で放送されたTVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』、2004年10月から全50話で放送された続編となるTVアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に続く、シリーズ最新作。

『FREEDOM』
西川貴教 with t.komuro

『FREEDOM』
西川貴教 with t.komuro

ソニー・ミュージックレーベルズ
6000円(税込)(完全生産限定盤 CD+オリジナルガンプラ)
1300円(税込)(通常盤 CD)

Profile

にしかわ・たかのり●
1970年9月19日、滋賀県出身。1996年5月、ソロプロジェクト「T.M.Revolution」としてシングル「独裁monopolize-」でデビュー。「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITEBREATH」「INVOKE -インヴォーク-」など大ヒット曲を連発。2018年からは西川貴教名義での音楽活動を本格的に開始。2019年にはNHK連続テレビ小説「スカーレット」に俳優として出演。故郷である滋賀県から2008年「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、翌2009年より県初の大型野外音楽イベント「イナズマロックフェス」を主催。2020年度滋賀県文化功労賞受賞。