大人の好きなモノ語り
手越祐也
GOODA 10周年号 スペシャルver.

【手越祐也インタビュー】手越流ポジティブのつくり方

Interview 手越祐也
Photos:TATSUYA YAMANAKA(Stanford)
Text:HIROMI YAMANISHI(HISTOREAL)2022.8.31
2021年7月の音楽活動再開以来、リリース、ライブなど怒涛の活動をしている手越祐也さん。代名詞ともいえる“ポジティブ”をつくり上げたと自負する「旅」について、初の英語詞で挑む新曲と今後の展望、そしてファンに対する思いを、手越さんならではの口調で熱く語ってくれた。

旅には、“ポジティブ”といわれる手越祐也の根源性がある

かつて出演していたバラエティ番組では、「少なくとも2か月に1回は海外に行っていた」という手越祐也さん。手越さんといえば誰もが思い浮かべる“ポジティブ”というイメージ。そうなったのは、“旅”が大きく影響するという。

「特に海外なんですが、旅のなかで普段の生活とは違う文化に触れることは、僕はめちゃくちゃ大事だと思うんです。これは直に人間の世界観、価値観、視野につながってくる。番組では大都市や観光地だけではなく、水道が通っていなかったり、トイレ事情も日本とは全く違っていたり、外を歩くのも危険な町にもたくさん行きました。

そんな経験があってか、たとえば日本のレストランに入ってテーブルがキレイに片付いていなかったり、店員さんの態度がイマイチよくなかったとしても、僕はなんとも思わなくなった。そこでイラっとするかしないかで、ポジティブでいられるかネガティブになるか差が出ると思うんです。

旅には“ポジティブ”といわれている僕の根源性があって、32歳で独立して、もう1回チャレンジしようと思えたのもそのおかげ。ポジティブなほうが人生は楽しいですよ。僕の人生をコピペしてみんなに見せられたら最高なんですけど」

手越祐也

独立してからはYouTubeなどのメディアを使って、積極的に自分の思いを伝えている手越さん。グループ在籍時代に何度かインタビューをさせてもらったことがあるのだが、当時もアーティストとしてやりたいことがあふれていたのだが、それがなかなか実現しないもどかしさを、言葉を選びながら慎重に語っていたのを思い出す。それについて話すと……。

「その時のインタビュー、覚えていますよ。当時はやりたいと言ってできることも少なかったし、できても1〜2年先になることも多かった。今はやりたいことは半年以内で叶えられるようになりましたね。1年間の音楽活動の量は、独立してからはレコーディングやライブ、音楽番組出演などで、それまでの10倍くらいになっていると思います。独立するまでの17年間も最高に楽しかったけど、今と同じくらいの音楽活動をやれていたら……とは思いますね。

今は音楽フェスに出てほかのアーティストのパフォーマンスや演出を見たり、一緒にセッションしたり、それが全部自分の音楽活動の栄養になっている感じがしています。この1年で、今までの4~5年分の成長ができている自信がありますね。1年間の活動は濃いほうがいい。来年もこれよりもペースを落とすことはないです」

グループ時代からの念願でもあった、音楽活動の拡大。それには自身の成長とともに、自身の音楽を聴いてくれるオーディエンスの分母を増やすという目的もあったという。

「僕のことは“イッテQのポジティブな兄ちゃん”というイメージが強いと思うんですが、一番自信をもっていることは“歌”です。まずはそれを聴いて、観ていただきたいという思いがあります。『手越ってアイドルだと思ってけど、本気で歌、やってるじゃん』と10人でも20人でも思ってもらうことができたら、アーティスト手越祐也のパワーはどんどん強くなっていくと思っています。とはいえ、聴いてもらっても響かないことがあることも承知しています。少しでも僕の音楽を聴いてくれる隙間を開けてくれている人に、届く可能性はあると思ってやっています」

手越祐也さんの旅アイテム
「初めての海外は、16歳か17歳で仕事で行った台湾。当時も世界的にウイルスが流行している時期で、外出はほとんどできなかったんです。そのとき現地のスタッフの方が『台湾のアーティストも愛用していて、のどにいい』と用意してくれていたのがこのキャンディー。インターネットで注文できるので、それ以来ずっと愛用しています」
手越祐也さんの旅アイテム
「海外の空港では、スタッフの方がスーツケースを放り投げるようなところもあるんです。それで一度このスーツケースは凹んだんですけど、何十カ国も旅を共にしてきたので、修理に出しつつ10年以上使っています。旅行先で買って貼ったステッカーもいい具合にはがれて味わいに。パリのシャルル ドゴール空港でのロストバゲージも乗り越えて戻ってきたので、愛着もひとしおです(笑)」
手越祐也

ファンと自分の両方が満足する着地点を探していきたい

独立し2021年7月に第一弾デジタルシングルをリリースして以来、さまざまな音楽活動を行っている手越さんが、2022年に入って既に3作目となる9枚目のシングル「HOTEL」を配信リリースする。なんと今回は、全編“英語詞”。1回聴いて、まずはその英語の発音の素晴らしさに驚く。

「独立してからは先生について、ある程度の英語の勉強をしているんですが、それまではずっと独学でした。海外に行ったときは、積極的にカタコトで人とコミュニケーションをしていましたね。あとはカラオケで海外アーティストの歌を歌うときに、“R”と”L”の発音や単語と単語のつながりを、英語らしく聴こえるようにマネするのが得意で。耳は割といいほうだとは思うんですが、英語はやっぱりメンタルですよ! カッコつけずに一生懸命伝えようとしていたら伝わるようになる」

SNSでの活動も増え、海外のファンからの応援も肌で感じるようになったことも、今回の英語詞につながった一因だという。

「僕のことを応援してくれるファンは、結構海外の方も多いんです。このあたりで世界のファンに届く言語で歌いたいな、というのもあったし、今後の予定で海外を見据えている部分もある。海外でライブをやるときにフックになるので、まずは1曲英語詞のポップな曲があったほうがいいなと思ったんです」

「HOTEL」というタイトルだけ聴いたときは、「どんな曲なんだろう?」と思ったのだが、聴いてみると歌詞、サウンド共に古き良きアメリカ映画のシーンのようなスタイリッシュで心地いいポップさであふれたナンバーだった。手越さんが楽曲作りの段階でリクエストした部分はあるのだろうか。

「確かに『HOTEL』というタイトルだけ見たら、『ムーディなサウンドかも?』と思いますよね(笑)。同音異義語が多くて細かいニュアンスも伝わるところが日本語の美しさだと思いますが、英語はもっとアバウトでそういうところが僕はいいなと思うんです。『一緒にHOTELで楽しもう』という世界観の歌詞で、そこまで深い意味はないし難しい単語は使っていない。

メロディーもキャッチーにして、日本のファンにおぼえやすいサウンドにしたいということは最初から話していました。あとは繰り返しのサビを多めにして、1、2回聴いたら誰もが鼻歌で口ずさめるようにはしたかったんです。曲については完成するまで、制作陣とはキャッチボールを続けました」

手越祐也

世界に向けたこの楽曲をきっかけに、手越さんの音楽は変わっていくのか?

「僕自身が大事にしているのは、『マンネリ化しない』『飽きさせない』ということ。2021年は7月から12月まで6か月連続新曲を配信してきましたが、1曲ずつ違うタイプの曲をつくってきたし、アルバム『NEW FRONTIER』も僕のやりたいことを全て入れた“オールスター”にしたんです。2022年も4月にダークなリズムで夜を感じさせる『MAZE WORLD』を、7月に応援歌的意味合いの強い『OVER YOU(feat.マイキ)』をリリースし、『HOTEL』はそれとは全く違うポップなアメリカンサウンドにした。リリースごとのサプライズは延々続けていくつもりです』

10月5日には初のミニアルバム『Music Connect』をリリース。インタビューしたこの日は、ちょうどレコーディングを終えたばかりだったのだそう。どんなミニアルバムになりそうなのか?

「僕は総合エンターテイメントとして、いろんな面を見せていきたいんです。バラードもロックもジャジーなナンバーもポップなナンバーも歌える自信があるので、ひとつのジャンルには絞りたくない。絞ってしまうのはもったいないと自分でも思っているので、今回もミニアルバムとはいえフルアルバムと同じ充実感、いや濃縮感かな。やりたいことは“全部入れ”になっています!」

グループ時代には、作詞・作曲も行っていたが、今後それは期待できそうなのか聞くと。

「僕は曲をつくるのが早いし、良いタイミングで発表したいと思っています。ファンの人たちも僕のつくった曲を待ってくれている人もいるので。今はありがたいことに“手越祐也に歌ってほしい”という曲がたくさん届いているので、今はそれに僕の意見、エッセンスを思い切り入れ楽曲をリリースしています」

グループ時代からファンに対する強い愛情を度々公言していきた手越さん。独立してアーティストとしての新たな章に入っても、“ファンのため”という意識はブレない。

「普段から応援してくれて、ライブ会場に足を運んでくれるファンの心に届いて、愛してくれる曲をリリースすることが一番大事だと思っています。かと言って、そちらに寄りすぎるにもアーティストとしてよくないと思っている。楽曲もライブも衣装もヘアスタイルも、ファンの人が観たい聴きたい手越祐也と、自分がやりたいことの着地点を探す、両方が満足できるものをこれからも練っていきたいと思っています」

Music Review
手越祐也『HOTEL』

『HOTEL』

軽快なテンポのリズムに乗せて、超ポジティブで陽気な青年と彼が大好きな女の子とのストーリーを描いた、ドライブチューン。

8月31日配信
フォーライフ ミュージックエンタテイメント

Profile

手越祐也 1987年11月11日生まれ。神奈川県横浜市出身。15歳で男性アイドルグループのメンバーとしてデビューし、17年間活動。独立後はTwitter、Instagram、YouTubeなどのSNSを開設。2021年7月より、音楽活動を本格再開。2022年10月5日にはミニアルバム「Music Connect」をリリース。ツアー「手越祐也LIVE TOUR 2022『Music Connect』」が10月12日KT Zepp Yokohamaよりスタートする。