達人は語る 「インディーズ打楽器は最高だ!」03 ジェンベ

ジェンベ

“叩く”ことであらゆるものを越えていく!

数ある民族打楽器のなかでも、時代とともに進化しながら脱テリトリー化し、「楽器」としての個性をもつようになったジェンベ。西アフリカだけでなく世界中で愛されている楽器だが、ここ日本においてもその人気は高く、その奥深き世界に魅せられている人も多い。今回は「世界で一番ジェンベが好き」だと自負し、寝ている時も夢のなかでジェンベのことを考えているという、東京ジェンベファクトリーの佐々木さんに、その魅力や簡単な叩き方などを教えてもらった。

この人に聞きました!
東京ジェンベファクトリー主宰、ジェンベ講師 佐々木秀人さん

東京ジェンベファクトリー主宰、ジェンベ講師
佐々木秀人さん

1991年にジェンベに出合い、どっぷりとジェンベの世界にハマる。2001年にジェンベのネットショップ「楽屋」を創設。2006年にジェンベの販売から張替え、修理を行う専門店「東京ジェンベファクトリー」を創設。初心者へのプレジェンベ教室を毎週行うほか、全国のジェンベチームと「全国ジェンベ大発表宴会」を企画するなどジェンベの普及、発展にも尽力している。

ジェンベってどんな楽器!?

「ジェンベは西アフリカ発祥の打楽器で、約1000年の歴史があるといわれています。諸説あるのですが、粟(あわ)とか稗(ひえ)をひく「臼」に皮を張って、太鼓にしたものが始まりだそう。1本の広葉樹から形を掘り出して、片面にヤギや牛の皮を強く張ったシンプルな楽器です。西アフリカでは農耕や結婚式、おめでたいお祭りや、割礼の際などにも演奏されてきました。ジェンベやドゥンドゥンという筒状の太鼓をダンスと共に叩き、リズムを奏でるのが伝統的なスタイルです」

ジェンベ
ジェンベは木をくり抜いてつくられたボディに、動物の皮を張ったヘッド、ボディに合わせて丸く成型されたリング、ヘッドの皮を張るためのロープで構成されたシンプルな太鼓。ヘッドを手で叩いて音を出す。
ジェンベ
演奏する時はジェンベのほかにドゥンドゥンやコンゴニと呼ばれる太鼓などと一緒に演奏されることが多い。それぞれ違うリズムを刻みながら、全体としてひとつの音楽にしていく。

「伝統的なジェンベは1本の広葉樹を刃物でくり抜いてつくっており、そこに動物の皮を鉄のリングで挟み、ロープでテンションをかけています。現在のような合成樹脂製のロープと鉄製のリングになる前は牛皮の撚り紐が使われており、今のようにしっかりテンションをかけることができませんでした。今の形は1980年頃から広まり始めたといわれているので、時代の変遷とともに進化もしています。皮の張り替えやチューニングによる調整、リングやロープなどの各パーツ交換もできるので、ひとつ買うと、本当に末長く使える楽器ですよ」

ジェンベ

ジェンベは大きさやボディの形状、木の素材などもさまざま。世界中で成人によく叩かれているサイズは写真中央にあるような30センチから34センチの打面口径で、西アフリカ現地のお祭りなどで叩かれているのもこのサイズ。低音・中音・高音のバランスがとても良く、ジェンベの魅力を最も感じられる。写真右の38センチを超える大きな打面口径のジェンベを、現地では「ジェンベバー」 と呼び(バーとは「大きい」を表すマリンケ語&バンバラ語)日本でも一部愛好家が愛用している。伝統的なジェンベはすべて天然木が使われていて、生産国や地域によって樹木の種類も異なる。

ジェンベの魅力とは?

ジェンベを介して会話する!?性別も人種も国境も関係なし
ジェンベ
ジェンベ

「ジェンベは一人で突き詰めていくのももちろん良いのですが、人と演奏するともっと楽しく感じられると思います。一緒に叩いている人と音を通して意思疎通を図り、リズムや音の大きさを合わせていくのが本当に楽しい。時にはこっちが合わせて欲しいタイミングに合わせてくれず、上手くいかないこともあります。でも、それを繰り返していって、突然バチっと合う瞬間があったりだとか。どんな楽器もそういう部分はあると思うのですが、ジェンベはそれが如実に出る楽器だと思います。性別も職種も、人種も宗教も国籍も全く関係なく、ジェンベを介してどんな人とでも通じ合える。僕はそこが本当に大好きです」

佐々木さんのジェンベ仲間でもあり、ジェンベプレイヤーの左からデズリーさん、ミサキさん、渡部さん

Player’s Voice

佐々木さんのジェンベ仲間でもあり、ジェンベプレイヤーの左からデズリーさん、ミサキさん、渡部さん。「ジェンベはコミュニケーションが必要な楽器で、技術も必要だけど、それだけじゃないところが面白い(デズリーさん)」。「ジェンベはもちろんですが、西アフリカ特有の音が好き(ミサキさん)」。「全国に沢山ジェンベチームがあって、仲間が沢山できるのも楽しいです(渡部さん)」。ジェンベはひとりで練習するのも良いが、仲間がいたほうが絶対に楽しいと3人も口を揃える。

何年やっても飽きない!アフリカ楽器ならではの奥深さ
ジェンベ
佐々木さんはアフリカンへのリスペクトを持ち続け、彼らに少しでも近づきたいという思いでやっているという。

「僕はジェンベと出合って約30年経ちますが、今でも全く飽きません。僕と同じくらいやっている友人たちも、みんなそう言っています。アフリカの楽器をやったことがある人なら感じたことがあるかと思いますが、アフリカ人のリズムは何か異質なエネルギーのようなものがあって、そこに身を委ねるととても元気が出てくるんです。もし機会があれば、ぜひアフリカ人ジェンベ奏者の演奏を聞いてみてもらいたいですね。本当に全然違うし、聞いているだけで幸せな気持ちになれるはず。本場アフリカンのリズムを実際に感じて、ぜひその魅惑の世界に身を委ねてもらいたいなと思います」

最高のコミュニケーションツール!全国津々浦々に仲間ができる
ジェンベ
ジェンベ愛好家は全国におり、佐々木さんは積極的に交流を深めている。
ジェンベ
佐々木さんが毎週行っているレッスンの様子。初心者の人はこういうワークショップなどに参加すれば、上達が早くなるだけでなく仲間も見つけやすいはず。

「ジェンベはメジャーな楽器に比べるとまだまだ叩いている人は少ないですが、それでも数ある民族楽器のなかではとても多くの人に愛されている打楽器です。東京だけでも多くのジェンベチームがありますし、全国を見渡しても、おそらく各市区町村にひとつはジェンベチームがあるのではないでしょうか。ジェンベは人と一緒に演奏するのがとても面白いと言いましたが、一緒に演奏し、楽しむ相手を探すのにさほど困らないと思います。そして、一緒に叩けばすぐに心が通じ合えるはずです!」

佐々木さんが企画する全国ジェンベチームの「大発表宴会」

佐々木さんはジェンベの輪を広げるべく、全国津々浦々のジェンベチームと交流を深めてきたが、コロナ禍で仲間と一緒に集まってジェンベを叩ける機会が激減。せっかく温めてきたジェンベ熱を覚まさないよう、全国のジェンベチームを周り演奏映像を撮り溜め、それを見ながら皆でzoom飲み会する「全国ジェンベ大発表会」を実施。コロナが落ち着き始めた今、今度はリアルに皆で集まり大発表宴会を行うことを企画しているそう。

佐々木さんが企画する全国ジェンベチームの「大発表宴会」
コロナ禍に行われた「全国ジェンベ大発表宴会」の様子。北海道から沖縄まで、ジェンベをこよなく愛する全26チームが参加した。

動きを動画でCheck!

まずはここから!

ジェンベ 基本の動きを覚えよう

ジェンベを叩いてみたくなったら、まずは、基本姿勢と、すべての基礎となる3つの音の出し方を覚えよう!
最初はうまく音を出せなくとも、何度もやればコツが掴めるはずだ。

叩く時の基本姿勢

叩く時の基本姿勢
「まずは椅子に浅く腰掛けて、足を開いてその間にジェンベを置きます」
叩く時の基本姿勢
「そのまま自分のほうに引き寄せて、前側に少しだけ倒します。ジェンベは木がくり抜かれてつくられているので、下部分が大きく開いています。ここを地面でふさいでしまうと音が出ません」
「そして、内腿でがっちりと挟んでグラグラしないようにしっかりと固定します。これが基本姿勢になります。前に倒す角度は、自分が叩きやすいところで、叩きながら微調整していきましょう」
叩く時の基本姿勢

基本となる3つの叩き方をマスターしよう

低音

低音

「低音は、音のイメージとなるのが“あいうえお“の“お”。手の平全体を使って、打面の真ん中部分に落とすように叩きます。力を入れず、そのまま下に落とすだけ。そうすると、ドゥーンという低い音が出ます。力を入れて叩くとパチっという破裂音が混ざってしまうので、力を抜くことが大事です」

中音

「中音は、音のイメージとなるのが“あいうえお“の“う”。手の平の、指の付け根の下にあるぷにぷにした部分から上の部分全体を使い、打面の縁にぷにぷにしたところが当たるイメージで叩きます。この際、親指が当たると痛いので、親指は当たらないようにしましょう。脇をあまり広げず、肘がぶれないように手をあげて、力を抜いて落とします。落とす時、打面の皮の下にもう1枚皮があるイメージで、そこを叩くくらいの力の入れ方が良いと思います。そうすると、トーンという乾いた中音が鳴ると思います」
中音
高音

高音

「高音は、音のイメージとなるのが“あいうえお“の“あ”。中音“う”の音と当てる場所は同じですが、叩き方が異なります。手の平の指の付け根のぷにぷにした部分を当て、その反動で指を打面に当てます。“う”の中音はぷにぷにしたところから上の全体を使って叩きましたが、“あ”の高音は、打面に当たるのは指先だけ。そうすると「パーン」という高い音が鳴ります。注意点としては、手の平に力を入れず、リラックスした状態で叩くこと。力を入れると手の平の骨が打面に当たり、とても痛いです」

「この3つの音が出せるようになれば、簡単なフレーズを叩けるようになります。最初は難しいですが、大事なのは「ちゃんと音を出せている」と自分で思い込むこと。何度も練習して、感覚をつかんでください」

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