旭川の南部に広がる国立公園。それが大雪山国立公園である。北海道の最高峰で「日本の百名山」にも選ばれている2,291mの旭岳を筆頭に、2,244mの北鎮岳、2,230mの白雲岳、2,113mの愛別岳など、2,000m級の山々が連なる。これらを総称して大雪山系と呼ぶこともあるが、麓には温泉や滝、湖、そして湿原などが広がり、見どころが多いエリアなのだ。
高山植物の種類も豊富で、6月の雪解けを合図に7月にかけて山々を彩る。9月中旬になると、今度は紅葉の季節。日本で最も早く山が染まる場所として知られており、短い夏山シーズンには多くの登山愛好家が訪れる。夏から秋に目まぐるしく移ろう、この美しい土地をアイヌの人々は「カムイミンタラ(神々の宿る庭)」と呼ぶそうだ。
今回の旅の最大の目的は、そんな大雪山系の最高峰・旭岳と、層雲峡と呼ばれる風光明媚なエリアにそびえる黒岳(1,984 m)に登ることでもあった。OMOベースで残っていた仕事を片付けた翌日、まずは黒岳に向かった。
旭川市街からは車で1時間ほどだ。道央自動車道で北に向かい、旭川紋別自動車道で上川町方面へ。上川層雲峡ICで降り、石狩川に沿って進むと、断崖絶壁に囲まれた層雲峡が見えてくる。層雲峡山麓駅からゴンドラで5合目まで行き、リフトに乗り換えて、7合目まで登る。そこから頂上を目指すのが一般的だ。さらに旭岳に向かって縦走する登山者も多い。
なお、環境保全のため5合目のゴンドラの駅から上にはトイレがない。携帯用のトイレと、熊が出没することがあるため、熊よけの鈴も必須だ。
時刻の確認はもちろん、メールの受信を手元でチェックしたりと、スマートウォッチを日常使いしている人を随分見かけるようになった。そんなスマートウォッチのなかでアウトドアでこそ進化を発揮するのが、「SUUNTO 7」だ。70以上のスポーツモードのほかGPSや手首心拍数センサー機能、そして詳細な地形情報、トレイル、起伏を把握できる等高線も表示されるオフラインマップも搭載。ペーパーの地図を出す必要もなく、手元で完結するため、非常に楽。ハイキングや旅先への相棒に最適だ。
標高が上がれば、木々も少なくなり、日差しを直接浴びることになるので、登山では帽子が必須。変わりやすい山の天気を考慮し、防水性能と雨でも蒸れない速乾性に優れたものを選びたい。
もう一つの目的地、旭岳にもロープウエイがあり、標高1,600m地点まで気軽に登ることができる。姿見駅を降りると、およそ1時間で周遊できるトレッキングコースがあり、ビギナーにもおすすめだ。
6月になり、雪解けが進むと、チングルマやエゾノツガザクラ、キバナシャクナゲといった高山植物が花を咲かせる。また、ホシガラスやギンザンマシコ、カヤクグリ、エゾライチョウといった野鳥の観察も楽しい。
そのほか、向かい合う二つの池(鏡池とすり鉢池)は夫婦池と呼ばれ、姿見池とともに名所になっている。旭岳の山頂を目指すなら、姿見池の脇を通って、岩場の登山道を登っていく。晴れ間がのぞくと、連なる大雪山連邦が見渡せ、絶景を堪能することができる。なお、旭岳の夏は短く、雪解けが終わる6月末から初冠雪が降る9月下旬までが登山シーズンだ。
今回の旅では、麓の旭岳山麓駅のそばに広がる勇駒別湿地も歩いた。こちらは毎年5月下旬から6月上旬にかけて、エゾノリュウキンカの大群落が咲き乱れる。険しい岩場を登った先にある絶景を堪能するもよし、ライトなトレッキングで美しい高山植物を観察するもよし。夏の大雪山系にはアウトドアの魅力が詰まっていた。