
2022年4月から活動の拠点を大阪から東京に移した、お笑いコンビの見取り図。ただ、なんばグランド花月での漫才など大阪での活動も多く、住居を残したまま2拠点生活を送っているという。また、ボケ担当のリリーは、親交の深いかまいたちの濱家と「はまリリ酒呑みチャンネル」で酒飲みとしての一面を見せている。そんな大阪を知り尽くした見取り図のリリーにひとり大阪の楽しみ方や、自身のひとり飲み事情について聞いた。
Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)

6月のとある週末。なんばグランド花月の楽屋口で待っていると、見取り図のリリーが取材対応のため、出番を終えてひとりで出てきた。その姿にめざとく見つけた通行人が声を上げる。「あ、リリーさんや! やっぱ、かっこええわー」。騒動にならないよう、駆け寄るファンにさりげなく対応するリリー。そして、すぐ側に用意された取材場所の焼肉ホルモン坂上 裏なんば店に入ってきた。ここでも、カウンターで飲んでいた若者たちの視線を一身に集める。さすがお笑いの街・大阪。ここでは笑いを起こす男がスターなのだ。
他の仕事との兼ね合いで週末の大阪での舞台出演は減りつつあるというが、この日も1日6ステージ。慌ただしい毎日だが、大阪に戻ってくるのが楽しみだと語る。
「大阪から出てみて痛感しているのが、大阪はほんまに安くて旨い店ばかり。東京にももちろん旨い店はたくさんあるんですけど、旨さと値段が比例します。旨いものを食べようと思ったら、それ相当の値段がかかる。でも、大阪には旨くて安い!がたくさんあります。家賃とか生活費も東京と比べると破格だし、住むなら大阪が一番ですよ」
そう言うと撮影用に準備された、生ビールのジョッキを傾ける。「目の前にビールがあったら、飲んじゃいますよね」と、いたずらそうに笑った。

今回の大阪での仕事は前日入り。昨晩はひとりで馴染みの店に行き、飲んでいたという。
「基本的には、大阪でも東京でも、毎日飲みに行きます。先輩に誘われることもあれば、後輩を誘って飲みにいくことも。予定が合わなかったら、ひとりでも飲みに行きます。同時期に上京した芸人が多いので、東京暮らしになっても、交友関係がほとんど変わらないです。大阪には店主が、おかえりって迎えてくれるような行きつけのお店が近所にいくつかあるんですけど、昨日もマスターのお子さんがお店に来ていて、彼らの成長を見るのが楽しいんですよ。父性本能をくすぐられるというか、親戚のおじさんになった気分。子どもたちの近況をマスターから聞きながら、それを肴に飲むんです」
気取らず、ひょうひょうとした性格は舞台やテレビで見かける姿のまま。舞台を降りてもそれは変わらないようだ。
「昔は初めて会う後輩を誘って飲みに行くことはあったのですが、それは減ってきちゃいましたね。関係を1から築くのが面倒に思えるし、とにかく飲み会でも失敗したくないんです。一度きりの飲み会で終わったとしても、その一夜は楽しく飲みたい。誘って楽しくなかったら、後悔するんですよ。だから必然的に昔から知っている安定できる後輩との飲みが多くなります。気兼ねをしない。その究極がひとり飲みじゃないですか。行き先も注文も全部、自分で決められるから。ひとりで飲むことに寂しさは、まったく感じないです」
大阪の街もひとり飲みの楽しさも知り尽くしたリリーに、どんな過ごし方がおすすめなのか、尋ねてみた。
「手前味噌ですが、大阪に来たのなら、やっぱりNGK(なんばグランド花月)じゃないですか? 僕らが出ていなかったとしても、一度は見に来てほしいですね。お笑いを生で見たら、絶対に好きになってくれると思うんですよね。しかも大阪ならNGKじゃないですか。テレビで見たことがある人のネタが見られるし、きっかけとしてはベストなはず。そこでファンになったら、すぐ近くに漫才劇場もあります。終わったら、裏なんばでひとり飲みをする。最高なひとり大阪じゃないですか!」
以前は、なんばグランド花月や漫才劇場のある、この千日前をよく歩いたという。現在は裏なんばという呼び名が定着し、若者向けの小さな飲み屋が軒を連ねる人気のエリアとなっているのだ。
「もうなくなってしまったのですが、ダウンタウンさんが通われていた『信濃そば』にもお世話になっていました。僕の知っているお店がどんどんほとんどなくなって、若い子が集まる街に変わっています。あ、でも、もう芸人を辞めてしまった昔の同期が近くで『魚貝まつうら』っていうお店をやっているんです。そこはたまに行きますね。違う道に進みましたが、昔の同期には、やっぱり成功してほしいから。あとおすすめするなら、天満ですかね。韓国料理が好きな人だったら、鶴橋もいいですね。ひとりで入れるお店もたくさんありますよ。僕的には昔の難波が楽しかったですね。いまは顔を指されちゃいますから、無茶な遊び方はできません(笑)」

お酒での失敗も数知れずと語るリリー。
「もう時効ですけど、芸人2年目くらいのときに先輩と飲んでいて、怒られたんです。何が原因だったのか、覚えていないのですが、その最中に無性にトイレに行きたくなって、説教されながら、立ち小便をしてしまったことがあります。怒られている最中だけど、漏らすわけにはいかない。それで立ち小便を……。ヤバイですよね。ただ、どんなに深酒をしても、目覚ましが鳴れば起きられる」
かまいたちの濱家とやっているYouTubeチャンネル「はまリリ酒呑みチャンネル」での飲み配信もそうだが、アイディア次第で何でもコンテンツになる時代だ。何かやってみたいことはあるのだろうか?
「僕は絵を描くんですけど、いつか個展を開きたいと思っています。そのときにYouTubeチャンネルで追いかけたら、コンテンツになるし、宣伝にもなるから効率が良いかなと。大阪は中之島美術館や国立国際美術館、あべのハルカスにも美術館があるし、アートの街としてもおすすめですよ。以前、BSよしもとでアート番組のMCをやらせてもらったんですけど、ルーブル美術館とか海外ロケも挑戦してみたいな。あとは横尾忠則さんに会ってみたい」
漫才はもちろん、今後はアーティストとしての活動も楽しみだ。


取材協力
焼肉ホルモン坂上 裏なんば店
大阪府大阪市中央区難波千日前3-21
TEL/06-6631-3338
時間/11:00〜翌4:00
定休日/無休

ローカル感満点の裏なんばを楽しんだあとは、少し背筋を伸ばしてキタ・ミナミの落ち着いたバーへ。上質な空間で、大人のひとり時間をゆったりと堪能しよう。

インターコンチネンタルホテル大阪の20階にあるラウンジ&バー。眼下に広がる夜景を眺めながら、バーテンダーが丁寧に仕立てる一杯を味わえる。17時~20時のハッピーアワーは、ビールやワイン、特製カクテルがコスパよく楽しめ、大人のひとり飲みにも最適だ。

住所/大阪府大阪市北区大深町3-60 インターコンチネンタルホテル大阪20F
電話/06-6374-5700
時間/月~木曜日17:00~23:00(LO22:30)、金曜日17:00~23:30(LO23:00)、土曜日 14:00~23:30(LO23:00)、日曜日・祝日 14:00~23:00(LO22:30)
定休日/無休