アートも熱い大阪 中之島エリアで美術館巡り
ヤノベケンジ《SHIP'S CAT(Muse)》
©Kenji Yanobe

アートも熱い大阪 中之島エリアで美術館巡り

ひとりがちょうどいい“大阪” enjoy time with myself

大阪へのひとり旅。話題の大阪・関西万博を巡ったら、お次は中之島エリアでアート散策はどうだろうか。美術館はグループで訪れるより、自分のペースで鑑賞できる、ひとり旅との相性がいい。中之島は、大阪市北区にある堂島川と土佐堀川に挟まれた中洲エリアのことで、高層ビルが立ち並ぶオフィス街であると同時に、大阪を代表する文化的エリアとしての顔を併せ持っている。目指すは大阪中之島美術館だ。

Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford) Styling:YONOSUKE KIKUCHI Model:HAYATE OGASAWARA Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)

オフィス街に突如出現する黒い箱
オフィス街に突如出現する黒い箱

中之島は近代的なオフィスビルと、大阪市中央公会堂や大阪府立中之島図書館に代表される歴史的な建築物が入り混じる街。過去と現代がつながっているような不思議な景観が特徴だが、大阪中之島美術館の漆黒の建物は、中でもひときわ異彩を放つ。ビルの谷間に周囲の光を飲み込むような黒い塊が鎮座している。そこだけ時が止まっているかのよう。そんな大阪中之島美術館の歴史は古い。計画が持ち上がったのは、1983年。大阪市制100周年記念事業として構想されたのだ。その後、紆余曲折があり、開館に至ったのは約40年の歳月が経った2022年2月のこと。現在は、近代・現代美術とデザインを専門とする美術館として大阪の文化芸術の発信拠点として機能している。

オフィス街に突如出現する黒い箱

建築家の遠藤克彦氏のアイディアが採用された同館の建築デザインだが、黒い箱型の外観とあわせて特徴となっているのが、内部構造の「パッサージュ」だ。パッサージュとは歩行者が移動し、滞在するための遊歩空間という意味だが、大阪中之島美術館のそれはぜいたくな広さを誇る。また2階と4階をつなぐエスカレーターが吹き抜けで交差するなど、ダイナミックな構造になっている。展示される作品群はもちろんのこと、大阪中之島美術館はこうした建築デザインもひとつの見どころとなっている。

オフィス街に突如出現する黒い箱
彫刻のように美しいオリジナルの家具も見どころ

大阪中之島美術館に一歩足を踏み入れると、ダイナミックなパッサージュと調和した椅子やソファが置かれていることに気が付く。もちろん美術館に小休止のためのベンチが設置されているのは珍しくない。だが、大阪中之島美術館のそれは格段に馴染んでいるのだ。デザインを担当したのは、家具デザイナーの藤森泰司氏。建物が完成したあと、椅子などの設置家具は設備や雰囲気に合うようオリジナルで制作されている。

彫刻のように美しいオリジナルの家具も見どころ

ベンチ、ソファベンチ、チェア、ラウンジチェアの4種が設置されているが、フロアごとの用途や明るさにあわせて、色合いやデザインが整えられている。一度、試作品が完成すると、オープン前の館内に持ち込み、実際に使用されるシチュエーションを想定しながら、見え方や色合い、そして必要な数を関係者で議論したという。だから、家具が見事な調和を見せているわけだ。来館したら、休憩がてら、これらの家具にも目を配ってもらいたい。

大阪にゆかりのある アーティストの作品を膨大に収蔵

開館するまでに年数を要した大阪中之島美術館だが、準備段階の1990年代から本格的な作品収集を行なっていた。そのため、すでに6000点を超える国内でも有数のコレクション数を誇る美術館となっている。コレクションの範囲は、洋画や日本画、海外の近代絵画、現代美術、版画、写真、彫刻、そしてデザインなど多岐にわたり、とくに佐伯祐三の名作やモディリアーニの裸婦像、具体美術協会のリーダーである吉原治良の作品などは、国内外で高く評価されている。

大阪にゆかりのある アーティストの作品を膨大に収蔵
ヤノベケンジ《ジャイアント・トらやん》
©︎ Kenji Yanobe

また、大阪と関わりのある近代と現代の作家の作品を積極的にコレクションしているのも特徴だ。エントランスで来場者の視線を一際集める猫をモチーフにした彫刻「SHIP’S CAT(Muse)」2021年を手がけたヤノベケンジも、大阪出身の現代作家だ。なお、4階の階段脇に設置されている大きなロボット「ジャイアント・トらやん」2005年も彼の作品である。

大阪にゆかりのある アーティストの作品を膨大に収蔵
ヤノベケンジ《ジャイアント・トらやん》
©︎ Kenji Yanobe
大阪中之島美術館で 現在、開催中の展覧会
ルイ・ヴィトン「ビジョナリー・ジャーニー」展

ルイ・ヴィトン
「ビジョナリー・ジャーニー」展

2025年7月15日(火)〜9月17日(水)

ルイ・ヴィトンの創業170周年と開催中の大阪 ・関西万博を記念して開催される。ルイ・ヴィトンの原点から最新クリエーションまでの軌跡を辿り、日本との貴重な関係にオマージュを捧げた展覧会。美術史家兼キュレーターのフロランス・ミュラーの協力のもと制作され、OMAの重松象平がデザインを担当。

休館日:月曜および7月22日(火) ※7月21日(月・祝)、 8月11日(月・祝)、 9月15日(月・祝)は開館
開場時間:10:00〜17:00(入場は16:30まで)、ただし金曜・土曜・祝前日は19:00まで延長(入場は18:30まで)

こちらにも立ち寄りたい
隣接する国立国際美術館
こちらにも立ち寄りたい

大阪中之島美術館の目の前には、もうひとつ美術館がある。国立国際美術館だ。世界でも珍しい「完全地下型」の美術館で、エントランスにある竹をイメージしたオブジェが目印。1945年以降の国内外の現代美術を中心に約8,200点のコレクションを有していて、国内最大級の規模を誇る。また、ゴッホやピカソの大規模展に加え、横尾忠則や草間彌生、クリスチャン・ボルタンスキーといった現代美術家の特別展を開催してきたことでも知られる。大阪中之島美術館まで足を運んだのなら、ぜひこちらにも立ち寄りたい。

シャツ31,900円/イレーヴ(イレーヴTEL:03-5785-6447)、インナー6,600円/ハバーサック(ハバーサック フラッグシップストアTEL:03-3477-0521)、パンツ10,990円/アンフィーロ(オンワード樫山TEL:03-5476-5811)、バッグ38,500円/イッチ(イチギャラリーTEL:03-5454-5111)、靴はスタイリスト私物

国立国際美術館で現在、開催中の展覧会
特別展 非常の常

特別展 非常の常

2025年6月28日(土)〜10月5日(日)

シプリアン・ガイヤール、潘逸舟、クゥワイ・サムナン、キム・アヨン、リー・キット、高橋喜代史、米田知子、袁廣鳴(ユェン・グァンミン)といった作家が参加。「非常の常」の時代を、私たちはどのように生きることができるのか? 8名の作家の表現を通じて、時代を見つめ、想像力を膨らませ、明日を生きる希望を探る。

コレクション1

コレクション1

2025年6月28日(土)〜10月5日(日)

2025年度のコレクション1は、特集展示「戦後美術の円・環」と通年展示「コレクション・ハイライト」の二部構成。前者は戦後の美術に登場する円や環といった、さまざまな「まるい形」に焦点を絞った特集展示。後者は、国立国際美術館を代表する所蔵作品や新収蔵作品を集めたもの。古くはポール・セザンヌやマックス・エルンスト、近年収蔵した作品群のなかからは、ヨーゼフ・ボイスや村上隆、モーリーン・ギャレスらの作品を展示。

休館日:月(ただし7月21日、8月11日、9月15日は開館)、
7月22日(火)、8月12日(火)、9月16日(火)
開催時間:10:00〜17:00、金・土は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで

Info

アートの余韻に浸りながら、カフェでひと息。

感性が高まったあとは、落ち着いた空間でひと息つきたい。都会的な静けさが漂う中之島には、そんな気分にぴったりのカフェが点在している。余韻に浸りながら、自分だけの静かな時間を楽しもう。

NAKANOSHIMA AWAKE
レトロモダンな空間に浸る
NAKANOSHIMA AWAKE

中之島のシンボル、赤レンガ造りの重要文化財「大阪中央公会堂」内にあるダイニング・バー。広々とした店内には、上質で洒落た空気が漂い、雰囲気を味わいながらゆったり過ごせるのが魅力。晴れた日にはテラス席も心地いい。

住所:大阪府大阪市北区中之島1-1-27 大阪市中央公会堂B1F
電話:06-6233-9660
時間・定休日:HP参照

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GARB weeks
リバーサイドで至福のカフェタイム
GARB weeks

土佐堀川沿いにあるカジュアルなイタリアンレストラン&カフェ。開放感あふれる店内やテラス席で、川の流れと遊覧船を眺めながら、薪窯で焼く本格ナポリピッツァや自家製ドルチェを味わうことができる。

住所:大阪府大阪市北区中之島1-1-29 中之島公園内
電話:06-6226-0181
時間・定休日:HP参照

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