どうせ食べたらなくなってしまうんだし、どんなお皿で出しても一緒。洗い物を増やしたくない。そんな気持ちも分かる。日常的にはそれもありだが、特別な日の晩酌や、いつもよりちょっといいお酒が手に入った夜は、器を変えてみてはどうだろう。器にこだわるだけで、見慣れたつまみが一変し、食卓が華やかになる。器選びのコツと、注目の作家をスタイリストの駒井京子さんに聞いた。
食と暮らしまわりのスタイリスト。雑誌や書籍、カタログなどでスタイリングを手がけるほか、さまざまな分野のコーディネートを手がけている。
突き出しのキムチに合わせたガラス皿は、アメリカ出身で富山県在住のガラス作家、ピーター・アイビーによるもの。冷たさや透明感が先立つガラス製品も、彼の手にかかれば、どこか温かみを帯び始めるから不思議だ。キムチの赤色がいつも以上に鮮烈に映る。ガラス皿には、ニンニクのニオイや香辛料の色が器に移りにくいという実用的なメリットもあるだろう。まるでコース料理の前菜のようなキムチを、アンティークの使い込んだお盆に乗せたら、クラフトビールと共に食卓へ。グラスも用意せずに、瓶のままグビっといきたい。こんなテーブルセットからスタートすれば、2杯目へのピッチも自然と早くなるはずだ。
さっと茹でるだけで完成する枝豆くらいなら、調理が苦手な人でも自作できるはず。皿に盛っても良いが、ここは竹ざるの出番。湯気をほど良く吸ってくれるため、枝豆が水っぽくならずに済む。用意したのは茨城県・行方市で、伝統的な手法を使って竹細工をつくる勢司恵美の作品だ。自ら山に入り、「これは」という竹を探してきて素材からつくるという、彼女の真摯な姿勢が滲み出ているような美しい竹ざるに枝豆の緑が映える。存在感のあるバカラのショットグラスを用意し、日本酒でいただくのもオツなモノである。
漆の器は持っているけれど、祝いごとにしか使わない。そんな読者もいるかもしれない。だが、実は油モノにも気負わず使える万能なお皿。使うたびに器の艶に深みが加わり、自分だけのひと皿に佇まいが変化していく。そんな漆器を愛でながら育てるのは、晩酌の楽しみでもある。越前漆の作家・中野知昭が手がけた「縁目弾皿」に唐揚げを載せ、北欧アンティークのスモークタンブラーグラスを添える。ハイボールと唐揚げという幾度も食べた組み合わせなのに、新鮮に感じるのは器の力にほかならない。
目で食す。そんな言葉があるように、美味しさの大部分は見た目で決している。うまそうでなければ箸が動かず、目を瞑って食べる愚か者もいないだろう。豚の角煮の欠点は、味は申し分ないが、煮込み色ベースでコントラストが乏しい点にある。そこで古伊万里の伸びやかな濃淡で表現される呉須染付皿を合わせることで、いつもの食卓から割烹居酒屋に変貌する。また、陶器同士で組み合わせた板皿(作・西川聡)を膳代わりにする遊びも楽しい。ペアリングは、赤ワインをステムグラスで。