渋谷・江口時計店で一生モノの腕時計を探す

渋谷・江口時計店で一生モノの腕時計を探す

「クラシック」なファッションスタイルに合う時計といえばヴィンテージだ。せっかくシンプルで、味のある洋服を身に纏っているのに、時計が新品だと、どこか片手落ちな印象を与えるだろう。服に対する自分なりのポリシーやこだわりに重しが加わるような、一生モノの腕時計を選ぶのが正解だ。ただ、どんなヴィンテージ時計を選べば良いのか、検討もつかない。かといって、試しに買えるような代物じゃない。そこで、渋谷区松濤にある江口洋品店 江口時計店 松濤に向かった。

Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling:YONOSUKE KIKUCHI
Hair&Make:KAZUYA MATSUMOTO
Model:LIM
Text:NAGISA ANDO(verb)

ヴィンテージをいつまでも使い続けるための渋谷の名店
ヴィンテージをいつまでも使い続けるための渋谷の名店

2016年に吉祥寺で産声をあげた江口洋品店・江口時計店は、2024年に渋谷区松濤で江口洋品店 江口時計店 松濤としてリスタートした。アパレルやジュエリーも扱うが、やはり本命はヴィンテージ時計。ずらりと並ぶ名品の数々は、どれもヴィンテージとは思えないほど状態が良く、輝いている。また、ショップ内に時計修理工房が併設されていて、時計の技術者が常勤しているのも、同店の特徴だ。オーバーホールや修理、レザーブレスオーダーといったアフターサービスに対応してくれるので、購入後も安心して、時計を使い続けることができるというわけだ。取材当日も店内には大切にしてきた時計を預けにきたと思われるご婦人の姿があった。

「オーナーの方々は、さまざまな理由から愛着のある時計を手放す決断をされます。老眼になり、小さな文字盤では見えにくくなってしまったから、買い取りをお願いして、代わりに新しい時計を購入しよう。そんな方もいます。うちのお店に預ければ、ちゃんとした方に自分の時計が受け継がれていくのではないかと、託してくださるケースが多く、とても光栄なことだと思っています。うちは予約制だし、敷居が高そうだと思われているはずです(笑)。でも、それは人生で何回かしか買えないような、価値のある商品を取り扱っているからなんですよ」と代表の江口大介さんは笑う。

来店するお客さんのなかには、ヴィンテージな腕時計を愛する蒐集家も多く、学ぶことも多いという。

シンプルでとにかく美しいカルティエのタンク
シンプルでとにかく美しいカルティエのタンク
シンプルでとにかく美しいカルティエのタンク

「値段の張る商品を取り扱っているため、僕自身も、高級品だから好きなんだろうと思われることがあります。でも、それは誤解で個人的にはチープなものや、生活必需品的なものに魅力を感じるタイプでした。それに腕時計は、以前なら古いものは安く手に入りました。古い時計に付加価値がついて、ヴィンテージとしてもてはやされるようになったのは、ここ十数年のことです。だから、時代の流れに惑わされず、常に相応しい価値を偏らずに見られるバイヤーでありたいと思っています」(江口大介さん)

多くのヴィンテージ時計を見てきた江口さんだが、特別な思い入れがあるのは、カルティエのタンクだという。

「シンプルで美しいものがとにかく好き。タンクはまさにそんな腕時計ですよね」(江口大介さん)

タンクが誕生したのは、1917年。第一次世界大戦中に遡る。ルノー製の戦車からインスピレーションを受けてデザインされたといわれている。当時はまだ懐中時計が主流で、タンクのような専用ベルトで手首につける腕時計タイプは珍しかったという。それでもケースのサイドが戦車のキャタピラのように上下に突き出した個性的なデザインは、腕時計の歴史に刻まれている。

価値あるものを長く愛する使い捨ての人生では深みが出ない
価値あるものを長く愛する使い捨ての人生では深みが出ない

渋くて、男らしさを表現できる、クラシックなファッションスタイルに惹かれるという人は多いだろう。このスタイルに合わせる時計は断然ヴィンテージなのだが、どんなものを選べば良いのかわからないという人もいるはずだ。そんな人に江口さんは、こんなアドバイスを授けてくれた。

「うちのお店にやってきて、迷われているお客様には、まずタンクと、オイスターケースのロレックスの両者を薦めます。どちらのモデルを選ぶかで、その人の物差し、嗜好がわかるからです。あとは他人に薦められて買うのではなく、自分で決断してください。もし、その結果、自分の選択に後悔したとしても、前者も後者も素晴らしい時計であることに変わりはありません。どっちを選んでも、間違いじゃないんです。どんなものを選んだのか、何を身につけているのか。それによって、その人の風格が伝わる世の中です。たとえ良いモノを身につけていたとしても、使い捨てしていると、深みは出てきません。良い審美眼を身についてほしいですね」(江口大介さん)

価値あるものを長く愛する使い捨ての人生では深みが出ない
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タンクのデザインを継承するシンプルで品のあるヴィンテージモデル
タンクのデザインを継承するシンプルで品のあるヴィンテージモデル

1977年に誕生した、マストタンクはタンクのシンプルで、洗練されたデザインを継承している。ゴールドのプレートケースと上質な革ストラップはエレガントで色褪せない魅力を持っている。頑張ったら、手に入る! そんなちょっとした背伸びで手に入る価格帯もヴィンテージ時計ビギナーにはうれしい。

Cartier「マストタンク」437,800円

ボーイズサイズだからロレックスにさりげない品格が
ボーイズサイズだからロレックスにさりげない品格が

ロレックスの中でも根強い人気を誇るのが、この「オイスターデイト」だ。カレンダー機構を備えた手巻きムーブメントが搭載されていて、高精度と耐久性を兼ね備えた名機として知られる。ワンサイズ小ぶりなボーイズモデルでさりげなく腕もとで光る存在感は、センスある大人の証だ。美しいミラーダイヤルに、多面カットされたバーインデックスが眩しい。

ロレックス「オイスターデイト ミラーダイヤル」767,800円

滲み出るエレガントな品格は現行品にはない魅力
滲み出るエレガントな品格は現行品にはない魅力

1868年に創業され、スイスの伝統と、アメリカが誇る生産技術が融合したメーカー「IWC」。実直なデザインと技術力はいまでも健在だが、こちらは廃盤のメンズモデル。独特の風合いを持つゴールドのダイヤルや、洒落たアラビアインデックス、筆記体ロゴは現行品にはないヴィンテージならではの品の良さがある。なお、ムーブメントは、手巻きキャリバー83という傑作を搭載している。

IWC「オールドインター ラウンドケース アラビアゴールド」646,800円

DATA

江口洋品店 江口時計店 松濤

東京都渋谷区松濤1-28-6 VORT渋谷松濤residence
TEL: 03-5422-3070
営:11:00〜19:00
定休日:火
※来店予約が優先