
今季のテーマに掲げた「クラシック」なファッションスタイル。味があり、大人の風格を帯びたコーディネイトに合わせる小物は、ヴィンテージなアイテムや真にクラシックな逸品を選びたい。そうすれば、時代によって移りゆくファッションが、生き方へと昇華するから。時を経ても色褪せない名品をファッションに合わせてセレクトする。モノの価値を正しく理解してこそできることなのだ。そうやって培われる審美眼は、憧れの大人そのもの。そこでヴィンテージなアイウェアを豊富に扱う、渋谷のGLOBE SPECS(グローブスペックス)さんにお邪魔した。
Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling:YONOSUKE KIKUCHI
Hair&Make:KAZUYA MATSUMOTO
Model:LIM
Text:NAGISA ANDO(verb)

GLOBE SPECSは1998年4月に、大手メガネ販売会社でキャリアを積んだ3人のエキスパートが集まり、誕生したメガネ専門店だ。当時の日本では、まだ「メガネ=視力の矯正器具」という扱いか、若者向けにファッションメガネを比較的安価に提供するショップが主流だった。対する欧米では大人のファッションや自己表現の一環として、メガネを愛用するカルチャーが育ちつつあったという。そこでメガネをもっと楽しくおしゃれなアイテムとして広めようと、世界中から個性あふれるアイウェアブランドをセレクトし、新作からヴィンテージ品まで、価値あるメガネが並ぶ専門店をオープンさせたのだ。
また、希少性があり、ファッション性の高いメガネを販売するだけではなく、快適な見え方を約束する緻密な度数チェックやフレーム調整といった技術サービスにも力を入れ、しっかりメガネ屋であることも、GLOBE SPECSの特徴である。代表の岡田哲哉さんが自ら、オプティシャンとして、視力測定やレンズ選びに腕をふるっている。
「メガネを通じて、お客様に幸せと満足感を与えられる世界一のお店にしたいと、GLOBE SPECSを立ち上げたのですが、視力測定など技術面でも一流でありたいと思っています」(岡田哲哉さん)
Lunor(ルノア)や、The Spectacle(ザ・スペクタクル)、Anne & Valentin(アン・バレンタイン)、そしてLesca LUNETIER(レスカ・ルネティエ)といった世界の名だたるメガネブランドを日本で広めるだけではなく、実際にミラノで毎年行われる国際メガネ展示会「MIDO」にて、世界一のお店として二度も表彰されたことがある点もGLOBE SPECSのすごいところ。


また、代表を務める岡田哲哉さんは、小学生のときに父親の転勤で、ニューヨーク暮らしを経験。ちょうど伝説のフェスとして知られる「ウッドストック・フェスティバル」が開催された年で、70年代のヒッピーカルチャーを本場で浴びて育ったという。帰国後も東京・青山で学生時代を過ごすなど、生粋のシティボーイなのだ。どうりで、洒落てるわけだ。海外での店舗運営や買い付けの経験も豊富で、岡田さんの審美眼を信頼するメガネデザイナーやバイヤーも多い。
「ニューヨークにいるときに購入した、アランミクリのメガネは20代の後半から30代にかけて、しばらく愛用していました。いまは本人と知り合いなのですが、ミクリ氏承認の元そのモデルを再生するプロジェクトをいま行っています。渋谷店が10月に移転を予定しているので、その頃にお披露目するつもりです。また、GLOBE SPECSをはじめる前に、とある会社で働いていたときに、世界のメガネ店のバイヤーやオーナーをつなぐ国際ネットワークを作ろうと奔走したことがあります。ウィーンやフランクフルト、パリ、そしてニューヨークなどを巡ってオーナーを口説いたのですが、最初は相手にされなかったものの、次第に熱意が伝わって、みんな参加してくれました。そのネットワークが新しいメガネブランドの発掘やデザイナー、コレクターとの出会いにつながっています」(岡田哲哉さん)
GLOBE SPECS が取り扱っているThe Spectacle(ザ・スペクタクル)は、1920年代から1970年代にかけてのヴィンテージメガネを集めたブランドだが、日本では数店舗しか取り扱いを認められていない。それが当たり前のようにGLOBE SPECSの店頭で見かける。まさに長年の信頼の証なのだ。


「ミラノやパリなど、毎年、400近い展示会が世界中で開かれていて、メガネのブランドは数千にのぼります。でも、本当にオリジナリティを感じるのは、そのうちのほんの数%です。だいたいどこかで見たデザインや、焼き直しがほとんどです。ぼくたちは、いま扱っている商品と違う特性を持ったデザインで、唯一無二のオリジナリティがあるブランドじゃないと、お店で扱いません」(岡田哲哉さん)
こうした審美眼を持っているからこそ、たとえ知識がない初心者が訪れたとしても、納得のヴィンテージメガネと出会えるのだ。最後に、いまおすすめのヴィンテージメガネを3本セレクトしてもらった。

1950~60年代のアメリカで、黒人解放運動の指導者として活躍した「マルコムX」。スパイク・リー監督が1992年にその生涯を映画化したので、知っている人も多いのでは? その彼が掛けていたメガネといえば、これ。1933年創業した世界最古のメガネブランドであるAMERICAN OPTICAL(アメリカンオプティカル)の、Combination- A600というモデルで当時には珍しくフレームの一部にプラスティックを用いている。復刻版も出回っているが、こちらはオリジナルのヴィンテージもの。
The Spectacle「Combination-A600」129,470円

アイウェアブランドのLunor(ルノア)を立ち上げた巨匠ゲルノット・リンドナー氏が、Lunorリタイア後に新たに立ち上げた自身の名前を冠したブランド。メガネを製造する上で不可欠な剛性とバネ性を持たせることが困難とされていたスターリングシルバー(シルバー925)を、3年の歳月を掛けて研究することで、実現に至った渾身のコレクションがこちら。テンプルにはコンパクトなケースに収納するための伸縮機能が付いている。完成時には、岡田さんのもとに本人から「新たなメガネを作ったのでみてほしい」とコンタクトがあったとか。
GERNOT LINDNER「GL-159」139,700円

フランスの伝統的なフレームデザインが、この「クラウンパント」。スパイク・リーなど海外セレブも愛用するデザインで、日本でも爆発的な人気を誇っている。現在だったら、CADを使って機械的にデザイン・加工するが、1950〜60年代に製造されたヴィンテージモデルのこちらは当時スタンピングマシーンという製造機械を使って生み出したもの。シャープなエッジが特徴的だ。どこか懐かしさを感じさせるレトロモダンなデザインが秀逸。
Lesca LUNETIER「Crown Panto」105,600円
東京都渋谷区神南1-7-5 1F・3F
TEL:03-5459-8377
営:12:00〜19:00
定休日:木
※渋谷店は9月17日(水)の営業を最後に、移転する。移転先(渋谷区富ヶ谷1-43-9-1F)での営業開始は10月9日(木)から。