
2004年に開館し、昨年20周年を迎えた金沢21世紀美術館。開館20周年にあたっては、一年を通して美術館が収蔵するコレクションを紹介する、大規模なコレクション展を開催。編集部が訪ねた際には、2025年3月16日まで開催の企画展「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」と、「コレクション展3」(〜2025年5月11日)が開催されていた。
Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling:YONOSUKE KIKUCHI
Model:KENSEI MIKAMI
Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)
2025.3.17

オトボン・ンカンガ 《アンアースド – アビス(見出された–深淵)》2021年(下)
※「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」展より(2025年3月16日まで開催)
大地と海をモチーフにした大きなタペストリーを展示していたのは、ナイジェリアのアーティスト、オトボン・ンカンガ。残念ながら、日本でアフリカ出身の作家の作品を目にすることは多くなく、貴重な機会だ。地球の存続が水にかかっているというエコロジカルな視点の作品で、縦に3つ連なる海を表現したタペストリーと、大地を表現した温かさを感じるタペストリーの計4つからなる。一見すると、絵画のようにも見えるが、精密に織り上げる最新式のレピア織機を使って、制作されているという。上から下に向かって、濃度が増す海のタペストリーには、色鮮やかな魚や貝とともに魚網やプラスチックなどの人間活動の負の側面も描かれている。対照的に《アンアースド ‒ サンライト(見出された ‒ 陽光)》では、自然を搾取する先に生命の島々が描かれ、希望の芽があることも示唆されている。

※「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」展より(2025年3月16日まで開催)

※「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」展より(2025年3月16日まで開催)
オトボン・ンカンガの展示室の隣にあったのが、フランス出身のアーティスト、エヴァ・ジョスパンの作品。木材から作られているダンボールを素材に、森を創造するスタイル。とてもダンボールとは思えないような緻密さとスケール感は幻想的であると同時に、作品を目の前にした際の、まるでダンボールの森に迷い込んでしまいそうな感覚は、不気味さをも孕んでいる。また、森だけではなく、そのなかに建築や洞窟などを組み込む作品も見られる。いずれにせよ、迫力のある造形に立ち止まらずにはいられない。

※「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」展より(2025年3月16日まで開催)

刺激的な作品に触れたあとは、お土産を物色すべくミュージアムショップに立ち寄ることにした。すると、ショップの目の前に、着ぐるみが横たわっている……。何かのパフォーマンス?と思ったが、そうではない。ユーモラスで、アイロニカルな作風で知られる韓国のアーティスト、ギムホンソックの《これはうさぎです》という作品だった。横たわるうさぎの着ぐるみと壁に掲示されたテキストがセットになったインスタレーションで、着ぐるみに不法滞在の労働者が入り、美術館でパフォーマンスをしていること、そして、パフォーマンスに対して給料が支払われていると書かれている。移民、そして不法滞在というグローバル社会で、いま共通課題となっているテーマにも思いを馳せる構造になっていると言えるだろう。※「コレクション展3」(2025年5月11日まで開催)

買い物を終え、出ると、雪化粧に染まった屋外にきらきらと輝く球体を発見した。これは2014年の美術館開館10周年を記念して、施設の設計を担当した妹島和世+西沢立衛/SANAAが創作した球体のパビリオン「まる」だ。鏡面仕上げを施したステンレス製の半球が集まって、一つの大きな「まる」になるようなデザインになっている。日差しと雪による照り返しで普段以上に輝いていた。

ひと昔前は、美術館のグッズといえば、パズルやポストカードといった定番アイテムが多かったが、近年はアーティストの作品をモチーフにしたグッズや、ファッション性の高いアイテムを取り揃える美術館も多く、その特別感から全国のミュージアムグッズをコレクションする人も多いのだとか。金沢21世紀美術館のミュージアムグッズも例外ではない。素敵なミュージアムグッズの数々をご紹介しよう。

企画展「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」で求愛ダンスをするクモをフィーチャーした映像作品を展示していたコロンビアのアーティスト、マリア・フェルナンダ・カルドーゾ。本来は6ミリメートルほどの小さなクモがクッションに。4,400円

館内にも休憩用の椅子として設置されていた、ラビットチェア。実は、建物の設計をおこなった妹島和世+西沢立衛/SANAAがデザインしている。そのラビットチェアをモチーフにしたミニチュアが受注販売されていた。スタンダードサイズ53,900円、mini41,800円、minimini35,200円(画像はminiminiサイズ)

金沢21世紀美術館に限らず、美術館では告知や案内のために、屋外幕を掲示することが多い。もちろん開催期間が終われば、不要になるものだ。そんな展覧会バナーを材料にして製作した多用途バッグ。風雨に耐える強度と、シワにならないしなやかさを持つターポリン生地。大3,300円、小2,750円

「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」と、同時期に開催されていた展覧会やワークショップ、トーク、パフォーマンスなどのプログラムを繋げる連携企画が、「もっと踊ろう!共感のエコロジー」。その告知で使用された赤池佳江子さんのイラストレーション。770円

金沢21世紀美術館のロゴマークにも使用されている建物の俯瞰図。この俯瞰図がデザインされたコイン型チョコレート。来館した記念としてはもちろんのこと、お土産にも重宝する。5個入り648円、10個入り1,296円

円形に設計された建物が特徴のひとつでもある金沢21世紀美術館。それを真上から切り取ったようにデザインされたオリジナル消しゴム。よく見ると、スイミング・プールやタレルの部屋といった常設展示も再現されている。770円

西側から見た美術館の昼と夜の風景がデザインされたオリジナルマグネット。昼は太陽の光を受けて反射する建物の全景が、夜は反対にガラス張りの建物から光を放っている様子がよくわかる。2枚セット1,430円

イタリアのアーティスト、ステファノ・マンクーゾは、フィレンツェ大学の教授であり、植物神経生物学の専門家でもある。そんな彼の作品である《アレカヤシの織模様》がプリントされたシャツ。アーティスティックに着こなしたい。22,000円

画材メーカーのホルベイン社が製造する美術用の実習着。画材を入れやすい大きなポケットや開け閉めしやすいファスナー、あるいはゴム付きの袖口など、作業着として非常に優れた一着。金沢21世紀美術館限定で襟元にロゴマーク刺繍が入ったものを販売している。8,800円