オンはもちろん、オフでも何かと重宝するセットアップだが、素材の違いによって与える印象が大きく異なる。古着がもつ“エイジング(経年変化)”が再評価されている昨今だから、ここは、かしこまった印象を中和させる意味でもウール製のセットアップを推したい。テーマは、良い意味で“いなたい昭和のオヤジ感”だ。きちんとしているけれど、哀愁や愛嬌があって、どこか隙がある。そんな冷静と情熱が同居したようなスタイルが、令和の秋の空気感にマッチするのだ。
Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling:YONOSUKE KIKUCHI
Hair&Make:KAZUYA MATSUMOTO
Model:HAYATE OGASAWARA
Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)
揺り返しがあるのが、ファッションの常だ。例えば、カジュアルが流行れば、フォーマルが恋しくなってくる。反対に、フォーマルな流れが続けば、それを崩したスタイルがカウンターとして台頭してくる。「グランパコア」なんて言葉も出てきているが、いま注目されているクラシックへの回帰もそうだ。ストリートやアウトドアファッションを取り込んだカジュアルなファッションが脚光を浴びてきたが、クラシックなスタイルがもつ品の良さに注目が集まりつつあるのだ。そこでただのセットアップを選ぶのは芸がない。ウールがもつラギット(=無骨)さと、セットアップの品の良さをミックスさせることで、いなたい昭和のオヤジ感を演出したい。
ウールのセットアップを闇雲に選ぶだけでは、ただの古臭いおやじになってしまう。ディテールへのこだわり、仕立ての良さなど、上質なアイテムをチョイスしてこそ、いなたさが生きてくる。ポケットの配置やボタンの質感など、細部でモダンにアップデートしている一着を選びたい。