機能美と意匠を併せもち、モノ好きが唸る奥深い世界。それが料理道具。今回、取り上げるのは、パスタの腕前をランクアップさせてくれる、こだわりのツールです。煮たり、炒めたり、和えたり、調理の仕方が豊富で、イタリアントマトはもちろんのこと、たらこや納豆といった和の食材との相性も良いため、料理初心者から腕に自信のある料理男子まで、パスタは誰でも挑戦しやすい料理だと言えます。そこで便利なパスタツールから、生地を自作したいときに欠かせない調理道具まで、荒井康成氏がオススメの逸品を紹介します。
Styling&movie&photo:YASUNARI ARAI/Edit&Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)
2020.5.15
オーソドックスな乾麺のパスタでも十分ですが、せっかくなら手打ちパスタに挑戦してみてはいかがでしょう? 強力粉、卵、塩、そしてオリーブオイルを混ぜあわせ、こねていくだけなので料理が苦手な人でも、意外と簡単にできます。モチモチとした弾力と際立つ小麦の風味は、手打ちパスタならでは。手打ちパスタづくりに必要な道具は自宅にあるもので代用もできますが、こだわりのツールを揃えておくと、圧倒的にはかどります。
まずは、こねるときに使うマット。まな板の上で作業しても良いですが、スペースが小さかったり、生地がくっついたりしてしまいます。そこでオススメしたいのが、シリコン製のマット。生地が付着する心配もなく、しかも、お菓子づくりのときには、そのままマットごとオーブンに入れて焼き上げることもできます。一枚持っているだけで料理のバリエーションがグンと広がること請け合いです。
パスタ生地を小さく切り分けるスケッパーも、包丁やハサミよりも手早く切ることができるため、非常に便利です。生地を伸ばす、めん棒も厚みや硬さを整えるのに重宝します。
また生地づくりで使う強力粉や薄力粉は保存容器で管理したいところ。粉物は密閉性の高いケースを選ぶのが基本ですが、使い勝手で選ぶなら、同時に開けやすさにも配慮が行き届いているアイテムが良いでしょう。その点、オクソーのポップコンテナならボタンを押すだけで、簡単に開閉できます。
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デュマール
「シルパット シリコンマット」パスタの生地をこねる際に天板に敷くマットとしてはもちろん、タルトやクッキー生地を延ばすためや、飴やチョコレートデコレーションの台としても使えるシリコン製のマット。耐熱温度が300度になっているため、生地を成型したら、移すことなく、そのままオーブンで焼き上げることもできる優れものです。電子レンジや食洗機での使用も可。
参考価格 3,931円
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タイガークラウン
「スケッパー」弾力性のあるステンレス製バネ材を使った製品で、生地を返しやすく、使いやすい。ショートパスタなどの生地作りに使用できるほか、パン生地を小分けカットしたり、食材を細かく刻む際にも使える。まな板から鍋へ食材を投入したいときにも、きれいに運べる利点も。
参考価格 638円
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「めん棒」
全長45cm、直径3cmの檜製めん棒。手打ちパスタやピザ生地のほか、パイ生地やクッキーなどの成型には欠かせない。手で形を整えることもできるが、均等に力が入り、押す場所によって、生地の厚みを容易に変えられるので、一本持っていると便利。
参考価格 884円
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オクソー
「ポップコンテナ ビッグスクエア ショート」手づくりパスタの調理中は手元が汚れているため、調味料や保存容器の蓋の開け閉めは億劫だ。そんな不満を解消してくれるのが、すっきりとしたデザイン性も魅力的なオクソーのポップコンテナ。片手で簡単に開閉でき、しかもフタの裏側に計量カップなどのアクセサリーが収納できる点も好印象だ。
参考価格 2,200円
たっぷりのお湯の中で、泳がせるように茹で上げるのが、パスタの基礎ですが、男の厨房では鍋にもこだわりたいところです。通常の深鍋でも、パスタを茹でることはできますが、お湯の量が十分ではなく、麺がくっついてしまったり、固さにムラができてしまうことがあります。その点、専用のパスタ鍋なら、湯量をたっぷり確保できるだけではなく、湯切りがしやすいよう、麺を取り込むための“中カゴ”も付いています。“中カゴ”は吹きこぼれを防止して、均等に温度を保つ役割もあり、麺の茹でムラもなくなります。
オススメは、イタリアのブランド「ラゴスティーナ」のパスタ鍋。熱伝導に優れたアルミニウムと、高い耐久性と美しい輝きを持つステンレス鋼の3層構造で均一な熱伝導に定評があります。また、ドーム型のフタが個性的ですが、蒸気をスムーズに逃すという利点に加え、ゆで上がったパスタを和えるボウルとしても使えるという、美と機能を兼ね備えたデザインになっています。
パスタづくりに欠かせないもうひとつのツールといえば、ソース用のフライパン。こちらも新調するなら、素早く均一に火が通る熱伝導の優れたタイプがオススメです。「グリーンパン」のメイフラワーは熱や摩耗にも強いダイヤモンド配合しています。ボロネーゼやナポリタンといったトマトやケチャップでソースを煮込むパスタは、フライパンにこびり付いたコゲに旨味が凝縮します。これをこそぎ落としながら煮詰めるため、こびりつきにくい加工が施されていると扱いやすく便利です。またパスタとソースを和えるときに意外と重くなるので、フライパンは軽量なタイプを選ぶと良いでしょう。
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ラゴスティーナ
「パスタイオーラ・ピュウ 18cm」耐久性のあるステンレス鋼を、熱伝導に優れたアルミニウムで挟んだ3層構造を採用したイタリア製のパスタ鍋。置いておくだけでキッチンが華やぐデザインは一生モノ。中カゴには、大きさの異なる2種類の穴が開いており、沸とう時の気泡を小さくすることで、鍋中央への対流を促して、吹きこぼれにくい設計になっているなど、高い機能性も見逃せない。
参考価格 19,690円
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グリーンパン
「メイフラワー 26cm」熱や摩耗にも強いダイヤモンドを配合した、地球に優しいセラミックノンスティックコーティングのフライパン。素早く均一に火が通る優れた熱伝導性でパスタソースづくりに適している。ガスもIHも使用可能。天然木材のハンドルとビンテージ風のカラーリングも魅力的。
参考価格 7,150円
手打ちパスタをこね、たっぷりのお湯で茹でる。その間にソースをつくり、和えて完成。パスタの面白いところは、食べる瞬間までエンタメ要素があるところです。カービングフォークを使って、クルクルと巻きつけてから盛り付ければ、いつものパスタが高級レストランの逸品のように。
カービングフォークはお肉を刺して取り出すときに使割れることが多いキッチンツールですが、パスタの麺を絡めて盛り付けという用途にも使えます。フォークで代用することもできますが、より大きく巻きつけたり、盛り付けの自由度が高まります。
そして、最後はチーズグレーター(下し金)。食べる直前にテーブルで使えば気分が盛り上がるだけではなく、チーズの風味が食卓に広がります。シンプルな商品だけに、ハンドルの持ちやすさや切れ味の良さで選びたいところです。その点、「ビアンキ」のチーズグレーターなら、その両方を兼ね備えており、テーブルに置いておくだけでも、華やかに印象になります。
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ビクトリノックス
「グランメートル カービングフォーク」1884年創業のビクトリノックスのカービングフォークはモリブデンバナジウム鋼を使ったずしりとくる重量感が特徴。肉を刺して使用する際には切味の鋭さが際立つ。料理のプロフェッショナルたちが愛用する逸品だ。
参考価格 9,752円
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ビアンキ
「チーズグレーター Lサイズ」約200年の歴史を持つイタリアの下し金メーカー「ビアンキ」。ハンドル部分には手触りの良いチェリーウッドを使用。適度な厚みとくぼみもあり、持ちやすい。また切れ味が鋭いため、力を入れずになめらかにチーズを下ろすことができる。果物の皮などゼスターとしても使用可。
参考価格 3,300円
荒井 康成 YASUNARI ARAI
料理道具コンサルタント/Kitchenware Stylist
洋菓子店店長、和陶器店主を経て、フランス陶器エミール・アンリ社の日本法人設立に携わる。以後、日本初の「料理道具コンサルタント」として独立し、「料理通信」「ELLE gourmet」など、各食情報誌でのコラム執筆やスタイリング撮影、Panasonic「ふだんプレミアム」や魔法びんのパイオニア「サーモス」のInstagramディレクション、「キユーピーサラダクラブ」や「カルビーフルグラ」など食品会社の販促物スタイリング撮影、食の学校「レコール・バンタン」では講師として、多岐に渡り活動中。著書に「ずっと使いたい世界の料理道具」(産業編集センター刊行)。http://www.araitools.com