ある時は熱血漢の江戸っ子を、そしてある時はゲイのパティシエ役を……。どの作品にもさらりと登場し、しっかりと存在感を残す旬の俳優、それが安田顕さんだ。安田さんと言えば、北海道発のカリスマ演劇ユニット「TEAM NACS」のメンバー。現在も、東京と北海道の2つの拠点を行き来しており、安田さんの東京での活躍を北海道で暮らす家族も応援してくれているという。「いつかの父の日に、両親を東京でしか公演しない舞台に招いたことがありました。とても喜んでくれて、うれしかったですね。僕がもらう父の日のプレゼントですか? 今までもらったものは、似顔絵。絵が上手なのでとても似ていて、本当にうれしかった。娘がプレゼントしてくれる、その気持ちだけで十分ですけどね」と、父親の顔も覗かせた。
　映画、ドラマ、舞台と引っ張りだこの安田さんだが、俳優を志したきっかけは何だったのだろうか?「正直に言うと、“なんとなく”なんです（笑）。大学で面白そうだと思って、演劇研究会に入ったのが始まり。年が近かった森崎博之、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真が集まって、“なんとなく”ユニットを組んで俳優を続けてきた。そんな感じなんです」。
　今年夏、3年ぶりに開催する「TEAM NACS」本公演のタイトルが『悪童』に決定した。舞台の全容が明らかになっていない現段階ですでに、チケットはほぼ完売だという。その人気ぶりについて、客観的にこう話してくれた。
「ファンの皆さんは、僕たちの未完成なところに共感してくれているんじゃないかと思っています。特に5人が集まると、個人の未完成さがより際立つというか……。僕自身も、完成しないことが大事なことだと思っています」。

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　安田さんは、北海道の音楽番組で司会・ナレーションを担当するなど、音楽通としても知られている。中でも心酔しているのが、ビートルズ。「去年5月、ポール・マッカートニーの公演当日、国立競技場でグッズを買ってスタンバイしていたんです。なのに、中止が決定……。さすがに、その場で呆然としてしまいました。だから、今年は本当に待望でした!」。年を重ねても変わらず活躍するその姿は、安田さんの憧れだという。「いつかぜひ、お会いしたい! 会えたら泣いてしまうかも（笑）」。

　そんな安田さんは奇しくも、ポール・マッカートニーと同世代、70代の“ジジイ”が大活躍する、北野武監督最新作『龍三と七人の子分たち』に出演中だ。
「暴走族出身の詐欺集団のボス・西という悪役を演じさせてもらいました。シーン毎の撮影時間の速さと、北野監督のインスピレーションで現場が常に変化したので、演じることに集中できた作品でした」。
　主人公は、藤竜也さん率いる元やくざの“ジジイ”８人だ。「ここまでロングヒットになっているのも、“ジジイの色気と茶目っ気”に理由がある気がします。藤さんと同世代の方はもちろん、若い世代の人も笑って楽しめるシーンが満載です。マッカートニー氏もそうですが、70代にして色気があるってスゴいこと! 自分が70代になった時、ああなっていたいなと思います」。