休息を取りたいけれど、外に出て刺激も浴びたい。そんな葛藤があるのが僕らの休日。そこで提案したいのが、アートホテルで過ごす週末だ。あまり観光の予定は立てず、チェックインしたら、そのままホテルにステイ。羽を休めると同時に、館内や客室内にあるアート作品から刺激を受け取ることができるのだ。チルアウトしながら、脳はアクティブになる。そんなアートホテルでの1日も、「最高の休日」の候補に入るはずだ。
Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling:YONOSUKE KIKUCHI Model:MASASHI MIURA
Text:SHINSUKE UMENAKA(verb) Special Thanks:白井屋ホテル(www.shiroiya.com)
2024.3.15
年末年始や夏休みなど、長期の休みなら海外や遠方の旅行も良いだろう。だが、いつもの週末の休みなら、近場の宿を選びたい。移動するだけで疲れ果て、なんのための休みだったのか……、という事態を避けることができるからだ。とはいえ、それでは特別感が足りない。そこでおすすめしたいのが、カーシェアで憧れの車や普段は乗らない車種を選び、ドライブがてらホテルに向かうというプラン。レンタカーでも構わないが、早朝は店舗が開いていないし、手続きに時間がかかる。一方でカーシェアならいつでも利用でき、手続き不要ですぐ乗れるのが利点だ。豊富な車種が借りられるサービスも登場しており、それなら旅の道中が特別な体験に。
90年代のBMW320をカーシェアでレンタルし、都内から2時間ほどドライブ。クラシカルなデザインが物珍しいのか、歩行者が振り返るのがわかる。重いハンドルから感じる、どっしりとした走りも印象的だ。目的地の群馬県前橋市のアートホテル「白井屋ホテル」に着いたのは、昼下がりだった。ロンドン出身のプロダクト・デザイナーであるジャスパー・モリソンが手がけたという客室にチェックインする。
全面が木のパネルで覆われた箱のような客室だ。アート作品を運搬するための梱包用の箱をイメージしてデザインしたのだという。時が止まったかのような静寂に持参した本を取り出し、しばし読み耽った。この調子なら、滞在中に1冊読み終えてしまうだろう。
ふと木製の折戸を開けてみると、眼下にホテルの共有スペースが広がり、レアンドロ・エルリッヒのパイプを使った作品が目に入った。
もうひとつスペシャルルームを見せてもらった。イタリア建築界の巨匠であるミケーレ・デ・ルッキが手掛けた客室だ。「板葺き」という伝統的な技法を使い、およそ3000枚の木片で装飾されている。さまざまな場所から角度を変えて漏れる幻想的な光が印象的だ。こちらも非日常的な空間で、クリエイティビティが刺激される。
なんだか自分も巨匠になったような気分になってくるから不思議だ。建築家でもないのに、思わずミケーレ・デ・ルッキに思いを馳せてしまう。
空前のサウナブームで、サウナが趣味だという読者も多いだろう。確かに気持ちいいのだが、もっかの難点は都内のサウナは混みすぎだということ。ゆっくりと、ととのえない。だから、ホテルにサウナ付き、しかも、完全貸切というのは“最高の休日”の大事なピースになる。
読書でヒートアップした頭を、クールダウン。ここ白井屋ホテルの「ベッドルームサウナ」は、ととのえ親⽅こと松尾⼤と、サウナ師匠こと秋⼭⼤輔がたちあげた TTNEによるプロデュースで、寝返りのうてる設計になっている。通常のサウナなら、マナー違反でも、貸切なので問題ない。新たな“ととのい”の世界に誘ってくれるはず。
ショーツ29,000円/エスピー(エスピーショップ 恵比寿https://spproject.jp/)
白井屋ホテルの館内にはアート作品がそこかしこに飾られている。美術館やギャラリーを巡って、アートを楽しむのも良いが、滞在しながら作品に浸れるのがアートホテルの良さだ。藤本壮介によるアーキテクチャー。ローレンス・ウィナーによるウォールアート。来訪者を出迎えるリアム・ギリックの作品や、ライアン・ガンダーの迫力ある作品も印象深い。また、宮島達男の作品が設置された小屋では瞑想もできる。
そのほかにも、作品が点在しているので、ふらりと散策するのも楽しい。あちこちに出向いて、体力を減らしながらアートを味わうより、短い休暇ならアートホテルにステイし、癒しと刺激を満喫するのも悪くないだろう。