佐々木蔵之介

旅は自分と向き合う大切な時間。思い通りにいかないから感謝の心が芽生え、成長させてくれる 佐々木蔵之介

ひとりは心細い。非力な自分に嫌気が差すこともあるだろう。
でも、何ができないのか? 身の丈を知ることはとても大事だ。
「謙虚さ」という成長の糧を与えてくれるから。
そこに気づくには旅が手っ取り早いだろう。世界は広く、多様だから。

Photos : TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling : NORIHITO KATSUMI(Koa Hole inc.)
Hair&Make : SHINICHIRO(IKEDAYA TOKYO)
Text : SHINSUKE UMENAKA(verb) 2022.9.15
Special Interview KURANOSUKE SASAKI

島に船で上陸する。移動手段からワクワクするのが“島旅”

舞台公演を終えた翌朝。前夜の打ち上げの余韻が残るまま、海外へ飛ぶ。以前は、そんな風に休みをすべて旅に費やすこともあったという佐々木蔵之介さん。40カ国以上を旅してきた中には、島の思い出もある。

「“島旅”という響きを聞くだけでワクワクしますよね。小さな島なら電車や車ではなく、船で上陸しますから、それだけで特別な体験になります。国内では沖縄の本島だけでなく石垣島や宮古島といった離島にも行ったことがあります。また、島と聞いて真っ先に思い出すのは、映画のロケで滞在した渡名喜島です。訪れた島のなかではダントツに小さく、信号機もひとつしかないんです。信号機って交差点に2つあるのが普通ですが、島から出たときに“信号を知らないと困るから”とひとつだけ設置されているとか。そんなのどかな渡名喜島のフェリー乗り場で飲むオリオンビールが最高に美味しかったな」

訪れた土地で地元の酒を飲む。それも旅の楽しみだという。ビールの思い出は同じく“島”であるアイルランドにもあると語る。

「イギリスを旅していたとき、ふと隣のアイルランドには行ったことがなかったと衝動的に海を渡って訪れました。ダブリンでU2のボノらが経営するホテルに泊まって、ギネスビールの醸造所に行きましたが、屋上のバーで試飲できるんです。街を一望しながらのギネスビールもまた美味しかったですね」

ほかにも島旅の思い出を尋ねると、次から次へと旅先の記憶が出てくる。

「番組でロケでしたが、奄美大島も良かったですね。沖縄と鹿児島の文化が混じり合っているようなところで、食べ物も美味しかったし、カヤックは気持ちよかったな。旅先では名所を訪ねたり、食事をしたりと、アクティビティにはあまり参加しないんです。でも知人や番組などで提案されると、“じゃあ、やってみるか”と断わらないので、こう見えて、アクティブなんです(笑)。水上バイクやフライボードなど、いろんな経験をさせてもらっています」

佐々木蔵之介

ギリギリまで旅を満喫したいから……。空港から撮影現場に直行する

また、ハワイにも特別な思い出があるという。

「ハワイにはあまり興味がなかったのですが、“大人の”ハワイ旅はどうですか?と誘われて、行ったことがあります。隠れ家のようなバーで飲んだり、北極星と南十字星の両方が見られると聞き、夜にハワイ島の山にも登りました。星空と朝日を見たら、帰りは自転車で街まで一気に下っていく。そんな爽快なツアーでこれはおすすめです。空を飛ぶように風を切りながら、山を駆け降りていくんです」

島では海のアクティビティが気軽に体験できるが、火山帯にあり、山へもすぐにアクセスできるところも多い。海とトレッキングの両方が簡単に楽しめるのが、島の魅力でもある。

「あとは、ハワイ島ではセスナの操縦体験もしました。あれは、ほんまに怖かった。10分程度の講習だけですぐに離陸するのですが、メインパイロットは僕。“あげて、あげて!”と言われ、操縦桿を力一杯、引き上げると、上昇していきますが、怖くて、ずっと足を踏ん張っていました。“ちょうどいま真下がパールハーバーだよ”って、同乗している先生に言われても、余裕がなくて、まともに見られません。しばらくフライトしたら戻るのですが、着陸の方法は聞いてない……。もちろん先生がサポートしてくれるので安全なのですが、旅客機も行き交う空港に着陸するので、すごく緊張感があって、無事に戻ったときにはしばらく立てませんでした」

経験したことがないことをし、見たことがない景色を眺めたい。佐々木蔵之介さんを旅に駆り立てるのは、飽くなき好奇心だ。

「チャレンジャー精神というか、日本人がいない土地や、行ったことがないワンダーワールドを常に求めて旅しています。ロシアのウクライナ侵攻で遠のきましたが、いつかはキルギスとか中央アジアも巡ってみたいですね。島ならアイスランドもいいな」

もちろん海外では苦労や失敗の経験も多いが、日本の良さを再認識し、日頃、撮影現場でサポートしてくれる周囲のスタッフへの感謝の気持ちも芽生えてくる。

「レストランに入っても、メニューが読めないから、予想とは違う料理が出てきたり、ひとりなのに大皿料理を頼んでしまったり。自分の思う通りにはならないことばかり。日本だと何かと手伝っていただく機会も多いので、感謝の思いも強くなります」

そんな旅を満喫するため、休みのギリギリまで旅先に滞在するのが佐々木蔵之介流。スーツケースを抱え、空港から現場に直行することも珍しくない。だから旅の手荷物に台本は欠かせないのだ。

「事務所の人たちは不安でしょうが、機内で一泊して帰ってきたほうが効率いいじゃないですか。朝5時とか6時に着けば、しっかり寝て帰ってきているし、体調も問題ない。旅先や機内でセリフも頭に入れていますから。台本を集中して読むのもいいけれど、旅先で何気なく読むと、思わぬ発見をすることもあるんですよ」

そういって笑った。

佐々木蔵之介
ジャケット665,500円、ニット165,000円、パンツ90,200円、シューズ209,000円/以上すべて、BRUNELLO CUCINELLI(ブルネロ クチネリ ジャパン株式会社TEL:03-5276-8300)

ドラマを楽しみながら、京都観光!?思い出深いテレビドラマがこの秋、復活!

そんな旅を愛する佐々木蔵之介さんだが、この日は、地元・京都でのドラマ撮影を終えたばかり。2021年1月〜2月にABCテレビとテレビ神奈川で放送されていたテレビドラマ「ミヤコが京都にやって来た!」の続編が9月30日からスタートするのだ。これまで数々の撮影を経験してきたが、生まれ育った京都でのロケは感慨深いという。

「僕の実家の酒蔵は京都の椹木町通りにあるのですが、同じ通りにある豆腐屋さんを撮影で使わせてもらっています。現場に行って、“通るたびに豆乳を買っていた豆腐屋さんじゃないか”と、びっくりしました。いつもバレないように買っていたので、“実は……”と、はじめてご挨拶しました。前回の撮影のときも、そうでしたが、“中学校で一緒でした!”とか、地元のみなさんに声をかけていただいて、やっぱり京都はいいなと思いました」

ストーリーを追いながら、京都の名所や知られざるおすすめスポットが写り、まるで観光しているような気分に浸れる。それが「ミヤコが京都にやって来た!」の魅力でもあるのだ。

「前回は秋から冬の京都が見どころでしたが、今回は夏が舞台。夏の京都は、祇園祭もあるし、五山の送り火もあります。他にも川床で鮎を食べたりと、京都の夏を観光した気分になれます」

また、レギュラー陣に加え、毎話登場するゲストも見どころだ。今回はサラリーマン時代に同僚だった、ますだおかだの増田英彦さんも出演している。

「ますだおかだの増田さんの役名は“オカダ”っていうんです。ややこしいですよね。掛け合いをするようなシーンがあって、今回、一番稽古したかもしれません」

テレビドラマのあとには、舞台公演も控えており、旅はしばらくお預けかもしれない。

「11月23日から東京芸術劇場で『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』という舞台公演がはじまります。まったく共感できないようなドケチなオヤジを演じるのですが、プルさん(演出家のプルカレーテ)とは5年ぶりに組みます。彼の舞台は稽古から刺激的なので、いまから楽しみで仕方がありません」

仕事でもプライベートでも、立ち止まることを良しとせず、新たな刺激を求める佐々木蔵之介さん。人生の先輩として、その背中から学ぶところは多いだろう。

Information
佐々木蔵之介さんが地元・京都で奮闘
あの人情系ドラマが帰ってくる

「ミヤコが京都にやって来た!  ~ふたりの夏~」

脚本:今井雅子 出演:佐々木蔵之介、藤野涼子、結木滉星、松本若菜、柳沢慎吾、ますだおかだ増田、川畑泰史、おいでやす小田、三林京子、市川猿之助
ABCテレビ(関西) 2022年9月30日(金)深夜0:24〜 から3夜連続放送
TVer、GYAO!で見逃し配信あり

佐々木蔵之介×シルヴィウ・プルカレーテ
旋風を巻き起こしたタッグが5年ぶりに復活

守銭奴  ザ・マネー・クレイジー

作:モリエール 翻訳:秋山伸子 演出:シルヴィウ・プルカレーテ 出演:佐々木蔵之介 / 加治将樹、竹内將人、大西礼芳、天野はな / 茂手木桜子、菊池銀河 / 長谷川朝晴、阿南健治、手塚とおる、壤晴彦
日程:2022年11月23日(水・祝)~12月11日(日)
会場:東京都 東京芸術劇場 プレイハウス
お問合せ:東京芸術劇場ボックスオフィスTEL:0570-010-296(休館日を除く10:00〜19:00)
https://www.geigeki.jp/performance/theater321/

産経新聞社主催
「6年ぶり!蔵之介が京都にやってきた!」

佐々木蔵之介ディナー&トークショー

日時:2022年9月25日(日)
開場16:30、ディナー17:00〜、トークショー18:30〜
コースディナー(赤ワイン、白ワイン、ビール、ウーロン茶、オレンジジュースの飲み放題付き)
会場:ハイアット リージェンシー 京都(京都府京都市東山区三十三間堂廻り644番地2)
お問合せ:株式会社産業経済新聞社 新プロジェクト本部 TEL:03-3275-8834
https://id.sankei.jp/e/6334

佐々木蔵之介
プロフィール
佐々木 蔵之介(ささき くらのすけ)
1968年2月4日生まれ。京都府出身。神戸大学農学部在学中に劇団「惑星ピスタチオ」を旗揚げし看板俳優として活躍。NHKの連続テレビ小説『オードリー』の出演で脚光を浴び、シリーズ化された『ハンチョウ〜神南署安積班〜』(TBS系列)などヒット作を多数輩出する。9月25日には、ディナー&トークショーを行うほか、2023年1月には映画 「嘘八百 なにわ夢の陣」に出演予定。