暮らし・住まい
演技の源はマンガ!? 俳優・岡山天音をつくる3つのカルチャー
2021.12.27
NHK連続テレビ小説『ひよっこ』やドラマ『同期のサクラ』、2021年はドラマ『最愛』の終盤を盛り上げた岡山天音さん。観るものに鮮烈な印象を残す演技の源となるのは、ドラマや映画などの“演技”以外のところにあるよう。
岡山さんの2021年心に残ったマンガ、小説、音楽の3つのカルチャーをチェック!
撮影/米玉利朋子(G.P.FLAG) 取材・文/山西裕美(ヒストリアル)ヘアメイク/森下奈央子 スタイリスト/岡村春輝
マンガは大切な“インプット”
――マンガについては、今人気のものから名作、サブカル、少女ものまで幅広く読まれるそうですね。
「もともとは松本大洋さんのように“アート”の香りのするマンガ家さんの作品が好きだったんですが、自分は俳優だし『今流行りのものも読んでおかなくては』という気持ちが出てきて、そこからどんどん読むマンガのジャンルが広がっていきました。
くらもちふさこさん、いくえみ綾さんといった少女マンガも好きですし、友だちにおすすめされて読んだ、水木しげるさんの『河童の三平』は読んで衝撃を受けましたね。このマンガにインスパイアされて、たくさんのマンガ家さんが作品を生み出してきたであろう“大元”作品なわけじゃないですか。それなのに、今見ても鮮烈で新鮮でした」
――松本大洋さんの『ピンポン』(96年〜97年)は、岡山さんが2歳くらいのときの作品になりますが、いつ頃出会ったのでしょうか?
「中学生くらいですかね。ペコ役のおかっぱヘアの窪塚洋介さんのことは、どこかで見ていたとは思うのですが、自覚的に“触れた”のは、映画ではなくマンガが先だった思います。そうそうたる役者陣が出演していますし、どの方も輝きがすごい。映画作品も大好きですね」
――最初に読んで衝撃を受けたマンガは何でしたか?
「どうやらマンガはすごく小さい頃から読んでいたようで、マンガでどんどん文字を覚えていったと、母親が言っていました。でも“衝撃を受けた”という意味では、小6くらいのとき読んだうすた京介さんの『ピューと吹くジャガー』。1話6ページくらいしかなくて、主人公のジャガーさんやピヨ彦の画風も毎回変わって。他のマンガ家さんの絵のパロディみたいな回もあるんですけど、その理由も特に語られない(笑)。その規格外なところは、今まで見た頃がなかったんです。
この“見たことのないものを見たい”、“見た事のないものに出会いたい”というのが、自分の生活の基準になっていますね。俳優として演じるときの台本もそうでだし、それを演技したときの“見たことがないような自分を見たい”というのがあります」
――2021年、特に印象的だったマンガはありますか?
「『週刊少年マガジン』で連載されている『ブルーロック』というマンガにハマっています。全国のサッカーが上手な高校生300人を集めて戦わせて、ひとりが残るというストーリーなんですけど、ランダムに他の学校の人間とチームを組まされる中で、どんな化学反応が起こって点数につながるのかを分析していくわけです。僕も俳優として毎回違う方々と仕事をするわけですし、自分を生かすにはどうすればいいのかを考えるきっかけにもなる。これは仕事にも応用できるな、と思いました」
――今回お持ちいただいた『ひらやすみ』は、どのようなところに惹かれたのでしょう?。
「真造圭伍さんの作品がもともとすごく好きなんです。主人公の生田ヒロトは29歳のフリーターで、ナチュラルボーンでマイペース。それが二次元的なつくりではなく本当に地元にいそうなキャラクターで描かれている。人物に奥行きがあって立体的でおもしろい。この作品は“娯楽エンターテイメント”では終わらずに、読み終わったあとに“残り香”がある。エピソードも自分が今暮らしている日常と照らしあらせて考えられる。せかせかした今の世の中の空気の中で、必要なことが描かれている作品だと思うんです」
――マンガ作品を“娯楽”としてだけでなく、ご自身の俳優としての仕事や生活にも生かせる“インプット”にしているんですね。
――マンガはやっぱり“紙派”ですか?
「はい、僕はコミックや雑誌なども、全部“紙”で読んでいます。習慣もあるんですけど、作品に愛着を持つには“紙”がいいんです。おかげで自宅が大変なことになっていて、今自分に『どうするつもり?』って問うているのですが(笑)。買うときはかなり厳選しているんですけどね……」
EMPiREさんのライブに行くほどドハマり!
――ほかのエンターテイメント、音楽に関してはどうでしょうか?
「日本語のラップが好きなので、新しい楽曲やアーティストは日々チェックしていますね。パフォーマンスを見て、芝居に活かせないかは日々考えています」
――2021年特にハマったアーティストはいますか?
「ほんの1か月前からハマり始めたんですけど(笑)、知り合いにおすすめされたWACKのガールズ・グループでEMPiRE(エンパイア)さん。一気にハマりだして、アルバムはもちろんライブDVDも買ったし、先日のライブもチケットを取って観に行かせていただきました。
「推しメンバーは、MAHO EMPiREさん。ミュージックビデオを見ても、すべてのヘアスタイルを変えていたり、オリジナリティがすごい!
たくさんのアーティストさんがいる中で、“見たことがない存在”に出会うのはなかなかないんですが、EMPiREさんは斬新で刺激的でした。僕はドラマや映画とは違うところから、演技のインスパイアを受けたいというのは常にあるんです」
サスペンス小説の五感に訴えかける描写に衝撃
――小説もお好きだそうですが、今年印象に残った作品はありますか?
「僕は恋愛小説が好きで、今までサスペンス系はあまり読まなかったんです。でもサスペンスしか読まない、という知り合いからすすめられて、誉田哲也さんの『ケモノの城』という小説を読んだのですが、五感にすごく訴えかけてくる内容で。最後まで物語の輪郭がつかめなくて、サスペンスやミステリーは娯楽として純度が高いんだな、と改めて認識しましたね」
――他の方からおすすめされたものに、ハマることが多いんですね。
「人の好きなものを聞くのが好きなんです。具体的にあげていただければ、見たり触れたり、一度は首を突っ込みます」
沖縄返還をテーマにした舞台の見どころは?
――2022年はすぐ、出演舞台『hana 1970、コザが燃えた日』がスタートしますね。
「12月から“本読み”が始まって、沖縄の方言の指導をいただいたり、沖縄の“ゴザ騒動”があった場所も見学させていただいたり準備をしています。僕は松山ケンイチさん演じるヤクザ・ハルオの弟で、沖縄県職員会の幹部として沖縄県祖国復帰協議会の活動をしているアキオを演じさせていただきます。知性を宿したキャラクターだと思っています」
――この舞台で『GOODA』読者におすすめしたいところは、どんなところですか?
「僕には今まで沖縄は、人気のあるポップな土地というイメージがありましたが、このストーリーは、また異なる角度を取り上げています。この作品は単に“沖縄という限られた土地でこんなことが起こりました”ということではなく、僕たちが今生きている現実世界と密接につながっている“ある時代”が描かれている。今の人生をより濃密にするきっかけをつくってくれる内容じゃないかなと思います」
――年末年始は、舞台の準備で忙しいですね。
「そうですね。テレビでは特番が増えたりして特別感というか、年末年始のちょっと浮かれた空気が好きなんですが(笑)、のんびりはしていられないですね」
――最後に2022年の目標を聞かせてください。
「目の前にすべきことをやっていく中で、予測の範疇を超えることに一番醍醐味を感じるので、1年を通しての大きな目標は立てないんです。でも2021年は特にアーティストさんのラップやダンスにダイレクトに刺激を受けたので、今後仕事を広げていく意味でもダンスを本格的にやってみたいですね。芝居の仕事に絶対生かせると思っています」
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俳優
岡山天音 (おかやま・あまね)
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1994年6月17日生まれ、東京都出身。2009年俳優デビュー。2021年はドラマ『最愛』『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』、映画『FUNNY BUNNY』などに出演。2022年は出演映画『笑いのカイブツ』の公開を控えている。
『hana -1970、コザが燃えた日-』
【作】畑澤聖悟
【演出】栗山民也
【出演】松山ケンイチ、岡山天音、神尾佑、櫻井章喜、金子岳憲、玲央バルトナー、上原千果、余 貴美子
2022年1月9日(日)〜30日(日)、東京芸術劇場プレイハウスにて上演
▶『hana -1970、コザが燃えた日-』公式サイト