王道知らずして語るべからず。名品ファッションで訪ねる東京クラシック「飯」

王道知らずして語るべからず。名品ファッションで訪ねる東京クラシック「飯」

王道知らずして語るべからず。

ファッションでは、年代モノの古着や、時代を超えて愛される名品に目がない僕ら。ウザがられるとわかっていても、ついウンチクを語りたくなる。一方で、モノにこだわるクセに、こと「グルメ」になると、流行りやコスパを重視しがちだ。食べてしまえば、手元に残らないからなのかもしれないが、本当にそれで良いのだろうか?

数十年、あるいは100年続く老舗には、一朝一夕では到達できない奥深い味わいがある。だからファンができ、その輪が世代を超えて広がっていく。飽きさせない工夫や進化もあるだろう。それなのにチェーン店で満足し、王道の味を知らないのだとしたら、もったいなさすぎるだろう。僕らが憧れる大人は、自分だけの価値観や確かな審美眼を持っている。飯だって同じだ。それは本物を味わうことで磨かれていくのだ。そこで今回は、名品ファッションに身を包み、東京の名店を訪ねることにした。粋でいなせな、大人の嗜みをぜひ。

Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling:YONOSUKE KIKUCHI
Hair&Make:KOICHI AMANO
Model:EREN
Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)

明治5年創業。歴史ごと味わう、香り高い虎ノ門の蕎麦の名店

明治5年創業。歴史ごと味わう、香り高い虎ノ門の蕎麦の名店

東京クラシック飯

町名は古風だが、高層ビルが立ち並び、スーツ姿のビジネスパーソンが闊歩する街。それが東京の「虎ノ門」だ。2014年には高さ247メートルの超高層ビル「虎ノ門ヒルズ森タワー」が、2023年には新駅の「虎ノ門ヒルズ駅」が本開業するなど、再開発も進む。そんな近代化の一途を辿る町の一角に、時が止まったかのように佇む、古びた日本家屋がある。ランチタイムになると、その家屋に街に溢れたビジネスパーソンが次々と吸い込まれていく。明治5年創業の蕎麦の名店「虎ノ門 大坂屋 砂場」の日常である。

虎ノ門 大坂屋 砂場
虎ノ門 大坂屋 砂場
二八そばより技術がいるそば粉10:つなぎ2の「外二」そばを味わう

関東はそば文化で、関西はうどん文化だといわれ、東京には歴史を紡ぐ、そばの老舗がいくつかある。そして、その源流を辿ると3つに集約するという。それが「藪系」「更科系」「砂場系」だ。藪系のそばは、そばの実の外側も挽き込むため、色が濃く、味が濃醇なのが特徴で、淡路町にある「かんだやぶそば」が有名である。また更科系は、そばの実の芯だけを使い、白く、上品な味わい。そして甘口のそばつゆが特徴で、こちらは麻布十番の「総本家更科 堀井」が代表格だ。

そして、砂場系はそば粉8割:小麦粉2割のいわゆる「二八そば」による、つるつるとしたなめらかな喉越しが特徴で、虎ノ門 大坂屋 砂場はこの系譜に当たる。同店は、そばの実の中心に近い部分を使った、そば粉10:つなぎ2の「外二」と呼ばれる配合を採用していて、二八よりも高い製麺技術が求められるという。そんな「虎ノ門 大坂屋 砂場」を訪ねた。

虎ノ門 大坂屋 砂場
伝統を重んじながら、変化することを恐れない。だから常に美味い

現在の虎ノ門 大坂屋 砂場の印象的な日本家屋は、大正12年に建てられたもの。瓦葺屋根の木造2階建てで、国の登録有形文化財に指定されている。のれんをくぐると、時が刻まれた情緒ある風景が広がっている。この趣のある空間が、そばの旨さを加速させる舞台装置でもあるのだが、道路の拡張工事などによって解体の危機に直面したことがある。しかし、曳家工事という建物を取り壊さずに、そのまま移動させる工法で乗り切った。こうして現在の場所で明治から続く伝統のそばを提供している。

常連客も多い、歴史あるお店を受け継ぐのは、さぞプレッシャーだったのではと、外野は推測するが、自然なことだったと6代目店主の稲垣隆俊さんは言う。

「家族全員が店で働き、父の不在時も皆と一緒に店の運営をしてきました。だから日常生活=店の営業、という状態で、店を継ぐことになった時も特別な感情はありませんでした。それに伝統は大事にしますが、それに固執しないよう心がけています。昔ながらのものや味を大事にしながら、時代に合わせて変えていける柔軟さを持つことが大切だと考えています」

確かにメニューをみると、「もり」や「鴨せいろ」といったオーソドックスな一品に加えて、「蛤そば」や「白子そば」といった季節限定の品も多く見られる。さらにそば屋のメニューに付き物の日本酒や焼酎に並んで、ワインの銘柄も目に入る。

「ワインを取り扱うようになったきっかけは、はっきりとは思い出せません。ただ、和食店でワインを扱っているお店もあるのだから、うちでも出してみたいと思いました。ワインを置く狙いですか? 残念ながら、明確な理由はありませんが、強いて言えば、お客様に喜んでもらいたいからですかね」

セレクトの基準は、そばつゆに合うワインだと語る。

虎ノ門 大坂屋 砂場
香り高いそばを啜りながらこれからの人生に想いを馳せる

今回、数あるメニューの中から、「もり」を注文した。そば本来の風味が堪能できるシンプルな「もり」だからこそ、つゆやそばの違いを明確に感じる。まずは、つゆにつけず、そのまま口に運んでみる。目を瞑り、味を表現する言葉を探そうとした、矢先に、そばの香りが鼻を抜ける。続けて、そばを少しつゆに潜らせ、すする。今度は奥行きのある旨味に舌が包まれる。そして、芳醇な出汁の香りを、そばの爽やかな風味が追い抜いていく。

贅沢な時間をゆっくりと味わいたいのだが、箸を持つ手が止まらない。目の前にあった、そばの山が、あっという間に崩れていく。興奮して「お店を永く続けるために大切にしていることは何ですか?」と店主に尋ねると、こう返された。

「伝統を大事にするが、それに固執しないこと。昔ながらのものや味を大事にしながらも、時代に合わせて変えていける柔軟さを持つこと。お客様への感謝の気持ちを忘れないこと。店の品格や信用を重視すること。守るべきもの、残すべきもの、得られないものの見極めを間違えないこと。家憲を守ること。そして、店は自分のものではなく、先代から預かり、次の世代に渡すものだと認識することじゃないでしょうか?」

続けることは大切だが、それが目的化しては進歩が止まってしまう。だから、変化を受け入れる柔軟さも大事というわけだ。とはいえ、言うのは簡単だが、それを実践する胆力は別次元だろう。仕事でも成功体験があると、頼りにし、執着しがちだ。店主の言葉が身に染みるのであった。

虎ノ門 大坂屋 砂場
虎ノ門 大坂屋 砂場
虎ノ門 大坂屋 砂場

港区虎ノ門1-10-6
定休日:土日祝
営:月火11:00〜14:30/16:30〜19:30、水木金11:00〜14:30/16:30〜20:00
※蕎麦が売り切れの際は閉店に

虎ノ門 大坂屋 砂場 × ファッション

虎ノ門 大坂屋 砂場 × ファッション
「インディビジュアライズド シャツ」のシャツ
シャツ42,900円/インディビジュアライズド シャツ(メイデン・カンパニーTEL: 03-5410-9777)
タブカラーがアクセントに アメリカを代表するシャツメーカーの 「インディビジュアライズド シャツ」

現在の「虎ノ門 大坂屋 砂場」の店舗は大正12年(1923年)に建てられたものだ。東京大空襲や関東大震災、そして近年では東日本大震災といった大災害からも生き延びてきた。だから、ノスタルジックな雰囲気のなかで食事ができるわけだが、せっかくなら、ふさわしい格好で入店したい。そこで選んだのはアメリカを代表するシャツメーカー「インディビジュアライズド シャツ」の定番シャツだ。同ブランドは1961年にジョン・ラレスカとジョージ・ジマーマンという2人のシャツ職人が立ち上げたもので、「インディビジュアライズ=個人個人に合わせる」という名の通り、豊富な生地とディテールから自分だけの一着をオーダーできるのが最大の特徴となっている。

アメリカで最も大きな成功を収めたカスタムシャツメーカーといわれるが、現在もすべてのインディビジュアライズ シャツは発祥の地であるニュージャージー州のパースアンボイの工房で、仕立てられている。

そんな「インディビジュアライズド シャツ」のシャツのなかから、今回はクラシックなタブカラーを採用した一着をセレクトした。タブカラーというのは、左右の襟をつなぐ紐(=タブ)が付いたシャツのことで、ネクタイを締めた後に下から紐をかけると、ネクタイを立体的に魅せることができるというもの。ネクタイをしないときも、トップのボタンを開ければ、タブが衿元のアクセントになってくれる。

通なシャツで伝統のそばを啜る。なんて粋だろう。

タブカラーがアクセントに アメリカを代表するシャツメーカーの 「インディビジュアライズド シャツ」
ジャケット154,000円/ヘリル(にしのやTEL:03-6434-0983)、デニムパンツ45,100円[2-3月発売予定]/リーバイス®︎(リーバイ・ストラウス ジャパン株式会社TEL:0120-099-501)、スニーカー85,800円[4月中旬入荷予定]/ビズビム(TEL:03-5468-5424)、ヴィンテージの時計514,800円/(江口洋品店・江口時計店 松濤TEL:03-5422-3070)、ネクタイ20,900円/インディビジュアライズドアクセサリーズ(メイデン・カンパニーTEL:03-5410-9777)、眼鏡/スタイリスト私物
タブカラーがアクセントに アメリカを代表するシャツメーカーの 「インディビジュアライズド シャツ」

Information ココも行きたい

さて、蕎麦の次はどこへ行こう?シャツにタイを締めて訪ねたい、東京の「いい店」。

王道の老舗もいいけれど、こだわりの名品を纏って出かけたい場所は東京にまだまだある。気取らないビストロから焼肉、かき氷が自慢の和食処まで。自分のスタイルを楽しみつつ、今の気分でふらりと立ち寄りたくなるような5軒をご紹介。

和kitchenかんな
和kitchenかんな
和kitchenかんな

かき氷と和食の意外な名コンビ

世田谷公園の近くに位置する、かき氷と和食の人気店。看板メニューのかき氷は、温度管理を徹底した極上の口どけが特徴だ。程よい塩味が効いた「かんなの氷しるこ」や、風味豊かな「濃厚紫いも牛乳」など、独自のメニューが揃う。ランチでは焼き魚などの本格的な和膳も用意。大きな窓から光が差し込む開放的な空間で、落ち着いたひと時を満喫できる。

DATA 住所/東京都世田谷区下馬2丁目43-11 コムズ下馬2F
電話/03-6453-2737
時間/11:00~19:00(食事・かき氷LO17:30、食事のみLO18:00、かき氷のみLO18:30)
定休日/水曜日

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炭火焼き 花火
炭火焼き 花火
炭火焼き 花火

炭火で焼く本格串を心ゆくまで

立川駅から少し歩いた場所に位置する、本格的な炭火焼き鳥をカジュアルに楽しめる店。一本ずつ丁寧に仕込まれた串焼きは、希少部位の「ちょうちん」や「あみレバー」など、通好みなラインナップが揃う。店内は広々としていて、ゆったり過ごせる個室も完備。友人との食事から少人数の集まりまで、気負わず旨い串を味わいたい夜にぴったり。

DATA 住所/東京都立川市高松町3-14-11マスターズオフィスビルB1F
電話/042-595-7227
時間/月~金曜日17:00~23:30 (料理LO22:30、ドリンクLO23:00)
土・日・祝日15:00~23:30 (料理LO22:30、ドリンクLO23:00)
定休日/なし

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和牛焼肉 古太郎 神楽坂本店
和牛焼肉 古太郎 神楽坂本店
和牛焼肉 古太郎 神楽坂本店

プロの技と厳選和牛を
カジュアルに

神楽坂駅からすぐの場所に店を構える、和牛焼肉の専門店。20年以上のキャリアを持つ料理長が厳選した黒毛和牛を、肩ひじ張らずに楽しめるのが魅力だ。部位ごとに最適な焼き方をレクチャーしてくれる“焼き師”の存在も心強い。モダンでお洒落な空間には半個室もあり、仕事帰りや週末のディナーに最適。確かな質を気取らずに堪能できるのが嬉しい。

DATA 住所/東京都新宿区神楽坂6-39 エキューラ神楽坂1A
電話/03-6280-8829
時間/17:00~23:00(LO22:30)
定休日/無休

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KICHEN CLOWN
KICHEN CLOWN
KICHEN CLOWN

心地よい空間で味わう旬の一皿

経堂の住宅街に位置する、フレンチベースの料理を楽しめるビストロ。店主の出身地である新潟産の食材など、旬の味を活かした一皿が充実している。フランスやオーストリアの厳選ワインも豊富で、料理との組み合わせも楽しみの一つ。肩ひじ張らずに過ごせる雰囲気で、日常のなかでふらっと立ち寄りたくなるような存在。

DATA 住所/東京都世田谷区船橋5-20-14パル千歳1F
電話/03-6356-5666
時間/月~金曜日11:30~14:00、18:00~23:00、土曜日18:00~23:00
定休日/日曜日、不定休

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BAR&CAFE 結
BAR&CAFE 結
BAR&CAFE 結

和モダンな空間で味わう
多彩なカクテル

赤坂の路地に位置する、都会的な和の感性が光るバー。広々としたカウンターが目を引く店内は、落ち着いたトーンで統一され、ゆったりとお酒と向き合える。スタンダードから季節のフルーツを活かした一杯まで、カクテルのラインナップが充実しているのも魅力。完全個室も備えており、一人飲みからグループでの二軒目まで使い勝手抜群だ。

DATA 住所/東京都港区赤坂3-11-15 vort赤坂見附1F
電話/03-5544-9969
時間/月~土曜日19:00~03:00
定休日/日・祝日

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Sanka串焼き-燦火-
Sanka串焼き-燦火-
Sanka串焼き-燦火-

たっぷり野菜を肉で巻く
「野菜巻き」を満喫

府中駅から徒歩約1分。炭火で焼き上げる「野菜巻き」や「牛タン串」をカジュアルに満喫できる一軒だ。旬の野菜を肉で巻いたヘルシーな串は、酒の肴にも相性抜群。モダンな店内にはカウンター席も備わり、落ち着いて食事を楽しめる。希少な日本酒やお洒落なサワー、エクストラコールドを片手に、仕事帰りの一杯やデートに活用したい。

DATA 住所/東京都府中市府中町1-6-6 英和ビル B1F
電話/042-319-9570
時間/火~日曜日16:00~23:00
定休日/月曜日

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