昭和の文豪たちが通った銀座の老舗Barは大人の社交の場

昭和の文豪たちが通った銀座の老舗Barは大人の社交の場

東京クラシック飯

Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling:YONOSUKE KIKUCHI
Hair&Make:KOICHI AMANO
Model:EREN
Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)

大人になったら、行きつけのバーのひとつくらい持っておきたいものだ。たとえば、デートや記念日で二軒目に寄りたい時。行き先が居酒屋だと興醒めさせてしまう。あるいは一人で飲みたい夜もある。そんな時バーが手札にあれば、粋ではないか。それが大人の嗜みでもある。ただ、どんなバーに行くのかという問題が残る。ホテルのバーはオーセンティック過ぎて気取ってると思われるし、背伸びした感が出てしまう。そこでおすすめしたいのが、銀座の老舗バー「ルパン」だ。昭和の名だたる文豪たちが通った老舗のバーだが、路地裏にあり、しかも地下にある。まさに隠れ家的な魅力を持つバーなのだ。かつて昭和の文豪たちが通い、現在も大人の社交の場として機能する、「ルパン」を紹介しよう。

「ルパン」
激動の昭和の荒波を乗り越えてきた名店で飲む贅沢な時間
激動の昭和の荒波を乗り越えてきた名店で飲む贅沢な時間

世界的な高級ブランドの店舗や老舗百貨店、そして一流料理店が集まる格式のある街。それが銀座だ。日本一地価が高く、文字通りの一等地である。碁盤の目のように規則正しく区画が整理されていて、隙間なく、ビルが建ち並ぶ。

そんな銀座のとある街角に知らなければ通り過ぎてしまうような、細い路地がある。煌びやかな表通りとは違い、陽が差し込まないその路地には、昼間ならなおのこと、誰も寄りつかない。しかし、ネオンに明かりが灯るころになると、「ルパン」を目指して人が集まってくる。頑丈な扉を開けると、地下へ続く階段が現れる。店内が見えず、最初は緊張するが、降りた先には別世界が広がっている。それが「ルパン」だ。

同店の歴史は古い。昭和ひと桁の昭和3年(1928年)で、当時は、「カフエー」という、女給のサービスでお酒を飲ませる洋風の酒場スタイルだったという。泉鏡花や菊池寛といった文豪たちの支援を受けて開業したこともあって、名だたる作家たちが集うことになる。そして、現在のカウンターバーのスタイルに改装されたのが、1936年のこと。

その後、戦争がはじまり、空襲も経験した。戦後は酒類の販売ができなくなり、以降もビルの立て替えや名物オーナーの死去と、何度も存続が危ぶまれる危機があったが、それでも生き延びてきた。

「多くのファンの方々がお店を支えてくださったから、ここまで続けてこられました。銀座は土地柄、敷居の高いお店もあるのですが、うちは入口の扉こそ開けるのに勇気がいりますが、入ってしまえばリラックスして過ごしていただけるような空間になっています。また、値段も極力あげないのがポリシーで、必要以上の儲けはいただかない。そんな姿勢も評価してくださっているのかもしれません」

とマネージャーの高﨑尚彦さんは言う。

「ルパン」
開店時のランプシェードやL字型の木製カウンターをいまなお使用する店内

また、ランプシェードや重厚なL字型の木製カウンターなど、使い込まれた調度品の数々は、老舗バーの勲章。特別な空間にいる自分に浸れるのだ。

「1972年にビルの建て直し工事があったのですが、新しいビルになっても、いままで通りのルパンとして営業するためにタモ製のカウンターをはじめ、内装を丁寧に外して保管しておきました。それを再び使って営業を再開したのですが、このいつまでも変わらない店の空間を支持してくださる方も多いですね」

そう店が長く愛される理由を高﨑さんは語る。また、店の一番奥には常連のひとりだった、太宰治のポートレート写真が飾られている。近年は海外の若者の間で太宰治の小説が読まれており、ファンが訪ねてくることも珍しくないという。取材時も熱心に看板を撮影する外国人女性がいた。聞けば、太宰治のファンで、ゆかりの地として来訪したと語っていた。ちなみに彼女は来店するなり、太宰治がよく座っていた席を尋ね、そこに陣取っていた。そんな光景が見られるのも、ファンが多い銀座の名店ならではだろう。

「ルパン」
時代を超え、文豪と乾杯。坂口安吾が好んで飲んだゴールデンフィズ

せっかくなので、何かカクテルをということで、おすすめの一杯をベテランバーテンダーの開 幾夫さんに作ってもらった。坂口安吾が好んで飲んだとされるゴールデンフィズだ。ゴールデンフィズは、ジン・フィズをアレンジしたカクテルで卵黄を使用して作るのが、特徴だ。まろやかな口当たりで、とても飲みやすい。

背後には太宰治のポートレート。手元には坂口安吾が愛したゴールデンフィズ。なんだか文豪の仲間入りをし、一緒に飲んでいるような気分になってくる。実際、銀座 ルパンには長らく、作家はもちろん、画壇や演劇界の人々、医師、そして経済界の大物などが集い、大人の社交の場として機能した。1978年には開店50周年を祝う集いが帝国ホテルで開催されたほど各界にファンが多いのだ。

ゴールデンフィズをグッと飲み干し、外に出る。再び重い扉を開けると、銀座のネオンが辺りを包む、また別の世界が広がっていた。ちょっとお洒落をして、そんな不思議な体験をする。それもまた粋な夜の過ごし方だろう。バー初心者でも、ルパンが誘ってくれるはずだ。

「ルパン」
「ルパン」
バー ルパン

中央区銀座5-5-11塚本不動産ビル地階
定休日:月および日
営:17:00~23:30(L.O.23:00)
※支払いは現金のみ。チャージ代は一人800円(税抜)

ルパン×ファッション

ルパン×ファッション
「ジョン スメドレー」のニット
カーディガン56,100円、ニット49,500円/ともにジョン スメドレー(リーミルズ エージェンシーTEL: 03-5784-1238)
歴史を刻む店内に馴染む ジョンスメドレーの 品が溢れる定番ニット

店内のあちこちに昭和の歴史が刻まれた銀座 ルパン。そんな名店に望むファッションとして選んだのは1784年にイギリスで創業された「ジョン スメドレー」のニットだ。同ブランドはイギリスで最も長い歴史を持つブランドのひとつで、英国王室御用達のニットとして知られる。現在も家族によって経営されていて、開店以来の主人だった高﨑雪子と、その弟でバーテンダーだった武が人気を支えたルパンともリンクする。

長袖のクルーネックニットは、定期的にボディバランスが見直されていて、時代が変わっても常に普遍的に見えるよう緻密に設計されているという。また、最高級綿のシーアイランドコットンを使用した上品な質感が大人の社交場にふさわしいと言えるだろう。そんなクルーネックニットに合わせるのが、同じくシーアイランドコットン製の長袖Vネックカーディガン。ハイゲージならではの程よいフィット感がオーセンティックな雰囲気を醸し出してくれる。

歴史を刻む店内に馴染む ジョンスメドレーの 品が溢れる定番ニット
コート 149,600 円/マッキントッシュ(マッキントッシュ 六本木ヒルズ店 TEL:03-5843- 1580)、パンツ 88,000 円/ユーゲン(イデアス TEL:03-6869-4279)、シューズ 101,200 円 /パラブーツ(パラブーツ青山店 TEL:03-5766-6688)、ヴィンテージの時計 404,800 円/ (江口洋品店・江口時計店 松濤 TEL:03-5422-3070)、眼鏡/スタイリスト私物

Information ココも行きたい

上質な一着で訪れたい、 東京の「ちょうどいい」店。

ジョンスメドレーのような品の良いニットを纏った日は、その佇まいに見合う場所を選びたい。背伸びしすぎず、旨い酒と料理を心ゆくまで楽しめる、そんなデートの候補としても知っておきたい6軒をピックアップ。肩の力を抜きつつ、大切な人との時間をさりげなく格上げしてくれるはずだ。

カッパ・シェフのふれんち屋さん~日本ワインとカジュアル・フレンチ~
カッパ・シェフのふれんち屋さん~日本ワインとカジュアル・フレンチ~
カッパ・シェフのふれんち屋さん~日本ワインとカジュアル・フレンチ~

町田の地場野菜と
選びぬかれた日本ワインを

町田駅からほど近い場所にある、日本ワインとフレンチを楽しめる一軒。ソムリエのオーナーシェフが全国各地のワイナリーと直接取引し、これぞという銘柄を厳選して取り揃えている。和の要素をさりげなく取り入れた本格フレンチは、日本ワインの繊細な味わいと見事に調和。落ち着いた空気感のなか、一皿ごとに新しい発見があるような場所。

DATA 住所/東京都町田市森野1丁目22-1 都南ビルB1F
電話/042-794-7904
時間/17:00~23:00(最終入店21:30、フードLO22:00、ドリンクLO22:30)
定休日/不定休

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NOR(ノア)
NOR(ノア)
NOR(ノア)

幻の「おびら和牛」と
北海道の旬を味わうビストロ

北海道の食材を軸に据えた、白金高輪にあるビストロ。年間30頭ほどしか出回らない希少な「おびら和牛」や、産地直送の旬の素材を、ジャンルを越えた調理法で提供する。北海道の街並みを彷彿とさせる煉瓦仕立ての店内には、カウンターからペット同伴可能なテラスまでを備え、日常から記念日まで多様なシーンに対応する。

DATA 住所/東京都港区白金1丁目10-8リブリShirokane1F
電話/03-6447-7940
時間/昼11:30~14:30(LO14:00)、夜17:30~22:00(LO21:00)
定休日/日・月曜日

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incanto(インカント)
incanto(インカント)

イタリア全20州の郷土料理と
ワインに浸る

イタリア郷土料理をコースで提供するリストランテ&ワインバール。近代から古代ローマまで、各州の料理を幅広く取り入れたラインナップを楽しめる。大きなワインセラーには2,000本以上のワインが並び、ソムリエによる希少な古酒とのペアリングも可能だ。ワインバーとして気軽に立ち寄れるカウンターも用意されている。

DATA 住所/東京都港区南麻布4-12-2ピュアーレ広尾2F
電話/03-3473-0567
時間/ディナー18:00~21:30(LO)
ワインバール月~金曜日18:00~25:00(LO)、土・祝日 18:00~23:00(LO)
定休日/日・月曜日不定、夏期休暇期間、年末年始
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https://incanto.jp/

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Kiro;
Kiro;
Kiro;

「帰路」に想いを馳せる
神保町のイタリアン

神保町にある、10席のコの字カウンターを備えたイタリアン。自家畑や農家から届く旬の食材を使い、素材の魅力を引き立てる調理法で丁寧に仕上げられた料理を堪能できる。平日ランチでは週替りの自家製パスタや、濃厚なスパイスカレーも用意。店名には、有意義な未来へ続く「帰り道」という願いが込められている。

DATA 住所/東京都千代田区神田神保町1-37-1Redo神保町1F
電話/080-8888-8030
時間/昼11:30~15:00、夜18:00~23:00
定休日/不定休

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141 OUJI TABLE
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開放感あふれる
日常使いのイタリアン

王子駅直結のサンスクエア内にある、開放感あふれるカジュアルイタリアン。大きな窓から新幹線やJR各線を一望できる、広々とした空間が魅力だ。看板メニューの「牛肉のタリアータ」をはじめ、多彩なパスタやピザをコースやアラカルトで味わえる。個室やカウンターも完備しており、お出かけついでや日常のデート、パーティーにも使いやすい。

DATA 住所/東京都北区王子1丁目4-1 王子駅前サンスクエア3F
電話/03-5933-6955
時間/11:00~22:00(LO21:00)
定休日/年末年始

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Slay
Slay
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ソムリエが営む
三軒茶屋のイタリアンビストロ

三軒茶屋駅から徒歩約3分。ソムリエ資格を持つオーナーシェフが、厳選食材とワインで日常に寄り添う本格イタリアンを届ける。希少な黒毛和牛などの肉料理から趣向を凝らした小皿料理まで、リーズナブルにワンランク上の味を楽しめるのが魅力だ。仕事帰りの一杯からデートまで、思い立ったら気軽に立ち寄れる一軒。

DATA 住所/東京都世田谷区太子堂4-3-3クレアーレ三軒茶屋1F
電話/03-6805-2970
時間/17:00~00:00(LO23:00)
定休日/不定休

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