テクニックや知識、そして運が求められる
バス釣りはゲーム性が高く
大人の遊びに最適だ。
強いて難点を挙げるとすれば、
釣れてもリリースが基本で
釣りの醍醐味のひとつである“食”がないこと。
その点、イワナやヤマメなどを狙う渓流釣りは
ゲーム性に加えて、食す喜びを兼ね備えている。
昨今、注目を集める「自給自足」に関心があっても
ハードルの高さに尻込みしている人は
その一端を味わうという意味でも
渓流釣りからはじめてみるのはどうだろう。
Photos : TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling : YONOSUKE KIKUCHI
Model : Shogo
Text : SHINSUKE UMENAKA
どんな趣味も初期投資にコストがかかると、それだけで尻込みしてしまう。ハマるかどうかわからない状態で大金を叩けない。そこでおすすめしたいのが、テンカラだ。テンカラとは渓流に棲んでいるイワナやヤマメなどを「毛鉤(けばり)」で狙う釣りのこと。古くから日本各地の山間部で行なわれてきた釣法で、戦後になって名称が全国的に統一されたといわれている。同じく毛鉤を使うフライフィッシングとの最大の違いは、リールを使わない点だ。必然的に使用する糸の長さが短くなり、近くにいるターゲットしか狙えないが、そもそも川幅の狭い渓流に行けば、そんなリーチの短さは気にならない。また、その分、キャスティングの難易度も低く、初心者でも扱いやすいのが特徴だ。ロッドと糸、そして毛鉤の3点があれば、はじめられる手軽さは大きなアドバンテージだろう。
渓流が舞台のテンカラは、潮風や水飛沫を浴びる船釣りよりも、服装の自由度が高いと言える。とくに、近年はキャンプや登山といったアウトドアアクティビティがブームで防水性や透湿性に優れたウェアは手に入りやすく、それらでも代用可能だ。もちろんこだわりたいなら、フィッシングウェアに軍配があがるだろう。また、専用のウェーダーの着用がおすすめだ。ウェーダーとは、パンツタイプの防水ウェアで、着用すれば水に濡れることを気にせず、移動することができる。渓流釣りでは、下流から上流に向かって、沢を登りながら釣っていくのが一般的な攻め方だ。岸際を歩くだけでは、前に進めないこともよくある。そんなときウェーダーがあれば、浅瀬を通って、登っていける。とくにリーチが短いテンカラでは、足元を気にしていては、釣りができるポイントが非常に限られてしまう。
テンカラでは餌を使用しない。水生の昆虫を模して作られた毛鉤を、魚が潜んでいそうな場所に落とし、本物の昆虫と間違えるように食いつかせて釣るのだ。どこに毛鉤を落とすのか? また、自然な動きで毛鉤を川面に漂わせることが肝心だ。魚の習性はもちろん、天候や水温、時間帯、地形などの知識を蓄え、経験を積むことが釣果をあげるポイントだが、ビギナーズラックもある。水深が深く魚影が見えない海釣りと違い、ポイントは浅瀬が多い。また、水が澄んだ清流での釣りがほとんどで、魚が毛鉤を見つけ、餌と勘違いして向かってくる瞬間を目の当たりにできる点もテンカラの魅力だろう。スリリングな魚との駆け引きをぜひ一度、体験してみてほしい。
渓流釣りを楽しむには、入漁券や遊漁承認証と呼ばれるチケットを事前に購入する必要がある。自然に流れる渓流といえど、大半の釣り場は漁業協同組合によって管理されているのだ。魚の放流や釣り場整備に入漁券で得たお金が使われているため、必ず購入しておこう。そして、運良く魚をゲットできたら、ありがたく頂こう。釣り上げた魚を自分で食すのも、釣りの醍醐味のひとつだし、鮮度の良い川魚はスーパーなどで購入する、それとはまるで別物だ。美味しかったという体験が次回へのモチベーションになるし、自然環境を大切にしていこうという思いにもつながる。
昨今のフィッシングアイテムのファッション性の高さには目を見張るものがある。
防水性や透湿性、そして収納力はもちろん、
デザインに優れたアイテムが多数、登場している。
ロッド(竿)とライン(糸)、そして毛鉤さえあれば、できてしまうテンカラ。仕掛けや餌など、持ち物が多い、他の釣りと比べると圧倒的に身軽だ。とはいえ、替えの毛鉤やはさみ、予備のライン(糸)など、最低限の手荷物は発生する。だからベストがあると、重宝する。今回ご紹介するのは、ペットボトルを原料にしたリサイクルポリエステル素材を使用したアンドワンダーのキャンプ用のベストと、サプレックスナイロンを使用したグリップスワニーのギアバッグベスト。前者は背中に大型ポケット、脇に吊り下げループ、そして左右の腰ポケットの中に、中身が見えやすいメッシュ素材のポケットを備えた収納力が魅力的。後者はバッグにも変形するユニークな2WAYデザインのベストだ。
ウェーダーを履くことを考えれば、渓流釣りのパンツはより自由度が増す。軍モノやアウトドアパンツなど耐久性や動きやすさに優れたものを、好きにチョイスして構わない。フィッシングウェアでなければダメだと、固定観念に囚われる必要もないだろう。夏場ならシーエムエフ アウトドアガーメントのパンツのように、ショーツに切り替えられるタイプもありだ。魚を求めて歩き回ることもあるので、体温調整できるに越したことはない。
渓流釣りのフィールドは都市部より気温が低く、真夏でも過ごしやすい。それでも日中になると強い日差しが照りつけることもあるので、帽子は準備しておきたいところ。体力が奪われてしまうと、魚との駆け引きも十分に楽しめない。またテンカラは魚との距離が近く、肉眼でも魚影を確認できるものの、偏光レンズのサングラスがあると、よりファイトに集中できるのでおすすめだ。
河原には大小さまざまな石・岩が転がっており、実に不安定だ。苔や濡れてスリッピーになっているところも多い。したがってスニーカーは避けるべきだ。グリップ力があり、石の凹凸に負けないハードなソールを備えたシューズを選びたい。防水性や蒸れにくい透湿性に優れたアウトドアシューズがベターで、可能ならグリップ力の高いフェルトソールのシューズを持っていきたいところだ。もし、渓流釣りに魅力を感じ、よりアクティブにフィールドを移動したくなったら、ウェーダーの購入を検討しよう。その際はサイズ感が移動のしやすさに直結するので、試着してから購入することをおすすめする。
サウス2ウエスト8は、北海道を拠点に2003年にスタートしたアウトドアブランド。2015年からはテンカラに注目し、フィッシングウェアはもちろんオリジナルのウェーダーや竿など実用性とファッション性を兼ね備えたアイテムを次々と発表している。近年は、URBAN OUTDOOR OUTFITを提案するなど、都会で活躍するアウトドアウェアスタイルを推進している。