
端正な顔立ちで、爽やかな好青年を演じたかと思えば、サイコパスな難役もこなす高杉真宙さん。近年はバラエティ番組で飾らない素の一面も見せている。現在、30歳。俳優デビューは2009年と早く、実はキャリアも豊富だ。舞台『エブリ リトル シング'09』でデビューし、映画『半次郎』で映画初出演を果たしたのが、いまからおよそ16年前。本誌『GOODA』が創刊される1年前のこと。当時は中学生だった高杉さんにデビュー間もない頃の話を聞いた。
「15年前といえば、デビューして2、3年目くらいでしょうか。九州から上京して、学校に通いながら、仕事と必死に向き合っていました。ただ15歳だったこともあって、『これが自分の仕事だ』という感覚や自信をまだ持てなかったですね。この先も続けていくのだろうか? 続けるとしたら、芸能と両立できる高校に進学したほうがいいのかな? そんな人生の選択に悩んでいた記憶があります」
最近、偶然にも当時の関係者と再会したという。15年という流れた歳月に驚き、俳優を続けてきたことへの感慨にも浸ったと語る。
「こんなことあったよねって昔話をしながら、楽しい時間を過ごしました。やっぱりこの仕事を続けてきたからこそ、当時の関係者との再会を素直に喜べたと思うんです」
もちろんここまで来るまでに葛藤や悩みもあっただろう。しかし、さまざまな人との出会いで成長し、仕事との向き合い方も変化してきたという。
「人生のターニングポイントは思えば、たくさんありました。また、仕事に対するモチベーションも時代によって少しずつ変化していきました。演じる自分がまずは楽しまなくちゃ、と感じていたときもありますし、一緒に仕事をする人たちとの関係性を重視していた時期もあります。共演者はもちろんスタッフの方や監督さんとの出会いで成長できた、そんな15年だったと思います」

続いて今号のテーマである「ギフト」について、話が及んだ。
「ギフトと聞いてまず思い起こすのは、祖父からもらった、お下がりの革ジャンです。経年変化で、水色と灰色が混ざったような色合いになっているのですが、味があって、すごく気に入っています。また自分へのご褒美という意味では、最近モンベルのマウンテンジャケットを買いました。それを着て、山登りをしたいと思っているんですよ」
マウンテンジャケットは、高杉さんにとって、思い出深いファッションアイテムなのだ。
「小学生の頃から愛用していて、秋から春にかけては、冗談ではなく、本当に毎日着ていました。年に一着新調してもらうのですが、最初はオレンジ、翌年は赤、そして次の年は青だったかな。マウンテンウェア特有の、あの派手さが新鮮で、可愛いなと思ったんです。その後、一時期遠ざかるのですが、高校生の時にマウンテンジャケットを手に入れて、また毎日着ていました。雨風をしのげる機能性があって、これを羽織ればインナーに気を配る必要がない。そんな一着でコーデがまとまるところも含めて、すごく好きなんですよ」
また、腕時計やアクセサリーも自分へのご褒美アイテムだと語る。
「腕時計は日常的に身につけています。今日の撮影で着けたIWCのクラシカルなデザインのものも可愛いですよね。普段着はシャツが多くて、シンプルなアイテムが好きなので、相性が良さそうです。アクセサリーや腕時計は30歳を迎えて、ちょっとずつ買い増しています。10代や20代の頃は、どちらもコーディネートに余計なものを足しているような感覚があったのですが、年齢を重ねたことで、大人っぽく格上げしてくれるアイテムになってきました」
さらに古着が好きで、とくにデニムが気になるという。
「デニムはウエストが細めで、下に向かってテーパードしているようなシルエットが好き。色落ち具合は、う〜ん、悩みますね。色褪せたデニムやダメージジーンズも好きなんですが、季節や自分のなかのトレンドで好みが変わるし、最終的には濃いデニムに落ち着きます。それが無難で(笑)。古着は出合いだし、どれも捨てられなくて、どんどん増えていきます。その色落ちになるまでの時間を想像したり、トレンドが変化して、いつかは着られるんじゃないかと思うと処分できなくて」

そんな高杉さんは、10月2日(金)より劇場公開される映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』に出演している。愛する人が余命宣告を受けるという過酷な運命に直面する男性を演じた。本作のモデルであるご夫婦は、テレビ番組「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」の「結婚式の旅」コーナーでも取り上げられていたため、ご存じの人もいるかもしれない。
高杉さんは本作の映像化にあたって、葛藤もあったと話す。
「最初によぎったのは、この作品は何を目指しているのか?ということです。映画を作る上で目標と言いますか。普段は作品を見て、どう感じるのか、どんなメッセージを受け取るかは観客の自由だと思っています。それは時間やお金を使って鑑賞したことへの対価ですから。ですが、今回のような実在のモデルがいらっしゃる場合、事情が異なります。目標を明確に設定しておかないと、僕たちが何に敬意を払うのか、演じる上でどこに重きを置くのか、そのポイントにズレが生じてしまう危険があります。そうすると、良い作品にはなりません」
もちろん作品の良し悪しを判断するのは、観客だ。また、どんなに真摯に作品と向き合ったとしても、批判が起こることはある。その声に応えるためにも、なぜ映像化するのか? 答えと覚悟をきちんと持っておく必要があるのだ。
「一番は和さんと将一さんのことをこの作品を通じて、多くの人に知っていただくことだと思っています。和さんと将一さんの愛が詰まった日記を文字ではなく、映像という形で残すことで、和さんという女性がいたこと、そして残された娘さんがいることを感じていただく。そして、お二人のご家族に還元することが、今回僕らにできることなのかなと思っています」
そう真摯に言葉を紡ぐ高杉さんの姿が印象的だった。
「世の中の多くのことは、自分の知らないところで起こっています。だから、『まさか、自分が……』と、思うことも起きるのが現実社会です。だからこそ、自分で気づくことが一番大事じゃないでしょうか? そのためには手が届く範囲で、たくさんの幸せを受け取ること。何かを羨むことは悪いことではないですが、自分で自分を幸せにしていく。多くの人がどうしても忘れがちなことですが、僕自身も自分を大切にしようと思います」
そして、最後に本作への想いを語ってくれた。
「人と出会うことで、考え方が変わることがあります。実際、僕自身も、この作品を通して、考えさせられたことが数多くありました。だから、本作を見てくださる人がどう感じるのか、すごく大切にしたいと思っています。みなさんはこの作品を見て、どう感じるのか? たくさんの感想をお聞きしたいですね」