
ファッション
ないものはつくってしまおう。“ラッキーおじさん” tempra cycle 小林健太のモノづくりとギフト
2026.09.15
若者たちがピストバイクに夢中になっていた2008年にテンプラサイクルをオープンし、以来、東京のストリートバイシクルシーンを見続けてきた小林健太さん。オリジナルのアパレルやキャンプギア、雑貨なども手がけ数々のヒット作を生み出すなど、単なる自転車屋さんの枠に留まらないクリエイティブも多く人に支持されている。センスの良さに定評のある小林さんに、自転車のこと、モノづくりのこと、ギフトのことなどを聞いてみた。
創刊15周年を迎えたGOODAが掲げる今号のテーマは「ギフト」。彼をはじめとする独自の感性を持った5名のゲストに、モノ選びの軸や「15」にまつわるエピソードについて尋ね、そこから見えてくる、心を揺さぶる贈り物のヒントをお届けする。
Photo:Yuto Kuroyanagi/Text:Kazuyuki Nomura
あの頃のピストが、また新しい
——tempra cycleは長く東京のストリート・バイシクルシーンを見続けてきたと思いますが、今現在の自転車を取り巻くシーンをどう見ていますか?
2000年代後半のひとつのムーヴメントは凄かったですよね。サンフランシスコのMASHから火がついて、ストリートカルチャーが好きなイケてる若い子たちがこぞってピストバイクに乗っていて、すごく熱い時代でした。ブームが終わってしばらく経ち、状況は変わってきましたが、実は今一周まわって若い世代の子たちがあの時代のピストバイクに興味をもっていて、また乗り始めているようです。
当時を知らなくても、YouTubeで見たと言って「あの頃」のピストバイクの仕様で組みたいという相談が結構多いんですよ。昔のように皆で集まってわいわいやるとかではないと思うんですけど、自転車が大好きで、人と同じは嫌だっていうマニアックな人たちが乗っていますよ。うちも結構ニッチなオリジナルパーツをつくっていたので、それを知っている人が海外からも来たり。時代は巡るって言いますが、面白いですよね。
——「あの頃」のリバイバルでいうと、最近では90年代や2000年代のマウンテンバイクフレームを使ったオールドMTBも、若い子達が街で乗っているのをよく見かけます。
そうですよね。ファッションとも結びついて、感度の高いオシャレな人たちが乗っている印象です。古着も大人気ですし、そういった感覚で乗っている人も多いのかも。でも、最近は人気になり過ぎて1990〜2000年代のマウンテンバイクのフレームとかパーツの価格が高騰してしまい、以前のように気軽に組めるような感じではなくなってきました。
僕らも結構早くから目をつけていて、昔のマウンテンバイクフレームは沢山ストックを持っていたんですが、本格的なブームが来る前に引っ越しなどもあって結構売ってしまったんですよ。今では5倍くらいの値段になっているから、失敗しましたね(笑)。それでも40〜50代の自転車好きな大人は組んでいる人も多いので、変わらず人気だと思います。今にはないカッコ良さがありますしね。
「ないものはつくってしまおう」が日常を豊かに
——tempra cycleは自転車屋さんでありながら、アパレルや雑貨も人気ですよね。
いや、ほんとにありがたいことです。モノづくりはずっと続けてきたんですが、約3年前にアパレルや雑貨をもっとしっかりやりたくて〈tempra garage(テンプラガレージ)〉のブランド名に統一しました。基本的なスタンスは昔から全く変わってなくて、好きなものを好きなようにつくっています。
日常を少しだけ楽しくしてくれるアイテムだったり、東京土産じゃないですけど、スーベニア的に気軽に渡せるものが多いです。基本的には「ないものはつくってしまおう」というD.I.Y.精神がベースで、ニッチでマニアックだけど、生活を少し豊かにしてくれるようなアイテムをつくりたいなと常々思っています。
最近つくったものですごく人気なのが、この三角形のバッグ。自転車のサドル下に入れてパンクキットを入れておくのもおすすめだし、うちの子供はこれにAirTagつけてバッグにぶらさげています。ライトを入れて照明にしたり、アイディア次第で色々な使い方ができるんですよ。キャンプの時にカトラリーを入れて、テントなどにぶらさげて使っている人もいますよ。
アーティストのジェリー鵜飼さん、神山隆二さん、御ソンジュンさん、ナカムラルイさんのイラストをプリントしたマグネットも人気でいつの間にか種類がめちゃくちゃ増えましたね。僕はマグネットとかステッカーって一番身近なアートだと思っていて、誰でも気軽に楽しめる最たるものだと思うんです。だからちょっとしたプチギフトみたいな感じで友人などにあげても、すごく喜んでくれます。
あとは、有難いことに錚々たるアーティストの先輩方が相手してくださるので、わがまま言っていろいろ一緒にやらせて頂いたりも多くて。ラッキーおじさんですみません(笑)。
裏原世代には周知の〈FAMOUZ(フェイマス)〉ディレクターであり、アーティストの神山隆二氏とのコラボアイテム。神山氏を代表するキャラクター「ラットフェイス」がプリントされている。
イラストレーター、ジェリー鵜飼氏の大人気キャラクター「マルケス」をプリントしたタンブラーとキーホルダー。ちょっとしたお土産やギフトにも人気のアイテム。
長年親交を温めているデザイナー、アレキサンダー リーチャンにつくってもらっているというキャップ。数個のキャップをバラして改造し、ハンドメイドで再構築しているオンリーワンアイテム。
いくつになっても、男心をくすぐるのはこういうモノ
——小林さんもギフトをもらうことはありますか?
誕生日とか、久しぶりに会った時とか、引越ししたタイミングで友人や先輩から何か頂くことが結構あります。まわりもセンス良い人ばかりなので、「そうくるかぁ〜」みたいな絶妙なモノを贈ってくれることが多いんですよ。
これはスチャダラパーのANI氏が妄想した「妄想怪人シリーズ」のフィギアたち。友人から頂いたものですが、男ってこういうソフビとかフィギアとかって、いくつになっても好きだし、貰えるとなると尚更嬉しいですよね。普通に部屋に置いておくだけで少しアガるし、楽しくなると思います。
自転車好きの仲間から誕生日プレゼントでもらったのですが、凄く実用的で気に入っているのが、HANDSON GRIP(ハンズオングリップ)という香川に拠点を置くメーカーのサイクルグローブ。ごく使いやすくて便利なグローブなので、今では手離せなくなっています。自転車に乗る時はもちろんですが、バイクの乗る時や、ちょっとした山にハイキングに行く時なんかも丁度良くて、重宝しています。
これはスーパー・ササダンゴ・マシンというプロレスラーのプラモデルです。
新潟在住のプロレスラーなんですけど、実家が「坂井精機」という金型メーカーを営んでいて、彼が後を継いでこれをつくったそう。友人がプレゼントしてくれたんですけど、これもソフビと一緒で男心をくすぐられる系ですね。まだ組み立ててないですが、めっちゃしっかりしたつくりです(笑)。
——GOODAは今年で15周年を迎えます。tempra cycleのこの先15年の目標などあれば。
tempra cycleをやり始めて今年で18年ですが、基本的にはやっていることはほとんど変わらないんですよ。自転車のカスタムやって、モノづくりやって、皆でワイワイ楽しんでって感じなので。時代は色々変化していますが、とにかく日々楽しくやれたらそれで充分。僕たちにできることを、コツコツやり続けていけたらなと思います。





