10倍、20倍、それでも手放さない。BERBER JIN 蒔田康介、一生モノの古着とギフト
pc_share

    ファッション

    10倍、20倍、それでも手放さない。BERBER JIN 蒔田康介、一生モノの古着とギフト

    2026.09.15

    多くの古着店が軒を連ねる原宿で、1998年のオープン以来、ヴィンテージシーンを牽引し続けてきた名店〈BERBER JIN(ベルベルジン)〉。蒔田康介さんは24歳という若さで「ベルベルジン 遊歩道店」を任され、一年の約半分をアメリカへ買い付けに行く生活を10年近く続けている。今、世界的な盛り上がりを見せる古着シーンの最前線に立つ彼に、大切にしている古着のこと、影響を受けたカルチャーのこと、そして「一生使える」ギフト論について話を聞いた。

    創刊15周年を迎えたGOODAが掲げる今号のテーマは「ギフト」。彼をはじめとする独自の感性を持った5名のゲストに、モノ選びの軸や「15」にまつわるエピソードについて尋ね、そこから見えてくる、心を揺さぶる贈り物のヒントをお届けする。

    Photo:Yuto Kuroyanagi/Text:Kazuyuki Nomura

    24歳の若さで「ベルベルジン 遊歩道店」のディレクターに

    ——蒔田さんは昔から古着が好きだったんですか?

    中学生の頃から所ジョージさんの世田谷ベースの世界観が大好きで、影響を受けていました。ヴィンテージの車とかバイクに興味を持ち始めたのもその頃。70~80年代頃の名作映画も全部見たし、ガンズ&ローゼスとか、レッドツェッペリン、ACDCといった昔のハードロックが大好きで、その流れで古着も好きになっていきました。服だけでなく、アメリカンカルチャー全部が好きでしたね。

    ——どういった経緯でベルベルジンに?

    〈BERBER JIN(ベルベルジン)〉蒔田康介さん

    高校生の時に地元の千葉で古着も扱うリサイクルショップみたいなところでアルバイトしていたんですが、段々と本気でこの世界で活躍してみたいなって思うようになってきて。それで、18歳くらいの頃にいくつか良いご縁があったなかで、どうせなら日本で一番有名な古着屋さんで働きたいなと思ってベルベルジンに入社しました。「ベルベルジン 遊歩道」を任せてもらったのは24歳の時ですね。

    ——ベルベルジンは老舗の有名店。最初は大変だったんじゃないですか?

    いや、もうほんと最初はワケわかんなかったですよ。当時まだ10代で、古着が好きといっても買い付けなんてやったことないし。初めてアメリカの買い付けに連れていってもらった時、ミスピックもするし、バイヤリングも全然できなくてダメ出しの嵐で。悔し過ぎて、10時間以上かけて一人で地方にロードに出たりもしていました。とにかくその頃は認めてもらうのに必死でした。でも、何も知らない若者に経験を積ませてくれて、いろいろな景色を見せてもらえた環境はほんとに幸運でした。今思い返しても、ほんとにしっかり指導してくれたんだなと。その頃の経験が今の糧になっていると思います。

    ——1年の半分はアメリカで買い付けをしているとのことですが、向こうではどんな風に過ごしているのでしょう。

    ロサンゼルスをベースに、サンフランスコとかサンディエゴくらいまで行って買い付けというのが基本。ローカルのスワップミートやフリーマケットをメインに行きつつ、コレクターの方にアポイントを取って買うこともあります。ベルベルジンの全店舗の商品を買うので、結構な量ですよ。体力勝負みたなところもありますが、僕は自分が好きなものが全部アメリカにあるので、全然苦じゃないです。

    カリフォルニアのリアルを原宿から発信していきたい

    ——蒔田さんがディレクションしている「ベルベルジン 遊歩道」の商品構成で、意識していることはありますか?

    僕がサーフ、バイク、スケートボードやロックなどカルチャー色が強いものが好きなので、そのあたりのアイテムは結構意識して置いています。アートやアニメなどグラフィックの効いたTシャツやバンドT、ムービーやロック系のアイテムは特に好きですね。1年の半分近くをアメリカで過ごすなかで、実際に目で見て肌で感じたカリフォルニアのリアルなストリート感や空気感を発信していきたい。僕らだからこそできることを、お店として表現できたらと思っています。

    〈BERBER JIN(ベルベルジン)〉蒔田康介さん

    ——世界的な古着ブームですが、リアルな買い付けの現場でも感じますか?

    すごいですね。ほんと今がピークじゃないかと思うくらい。アメリカでも古着がめちゃくちゃ流行っていて、ローズ・ボールのフリマに行っても10代くらいの子たちが沢山いて、トレージャーハントのようなことをやっています。でも、全米でそういうキッズたちがいるから、今まで埋もれていたようなものも出てくるようになってきました。これだけのブームだと、弾数が少なくなっているんじゃないかと思われますが、30年近くアメリカで買付しているうちの社長も言っていますが、マーケットが大きくなった分、弾数自体は増えてきていると。

    〈BERBER JIN(ベルベルジン)〉蒔田康介さん

    ——若い世代は今どういった古着を求めているんですかね。

    90年代の渋カジブームの時とかは、それこそヴィンテージのデニムにスウェットといった王道の感じだったと思うんですけど、今はまた違う派生の仕方をしています。ニルヴァーナとかレッチリなどのバンドTも大人気で価格の高騰すごいですし。ギャルソンとかアンダーカバーとか、デザイナーブランドのアーカイブも今結構注目されていたり。トゥルー・ヴィンテージだけじゃなく、人それぞれの着こなしや楽しみ方をしていて、そこが結構面白いですね。

    ——蒔田さん自身は、やっぱりヴィンテージが好きですか?

    そうですね。僕はカルチャーでいうと、1960年代後半くらいから1970年代前半くらいが特に好きですね。特にクルマとかバイクは60年代のものが一番カッコいいなと思うし、家具も60年代のものが大好きで揃えています。あと、ヒッピーのフラワームーブメントが始まり、カウンターカルチャーが形成されていった時代の古着も大好物。サイケデリックなカラーリングとかも今にはないもの。買い付けでサンフランシスコに必ず行くんですけど、ヘイトストリートの方に行くと今でも70年代っぽい雰囲気が残っていたりして、やっぱりいいものは残っていくんだなと思います。

    蒔田さんが大切にしてきた古着たち

    ——GOODAは今年で15周年を迎えますが、蒔田さんが15年以上大切にしている、思い入れのある古着を教えてください。

    これは50年代の、ペンドルトンのウールシャツです。20歳くらいの頃、先輩から1万2000円ほどで買わせてもらったもので、当時の相場としては結構高めですが、とても気に入っている1着です。僕がもっている数あるペンドルトンのなかでも1、2を争うコンディションの良さで、このシャドーチェック柄も最高。今マーケットに出すと、多分買った時の10倍くらいにはなると思います。数ある古着のなかでもペンドルトンが大好きで、2年前には遊歩道店とコラボさせてもらったり、ペンドルトンのCEOがファミリーでお店に遊びに来てくれたり。ブランドへの思い入れも含め、絶対に手離せない1着です。

    〈BERBER JIN(ベルベルジン)〉蒔田康介さん

    これも21歳くらいの頃に買ったもので、60年代、ダービーオブサンフランシスコのキャップショルダージャケットです。1980年代、西海岸のロックやハードコアパンク、ヒップホップやスケーターシーンなどと結びつき、ストリートカルチャーの象徴のような1着で、僕が特に愛している古着。60年代創業の小さな会社だったんで弾数も少ないんですけど、特にブラックは葬式などフォーマルな場で着られるものだったのであまり人気がなく、とても稀少。当時39,800円で買ったんですけど、今は多分10倍じゃきかなくて、20倍近くになっていると思います。ずっと大切に着続けてきたので、この先も絶対に手離さずに大切にしていきます。

    一緒に年を重ねていける「一生モノ」のギフトたち

    ——思い出に残っているギフトを教えてください。

    このバングルは、今年の誕生日プレゼントで社長から頂いたもの。僕が1997年生まれなので、1997年製のバングルを贈ってくれました。僕が好きな服装にも合うし、ビーズとかネイティブ系のアクセとの相性が良いので、よく着けています。一生モノですね。

    これは昨年の誕生日に、昔から仲の良い友達が誕生日にくれたカルティエの指輪。僕、指が太いので、重ね付けするのが似合うと思うよって提案込みでもらって、自分でもう一つ買って重ね付けする予定。トリニティって3つの輪が絆を表しているらしく、メッセージ込みで嬉しかったですね。

    ——ジュエリーのギフトって嬉しいですよね。

    仲の良い人や、お世話になっている人たちは僕があまりジュエリーをつけないのを知っているのでプレゼントしてくれることが多くて。確かに自分でジュエリーってあんまり買わないので、もらうと嬉しいですね。特別感もあるので、もらったら間違いなく大切に使い続けます。

    これは「サブカルチャー」というブランドをやっている先輩から頂いたもの。アメカジがベースで、凄くカッコよくて大好きなブランド。ベルトはサドルレザーですごく重厚で、バックルもシルバー950が使われていたりで、使い込むほどに味が出てきます。「一緒に成長していけよ」みたいなテンションで贈ってくれたのも嬉しかったですね。

    あと、僕外出する時絶対サングラスをかけるので、サングラスを頂いたこともあります。上はジャックマリマージュというロサンゼルスのアイウェアブランドのもの。バイクカルチャーに関連するモデルを沢山出していて、古いバイクが好きな僕に合うんじゃないってことで友達が贈ってくれました。下は3年くらい前、誕生日に友達が贈ってくれたアメリカン オプティカルの50年代デッドストック品。マルコムXが着けていたのと同じモデルで、歴史に残る名作だと思います。こんなのもらったらずっと使いますよね(笑)。レンズの色もすごく良くて、めちゃくちゃお気に入りです。これも間違いなく一生モノですね。

    ——蒔田さんが贈る時は、どんなものを選んでいますか?

    レッドウィングのブーツを贈ることが多いです。僕、基本365日ブーツを履いているんですけど、17歳の時初めてアルバイトして貯めたお金で買ったのが、レッドウィングの875だったんです。それ以来ずっと大好きで、勝手にアンバサダーと名乗ってるくらい(笑)。まだ履いたことない人にもぜひ履いてもらいたくて。ソールを変えればずっと履ける一生モノなので。

    ——最後に、今後の展望を教えてください。

    今年で「ベルベルジン 遊歩道」は5年目になりましたが、お陰様で年を追うごとに多くのお客様が来てくれるようになりました。この仕事始めた時、日本一の古着屋バイヤーになりたいという目標があったので、そこは継続してやり続けていきたいですね。あとは、今自分たちでもブランドを立ち上げようと準備しているので、そっちも頑張っていきたい。ただのレプリカブランドにならないよう、自分のフィルターを通してモノづくりもして、両立していきたいと思います。

    〈BERBER JIN(ベルベルジン)〉蒔田康介さん

    sp_share
      バックナンバー