カッコつけないカッコ良さ。NEAT 西野大士さんを形造るファッション観と、気配り光るギフト選びと
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    ファッション

    「アメリカのおじさん」に学ぶ力みのなさ。NEAT 西野大士の普段着と、押しつけないギフト

    2026.09.15

    元々は淡路島で小学校の教師をしていた西野さんが、2015年にパンツ専業ブランド〈NEAT(ニート)〉を立ち上げたのは2015年のこと。トレンドが目まぐるしく変わるファッション業界にあって、服好きの男性を中心に支持を集め続けてきた。大の服好きとしても知られる彼に、自分に合う服の探し方や、好きなモノ、西野氏らしい「さり気ないセンス」が光るギフト選びまでお話しを聞いてきた。

    創刊15周年を迎えたGOODAが掲げる今号のテーマは「ギフト」。彼をはじめとする独自の感性を持った5名のゲストに、モノ選びの軸や「15」にまつわるエピソードについて尋ねた。そこから見えてくる、心を揺さぶる贈り物のヒントをお届けする。

    Photo:Tatsuya Irie/Text:Kazuyuki Nomura

    小学校の先生からアパレルの世界へ

    ——西野さんは元々淡路島で教員をされていたんですよね。

    そうですね。中学生くらいの頃から服が大好きで、高校卒業したら服飾の専門学校に行きたいなと思っていたんです。でも両親とも教師だったこともあり、大学進学を進められて。元々子供も好きだし、先生の道も悪くないかと思って教育学部に進学し、教師になりました。

    ——そこからなぜアパレルの世界に?

    NEAT西野大士さん

    先生の仕事も大好きだったんですけど、やっぱり心のどこかにアパレルの仕事をしたいという想いが燻っていたんです。学校の先生って当時はジャージ姿が基本なので、好きな格好ができない。その反動もあったのか、給料が入るとほとんどを服に注ぎ込んで、土、日に自分が好きな格好をするみたいなことをやっていました。子供たちにも自信をもって「夢を追え」と言うことができない。自分が追ってないわけですから。やっぱりそこのジレンマがあってどうしようもない感情になり、夜間の先生をやりながら服飾学校に通い、2年で辞めてブルックスブラザーズに入社しました。

    ——そこからアパレル業界でのキャリアが始まるわけですね。

    最初は大阪の店舗に勤務し、26歳の頃東京にあった本社のPRのポジションに抜擢してもらったのも大きかったですね。そこで多くのファッション業界の方と繋がり、本当にいろいろなことを勉強させてもらいました。結局ほぼ一人でPR全般をやらせてもらったんですけど、ちょうど日本と本国の資本バランスが変わり、会社としての変革期を迎えていたこともあり、そのタイミングで辞めて独立しました。

    ——パンツ専業ブランドの「NEAT」を立ち上げたのはなぜですか?

    NEAT西野大士さん

    学生時代から、パンツがものすごく好きだったんです。欧米の人たちがなぜかカッコよく見えるのって、僕はパンツの差だと思っていて。欧米の人たちは基本的に骨格がしっかりしていて、腰から足首にかけてすごく綺麗にテーパードしているみたいな足をしている人が多い。平均的な日本人は欧米の人と比べると足が短く、太ももやお尻、ふくらはぎが太い人も多い。だから、そこを解消できて、履くだけでカッコいい僕の理想的なパンツをつくりたいなっていうのが最初ですね。なによりもまず、自分が穿きたいと思うパンツをつくりたいなと。元々リーバイスのスタープレストとかを自分好みにカスタムして穿いていたので、最初はその延長線のような感じで始めました。

    ——最初から本格的につくり始めたんですか?

    いえいえ、全然そんなことないです。最初は2型だけ。仕事としてやるほどではなくて、自分が履きたいパンツを自分用につくったくらいの感覚です。そしたら、周りの何人かが「それ俺も欲しいからつくってよ」みたいな感じで個人オーダーが少しずつ入るようになって。最初は展示会をどうやってやるかも分からないし、量産できる工場すら知らなかった状態(笑)。そんな状態から展示会やると、ありがたいことに取引先が2件から5件になり、10件になりとどんどん増えていったという感じですよ。

    ——ちょうど2020年前後、NEATのパンツ大人気で服好きの人たちがこぞって穿く穿いていましたよね。

    有難いことに、ちょうどその時、業界の人たちが穿いてくれているのを見たファション系インフルエンサーの人たちがSNSで紹介してくれたみたいで。瞬く間に広まっていくのを目の当たりにして、ちょっと驚きましたね。ただ、このままずっと売れ続けるワケがないと危機感も同時に持っていました。だから体力のあるうちに自分たちで売る術を身につけておこうと直営店を増やし、直営型にシフトしていったんです。今になって、やはりその判断をしてよかったなと思います。

    どんな骨格の人でも似合う「良いパンツ」を追い求めて

    ——西野さんが思う「良いパンツ」ってどんなものですか?

    「誰が穿いても綺麗に見えるシルエット」というのは、やはりかなり研究し、追求しました。例えばインポートブランドのパンツだと、ターゲットとしている人の身長が、平均的な日本人の身長より高いんですよ。だから日本人が裾をカットして穿くと、元々のシルエットが崩れてしまう。「日本人の体格、骨格に合う」というのはかなり考えて設計しています。あと、NEATはショーツもつくっていますが、「足の出方」が綺麗に見える裾幅もすごくこだわっているところ。どんな骨格の人でも綺麗に穿けるっていうのは、良いパンツの条件なのかなと思います。

    「カッコつけない」美学

    ——西野さんの着こなしを参考にしている人も多くいますが、どんなスタイルが好きですか?

    「どう見られるか」ってことはほとんど気にしてないですね。元々「アメリカのおじさん」みたいなラフで、さり気ない格好が僕は大好きで、自分のファッションのベースになっています。イメージとしては、LA郊外の売店とかで買い物をしている近所のおじさん。ダボダボのTシャツに、ハーフパンツを穿いて、白ソックスにどこのメーカーかよく分からないスニーカーを履き、浅めにキャップを被ってみたいな。僕はそこにブルックスブラザーズとか、トラッドを組み合わせていくことが多いかな。

    この日はラコステのポロシャツにニートのシアサッカー生地のショーツを合わせ、腰元に古着のシャツを合わせたスタイル。キャップはパタゴニア、サンダルはルナサンダル。腕時計はヴァシュロン、ブレスレットはカルティエ。さり気なくも品のある、西野さんらしい着こなし。

    僕が服を好きになった中学生当時、女の子にモテたいからっていう理由もひとつあったんですよ。だから結構人の目を気にしながら、カッコつけていました。でも、今は全然万人にウケるような感じではなくて、むしろ“モテ”からは程遠い(笑)。つまり、ファッションの矢印が昔は外側だったのが、いつの間にか内側に向いたんですよね。ただ、自分が好きなものを純粋に着ているだけ。でも、それが僕は自然だし、いいんじゃないかなと思います。

    ——自分に似合う服って難しいですが、どんなものだと思いますか?

    ウチのスタッフにもよく言うんですが、ファッションって袖を通した回数だと思うんですよ。ファッションディレクターの鴨志田さんがあれだけスーツ似合うのって、やっぱりそれだけジャケットに袖を通してきたからだと思うんです。全く同じスーツを僕が着ても、あれほどカッコよくはならない。日々、何度も何度もさまざまな服に袖を通すなかで、自分の肌に合う色や、一番よく見えるサイズ感とか、ほんとにちょっとしたことだけど分かっていく。だから、さっきの話じゃないけど、ファッションの矢印は外側じゃなく、内側に向けて自分で探していくしかないと思います。

    「さり気なく、でも貰ったら嬉しい」。絶妙な塩梅をつく西野さんのギフト論

    ——西野さんは誰かにギフトを渡す時は、どんなものを渡すことが多いですか?

    あまりギフトを渡すことがないので難しいのですが、「自分ではなかなか買わないけど、もらったら嬉しいもの」がやっぱりいいなと思うんです。

    これはカランダッシュのボールペン。取引先が昨年10周年だったんですけど、メンバーにそれぞれの名前を入れてもらって贈りました。こういうちょっといい万年筆とかボールペンって、自分ではなかなか買いませんが、もらうと嬉しいものだと思います。

    あと、もらった人に気を遣わせず、かつ嬉しいなと思うのが「お土産ギフト」。その土地の名産品とかは定番で嬉しいと思うのですが、海外行った時に買っておいてよく渡すのが、スーパーで売っているキャリーバッグとかエコバッグ。これだと貰ったほうも気を遣わなくて良いので渡しやすい。もし要らなくなっても捨てやすいですしね。海外行った時に買って、ストックしておくと何かあった時にパッと渡せるから便利です。

    これはNEATのキャップと靴下。キャップとか靴下も定番ですけど、こういう小物類なら着なくなったり、使わなくなっても貰った人が処分しやすいから、気を遣わせなく良いかなと。

    あと、最近僕がもらってとても嬉しかったのが、このAIボイスレコーダーのプラウドノート。デジタル系疎いので、こういうものがあると知らなかったんですが、録音しておくだけで勝手に文字起こしして議事録までつくってくれるという代物。たまに打合せとかミーティングを忘れてしまうことがあるので、「これでしっかりと管理してくださいね」っていうことで誕生日に仕事で関わりのある方から頂きましたが、その気遣いも含めてとても嬉しかったですね。まさに、「自分ではなかなか買わないけど、貰うと凄く嬉しいもの」で、センス良いなぁと思いました。

    ——GOODAは今号で15周年を迎えるんですが、西野さんが15年以上ずっと使い続けていて、手離せないモノはありますか?

    このクオバディスの手帳は、僕がブルックスブラザーズのプレスとして東京に来た2010年から使い始め、毎年リフィルだけ入れ替えて16年使い続けています。エグゼグティブノートというタイプのもので、マンスリーページとウィークリーページがあって、メモ書きスペースもあるのでとても使いやすい。というか、これに慣れ過ぎて、多分これ以外の手帳はもう使えない(笑)。その週が終わったら、ミシン目が入ったページの端をちぎるという作業を、もう16年続けていると思うと、ちょっと感慨深いですね。もう結構ぼろぼろなんですが、愛着があるので捨てることができなくて。多分ずっと使い続けると思います。

    最近はアプリでスケジュール管理している人が多いと思いますが、僕はやっぱりアナログ派。毎年11月頃になると、ちょっとフライング気味に来年のリフィルを買うのがルーティーンになっていて、1年終わったなぁと実感しますね。見返してみると、毎年1月は結構丁寧な字で書き込んであったり、忙しい時は殴り書きしてたり。そういうのを見返しているとその時の気持ちとかも思いだして、面白いんですよね。

    ——最後に、西野さんの今後の展望など教えてください。

    今年、地元の淡路島にもショップ〈N&N STORE〉をオープンしたので、少しでも活性に貢献して地元を盛り上げていきたいです。あとはアメリカ圏にもショップをオープンしたいなとか、いろいろやりたいことがあるので実現できたらいいなと。また教師に戻るという選択肢ですか!? うーん、あんまり考えたことはなかったですが、そういう世界線があっても面白いかもしれませんね。今なら子供達にいろいろなことを伝えてあげられると思うし。可能性は無限だと思うので、自分が心から面白いなと思えること、好きなことを本気でやっていきたいなと思います。

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