お気に入りのニッポンの家具を手に入れ、食事するのが楽しくなるような焼き物も購入した。それでも十分に生活に彩りが加わったが、まだまだ改善の余地がある。たとえば匂いを変えてみてはどうだろう。香りは、人間の五感のなかでも記憶や情緒との結びつきが強く、空間を演出するための大切な要素になる。ニッポンらしい香りを自室にまとわせることで、癒しの空間にすることができる。エッセンシャルオイルにお香など、ニッポンのインテリアフレグランスを紹介しよう。
Photos : TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling : YONOSUKE KIKUCHI
Model : KENSEI MIKAMI
Text : SHINSUKE UMENAKA
撮影協力:野外博物館 合掌造り民家園
飛騨高山の山の恵みをベースに家具を製造しているHIDA。彼らが家具には使用できない木材や、山を守るために枝打ちされた枝葉まで、余すことなく、消費者に届けたいという思いから設立したのが、「きつつき森の研究所」と名付けられた研究施設だ。ここではHIDAが高度な加工技術の「曲木」を応用して、樹木の成分抽出の研究を行っている。圧縮は木材を蒸すことで軟化させたあと、徐々に圧力をかけて、圧縮していく。この圧縮する工程を応用して開発した技術が「高圧水蒸気蒸留法」だ。これを使ってエッセンシャルオイルや芳香蒸留水を蒸留しているという。使用する木材や季節、圧力の掛け方によって、香りが異なる。ヒノキやスギなど、日本に古来から生育している天然の樹木の香りは、まさにニッポンの香りなのだ。
高圧水蒸気蒸留法で抽出したエッセンシャルオイルには、通常の製法では得ることができない貴重な成分も含まれているという。また、ガスクロマトグラフィーという分析機器を使って、抽出したエッセンシャルオイルの成分分析も行っている。こうして製造されたエッセンシャルオイルは、飛騨の樹木をメインに国産の樹木から抽出した100%天然・無添加のもの。清涼感のある香りが、暮らしに彩りを与えてくれるはず。また、エッセンシャルオイルや芳香蒸留水をブレンドすることで、気軽にアロマを暮らしに取り入れることができるアロマスプレーも販売している。そのほか、木製のキャップにさまざまな形・木目の表情を生かした国産の木の枝を使用したインテリアフレグランスもおすすめだ。
風情ある古い街並みが残る、高山市上三之町。賑わう通りを奥へと進むと、上品な和の香りに鼻がくすぐられる。白檀(びゃくだん)など伝統的な和の香りから、現代的なフローラルフルーティーな香りまで約150種類のオリジナルの香りが楽しめる香舗能登屋だ。お香や匂い袋のほか、練香や仏教の修行で穢れを除くために使われる塗香など、さまざまな種類のお香を取り揃えている。匂いによって、手軽に部屋の印象を変えることができるお香は、最高の癒しアイテムだ。
ニッポンの香りなら、僕らのDNAに刻み込まれた遠い記憶まで呼び起こされる気がする。
そんなニッポンの香りに合わせるファッションは、やはりドメスティックブランドや
日本人デザイナーによるモノがふさわしいだろう。