奈良美智《あおもり犬》
奈良美智《あおもり犬》

五感を刺激するアート旅に行こう

ハンス・オプ・デ・ベーク《ロケーション(5)》2008年
ハンス・オプ・デ・ベーク《ロケーション(5)》2008年
いま僕らに足りないのはインプットだ

せっかくの休日を家で過ごすのは、もったいない。こんな気分になるのは、いつぶりだろう。陽気に誘われて、外出すると、人出の多さに驚かされた。みんな考えることは同じなのだ。いまの僕らに必要なのは休息ではなく、新しい刺激や出会い。圧倒的に足りなかったインプットに時間を割くことで心機一転、リスタートできるのだ。そこで提案したいのが、“アート旅”。都会の喧騒を離れ、地方の美術館やギャラリーを巡る贅沢なひととき。じっくりと時間をかけて、アーティストの作品に触れていると心が充電されていくのを感じるはずだ。さあ、五感を刺激する“アート旅”に行こう!

Photos : モデル撮影/TATSUYA YAMANAKA(stanford)、人物/KAZUSHIGE MORI
Styling : YONOSUKE KIKUCH
Model : KENSEI MIKAMI
Text : SHINSUKE UMENAKA

2023.5.15

ソ・ドホ《コーズ・アンド・エフェクト》2008年
ソ・ドホ《コーズ・アンド・エフェクト》2008年
ソ・ドホ《コーズ・アンド・エフェクト》2008年
ソ・ドホ《コーズ・アンド・エフェクト》2008年
ジム・ランビー《ゾボップ》2008年
ジム・ランビー《ゾボップ》2008年
若江漢字《森にある壁》2004年
若江漢字《森にある壁》2004年
五感を刺激するアート旅に行こう 01

いまアート旅がおすすめな理由

なぜ、いまアート旅なのか?
東京や大阪など、都市部にも美術館やギャラリーはある。
むしろ、その数は地方より多いと言えるだろう。
また、カルチャーから刺激を得たいなら、
家で配信ドラマや映画を見たほうが手軽でコスパも良いはずだ。
ただし、スマホでのインプットには限界がある。
色彩や造形、細かなタッチなど、肉眼で見て、感じる体験には敵わない。
さらに、近年は、独自の魅力を持つ美術館が
地方に続々とオープンしているという。
旅をしながら、アートに触れる
そんな“アート旅”の魅力をアートテラーのとに〜さんに聞いた。
アートテラー・とに〜
アートテラー・とに〜
1983年3月生まれ。千葉県出身。元お笑い芸人。芸人活動の傍ら、趣味で書いていたアートブログが人気となり、美術の世界をわかりやすく&楽しく紹介する「アートテラー」に転向した。現在は、美術館での講演やアートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など幅広く活動している。著書に『名画たちのホンネ』(三笠書房)、『東京のレトロ美術館』(エクスナレッジ)などがある。TBSラジオ「こねくと」に月1レギュラー出演中。

有名アーティストの出身地を発見したり未知の作家に出会える

成田亨《ウルトラマン》1966年
成田亨《ウルトラマン》1966年

「区立美術館のような地域に密着した美術館では、東京出身の作家を推していることもありますが、通常の美術館が東京の出身だからという理由だけで、その作家の展覧会を開催することはありません。一方で、奈良美智さんや成田亨さんの作品を展示する青森県立美術館のように、地方の美術館では、全国的に知られているアーティストを地元出身の作家として推しているところがたくさんあります。あの有名作家はここが地元だったんだと知るきっかけになります。作品は見たことがあるけれど、どこの出身なのか、知らないという作家はたくさんいるのではないでしょうか? また、まだ全国的には知名度が低いような“ローカル”で活躍する次世代のアーティストと出会える可能性があるのも、地方の美術館を巡る面白さです」

敷地の広さを生かしたダイナミックな作品群

ロン・ミュエク 《スタンディング・ウーマン》2008年
ロン・ミュエク 《スタンディング・ウーマン》2008年
エルヴィン・ヴルム 《ファット・ハウス》2010年
エルヴィン・ヴルム 《ファット・ハウス》2010年

「土地やスペースに限りのある東京の美術館とは違い、規模の大きい作品を展示しているのも地方の美術館の特徴です。青森県十和田市にある、十和田市現代美術館なんかは、さらに街中にも作品を展示しています。初めて見た時衝撃を受けたのを覚えています。若者の街というわけでもなかったところを、市をあげてアートの街に作り替えた。しかも、街中にブロンズ像を配置する程度だったら、ありがちな発想ですが、現代アートを点在させた戦略は見事。いまやアート好きなら一度は行きたい場所になっています」

ついでに立ち寄った先で思わぬ掘り出し物と出合うことも

「よっぽどのアート好きじゃなければ、美術館のハシゴはしないですよね? でも、旅で訪れているなら、せっかくここまで来たんだからと、周囲のアートスポットや観光名所を周りたくなります。そこで思わぬ掘り出し物に出合うこともあるのが、アート旅の醍醐味です。僕も以前、青森県立美術館に行った際、すぐ隣にある、三内丸山遺跡に立ち寄りました。出土した『縄文ポシェット』と呼ばれる樹皮で編んだ縄文時代の袋が展示されていて、感動したのを覚えています」

日本独自に進化した芸術祭は地域に根ざした「アートの祭典」

トーマス・エラー「人 自然に再び入る」(大地の芸術祭作品)photo Nakamura Osamu
トーマス・エラー「人 自然に再び入る」
(大地の芸術祭作品)photo Nakamura Osamu
クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン「最後の教室」 (大地の芸術祭作品)photo  T.Kuratani
クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン
「最後の教室」 (大地の芸術祭作品)photo  T.Kuratani

「国際芸術祭といえば、ドイツのドクメンタなどが有名ですが、一説には日本でもこれまでに1000近い芸術祭が開催されていると言われています。特に2000年に始まった『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』が有名で、独自の進化を遂げています。畑や村など自然のなかにアート作品が展示され、廃校になった場所もアート会場に。また、地元の方々がボランティアとして参加して、作品の解説をしてくれます。ボランティアの方々は作品を展示するために滞在していた作家と交流し、そのときのエピソードも話してくれました。僕も美術作品の解説をすることはあるのですが、体験談も交えた気さくな解説には勝てません。そんなボランティアの方々と出会えるのも、アート旅の魅力です」

|DATA| 「2023年の越後妻有」作品公開スケジュール 4月29日〜11月5日
年公開している野外作品や施設作品に加え、春から秋にかけて200点近い恒久作品が鑑賞できる
(問)「大地の芸術祭の里」総合案内所
新潟県十日町市本町6越後妻有里山現代美術館MonET内
TEL:025-761-7767
https://www.echigo-tsumari.jp/

作家のTシャツを着て作品の前でポートレイト

「僕はブログで『アートなTシャツコレクション』というアートを楽しむ遊びをやっています。名画をモチーフにしたTシャツを100枚集めたらゴールというルールを課しているのですが、アート作品の前でアーティストの作品がプリントされたTシャツを着て記念撮影をしています。最近は作品の写真撮影を許可している美術館も増えているので、アート旅でも“映え”を楽しむのも面白いですよ」

三沢厚彦《ANIMALS》
三沢厚彦《ANIMALS》
安藤忠雄《四季のアーケード》
安藤忠雄《四季のアーケード》
|撮影協力|
東京都美術館 台東区上野公園8-36 TEL:03-3823-6921
https://www.tobikan.jp
info:20世紀を代表するフランスの巨匠、アンリ・マティスの
大回顧展「マティス展」を開催中(8月20日まで)
7月22日からは、ちょっと怖くて懐かしい企画展
「うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展」が開催!
  • いまアート旅がおすすめな理由
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