バックカントリースキー&スノーボードの舞台は、
管理の行き届いたゲレンデとは異なる自然の冬山。
登山と同様に、万が一への備えが
遊びを満喫するための大前提となる。
そこでバックカントリースキー&スノーボードを知り尽くした
石井スポーツ 神田本館のスタッフに
ビギナーが持参すべきギアを厳選してもらった。
備えあれば憂いなし。
最先端のギアを携えて、厳冬の山へと、いざ参らん。
石井スポーツ 神田本館
スタッフ 下山 真さん
ハイクアップのとき、スキーヤーなら板のまま登ることもあるが、スノーボーダーの多くはスノーシューに履き替える。スノーボードはバックパックに装着して背負うのが一般的だ。そのため、スノーボードを固定できるキャリーが付いているバックカントリー用のバックパックが便利である。また荷物が多くなるため軽さと強度を併せ持つモデルがベスト。ほかにも雪山では動きが制限されがちなので、サイドポケットの有無や荷物の取り出しやすさなど、機能性にも着目して選びたい。
バックカントリーでの機能性を追求したスノースポーツ専用のテクニカルパック。35Lと長時間の日帰りバックカントリーを想定した容量でたっぷり荷物が収納できる。ビギナーは荷物が増えがちなため、これくらいがちょうどいい。また荷物をセパレートできる二気室構造で、濡らしたくないツールと、すぐに取り出したい替えの衣類といった具合に分けて収納もできる。なお素材には、軽量で耐久性に優れる330デニールストライプドビーナイロンを使用している。
CHUGACH 35 WH L 31,900円/ザ・ノース・フェイス
スキーキャリー、スノーボードキャリー、ヘルメットキャリー、トランシーバー/GPSキャリー、ゴーグルポケットなどなど、バックカントリースキー&スノーボードに必要な機能をフル装備した軽量パック。荷重を分散させることで背負ったときの重さを感じさせない構造を採用しているため、とくにフィット感に優れている。そのため、滑りを重視するユーザーから高い評価を集めているモデルだ。背面から荷物が出し入れできる点も便利。
ソールデン 32 ダストモスグリーン 26,400円/Osprey
雪崩に遭遇するリスクのあるバックカントリーでは、アバランチトランシーバー、プローブ、ショベルという捜索時に活用するツール3点を必ず携帯する。アバランチトランシーバーは電波を送受信する機器で、移動時には送信モードにしておく。もし雪崩が発生したら、受信モードに替えて、埋没者が発する電波を頼りに位置を特定するのだ。主流は複数をマーキングして捜索できるトリプルアンテナタイプのもの。
必要な機能だけを搭載し、操作法もシンプルなマムートのトリプルアンテナ式アバランチトランシーバー。手袋をはめたままでも操作しやすいインターフェイスが特徴。また、ディスプレイもバックライト装備で偏光メガネをかけたままでも見やすい。そのほか救助者が4分間移動しなかった場合、二次的な雪崩が発生したと想定して、自動的に捜索モードに切り替わる自動リバートも搭載している。
Barryvox 46,200円/MAMMUT
アバランチトランシーバーを使って埋没者の位置をある程度把握したら、このプローブを雪に突き刺して、正確な埋没ポイントを突き止める。ハイクアップ時は、折りたたんで携帯しているが、使うときはワイヤーなどを引っ張り、一気に組み立てるのだ。アルミ製やカーボン製があるが、後者のほうが軽く、携帯に便利。救助は一刻を争うため、組み立てやすさも重要だ。
ワイヤー式で最上部を引くと、素早く組み立てができるbcaのプローブ。ボタンでロックの固定や解除ができ、扱いやすいのも特徴だ。目盛りは摩耗による消失を防ぐため、レーザーで刻印されている。また、深度を測る定規は、遭難捜索用の5cm刻みと、積雪状態を把握するための1cm刻みが表示されている。
STEALTH 270 BLU 8,800円/bca
組み立てると全長が320cmになる、プロによる捜索活動用に設計されたプローブ。耐久性に優れたアルミニウム製で、使用時の安定性と剛性にも定評がある。手袋をしていても素早く組み立てが可能な新開発のSpeed Lockシステムは、捜索に不慣れなビギナーにも扱いやすい。
2620-00130 Probe 320 sl 2149 1size 13,200円/MAMMUT
ショベルはアバランチトランシーバー、プローブとともに雪崩による埋没者を救助するために、欠かせないアイテム。位置を特定したら、このショベルを使って掘り起こすのだ。救助は時間との戦いで、ショベルの性能も作業に大きく影響する。プラスチック製のものもあるが、強度を考えると断然アルミ製。またブレードが大きいほうがたくさんの雪を掻き出せるが、その分、重量が増してしまう。携帯性を重視し、軽さを選ぶか、作業効率を優先し、大きいブレードを選択するか、両者を天秤にかけながら自分にとってのベストを探そう。
Alugator Lightは、アルミ製で重量475g。マムート最軽量のモデルだ。小さなデイパックにも収まるコンパクトなサイズが重宝する。楕円形をしたテレスコピックシャフトは、シャフトの強度を高めるのに役立っている。全長は54cmと75cmの2段階に切り替えて使用することができるのも特徴だ。
Alugator Light 11,000円/MAMMUT
楕円形で凹凸のあるシャフト、薄型で踏みつけやすいブレード、そして多様に中抜きされたハンドルの種類により 、BCAショベルはこれまでになく強く、軽く、収納しやすくなっている。ブレードは突起の少ないデザインで、バックパックに入れても他の荷物を邪魔せず、多くのスペースが確保できる。ブレードとシャフトの接続に自動結合スプリングピンを採用し、スムーズな組み立てが可能。
DOZER 2H SHOVEL 10,450円/bca
ゲレンデでのヘルメット着用は充分に浸透していないが、圧雪された斜面はけっこう硬く、転倒時や衝突時の頭・脳へのダメージは計り知れない。岩がパウダースノーに隠れ、危険を察知しにくいバックカントリーなら尚更、着用しておきたい。MIPSと呼ばれる脳への衝撃を緩和するシステムを採用したモデルを選びたい。
強い衝撃を吸収するEPSライナー、耐衝撃性に優れるポリカーボネートシェル、耐久性の高いABSトップシェルを組み合わせたインモールド構造を採用したPOCのヘルメット。スライド式で開閉調整可能なベンチレーションで、蒸れにくい換気性と快適性を実現している。また、ヘルメット前面にもベンチレーション用ホールがあり、ゴーグルが曇りにくいよう設計されている。
Obex WF MIPS 24,200円/POC
視野、衝撃吸収性、対貫通性、保持性などを厳しく審査することで、スキーやスノーボード用ヘルメットの安全性を担保する規格が、CE規格 EN1077認証だ。これをクリアするSWANSのスノーヘルメット。ベンチレーション機能で装着時の快適性も獲得している。サイズアジャスターダイヤルで繊細なフィッティングも可能。
HSF-231 24,200円/SWANS
ゲレンデとは違い、バックカントリーで滑走する斜面は未整備。降り積もったパウダースノーで正確な地形が把握しづらい。そこで、低照度の環境下でも対象物をはっきり認識できるハイコントラスト技術を採用したゴーグルが人気。滑りやすいルートを選んで、滑走することができる。曇りにくさにも配慮したモデルを選びたい。
広い視野が確保できるワイドレンズのゴーグル。眼鏡をしている人でも使うことができる。また、ゴーグル内部を換気することによって、曇りにくくする「A-BLOW SYSTEM」を採用しており、快適なライディングをサポートしてくれる。レンズは、はがれないミラーに調光機能を組み合わせたMIT調光レンズ。
RIDGELINE-MDH-CMIT/MTR 35,200円/SWANS
OAKLEYのLINE MINERゴーグルは円柱形状のデザインで広い視野を確保。できる限りゴーグルを顔に近づけることで、下方や両サイドの周辺視野を広げている。また、こちらも眼鏡を着用したままゴーグルの着用が可能。またレンズは視界のコントラストを最大限に高めるPRIZM LENS TECHNOLOGYを採用し、斜面の凹凸やギャップ、滑ったラインなどが鮮明に視認できる。
LINE MINER L/CHLOE KIM 23,650円/OAKLEY
スキーやスノーボードで滑走するだけなら、いわゆるミトングローブで問題ない。ただバックカントリーではバックパックから荷物を取り出したり、アバランチトランシーバーを操作したりと、何かと手を動かす。そのためグローブは指が自由に動かせるタイプが向いている。防寒性、撥水性は当然として、高いフィッティング性能を求めて選びたい。
着脱可能で洗濯もできる厚手のインナーグローブと、POLARTEC NeoDhellアウターグローブで構成された軽くて保温性も高い3フィンガーグローブ。外部からの水や雪の侵入を防いで、汗を外に放出してくれる透湿防水フィルム「GORETEXインサート」を使用しており、本格的なバックカントリースキー&スノーボード向け。独自のPre Curveカッティングで、手の自然な状態を維持して、窮屈さを感じない設計に。
970 GTX 3-Finger Mitt BX-11N 15,890円/SWANY
宇宙飛行士のために開発されたという指関節を持つ特殊構造のグローブ。グローブをしていることを感じさせない抜群の操作性とフィッティングで、細かな作業がつきまとうバックカントリースキー&スノーボード向き。掌と指周りには柔らかな撥水加工のGORT LEATHER使用。また、独自のカッティングによるシングルシーム構造によって、縫い目からの熱の放出を軽減してくれるので保温性も高い。
Pro-X FX-11 12,100円/SWANY
スノーボードの場合は基本的にスノーシューでハイクアップする。したがって疲労度に直結するため、装着のしやすさや、軽さを重視して選択肢を絞り込みたい。また急な傾斜になればなるほど、足元が滑らないグリップ力が問われる。雪との接地面がどんな構造になっているのか、しっかり確かめておこう。
完成度の高さから、指名買いの顧客が多いというスノーシューの定番、MSRのライトニンアッセント。新モデルでは、パラゴンバインディングを採用し、着脱のしやすさが大幅に向上した。外周を取り囲む板状の360°トラクションフレームと2本のクロスメンバーによる優れたグリップ力と剛性も健在で、見つけたら即買い必至だ。
ライトニンアッセント 55,000円/MSR
スキーならダウンヒルでのパフォーマンスに耐えうる強度と耐久性が要求される。スノーボードでもハイクアップで体重を支える強さが欲しい。またスノーボードでの滑走時にはバックパックに収納、もしくは外部に取り付けるため、コンパクトに畳めるタイプが良い。
収納時には所定の位置にロックでき、バックパックへの収納やパックの外側への取り付けが容易にできる設計になっている。また、軽量のアルミニウム構造で、強度と耐久性も申し分ない。ダウンヒルでも高いパフォーマンスを発揮してくれる。グリップは硬度が違う2種類のプラスチックが使用されており、フィーリングも快適だ。
PIVOTポール 24,750円/G3
3段に縮めることができるトラバースポール。よりコンパクトに携帯したいスキーヤーやスノーボーダーの要求に応える。フック形状のグリップトップ、ツーリングストラップ、ラバーエクステンショングリップ、フリックロックなど、機能性も申し分ない。重量はペアで586gで、収納のサイズは98cm。
トラバース3 85-125cm 18,040円/ブラックダイヤモンド
1月の十勝岳(北海道)に日帰りの予定で、ビギナーを1名ガイドするという想定での荷物がこちら。ビーコン(写真下)、プローブ、ショベルは当然として、ロープや応急キット、予備のゴーグル、リペアキット、雪洞づくりなどに使うスノーソー、地形図とコンパス(写真下)などもある。なお、スキーでハイクアップする場合には、板が滑らないようクライミングスキンを貼り付ける(写真上の右端)。
石井スポーツ 神田本館 夏場はキャンプや登山用品、冬場になるとスキー用品中心に展開が替わる店舗。バックカントリースキー用品も豊富に取り揃えている。
住所:東京都千代田区神田小川町3-10
TEL:03-3295-3215
営業時間:10:00~20:00