甘いマスクで、華麗に踊り、高い歌唱力で観客を魅了する。そして演技力にも定評がある。そんなまばゆいスター性から、日本のミュージカル界を牽引する“プリンス”と呼ばれてきた山崎育三郎さんだが、素顔はスポーツをこよなく愛するアウトドア派だ。幼少期から野球に没頭し、フットワークの軽いアクティブな人物としてファンの間では知られている。
「子どもの頃から野球漬けでしたから、家でのんびり過ごすのが苦手なんです。大人になってからも休みがあれば、草野球やゴルフ、冬ならスキーやスノボーと、とにかく外で体を動かすのが大好きです。のんびり家で過ごすとむしろリズムが崩れて、疲れてしまうくらい(笑)。だからコロナ禍になり、外出が難しくなったので、休日の過ごし方に苦心しています」
今年4月には、キャンピングカーで楽しむ車旅の普及や啓蒙を目的としたキャンピングカーアワードを受賞し、主催者から副賞としてキャンピングカーを貸与されたものの、ほとんど活用できずにいるという。
「子どもの頃からキャンプに行くのが、わが家の恒例行事でした。そのせいか、キャンプは家族で楽しむものという考えがあります。以前は頻繁に家族でキャンプをしていましたが、そのときに道具を貸してくれていたのが、国分太一さんです。実は子どもが同級生でパパ友なんですよ。僕が休みを取れないときに、国分さんがうちの子をキャンプに連れて行ってくれることもあり、親子で仲良くしていただいています。国分さんはこだわりのキャンプ道具をたくさん持っていたので、使わせてもらいながら、それを参考に僕も最近、買い揃えました。すでにキャンピングカーに積みこんであるので、準備は万端なのですが……。もし、休みが取れて、気兼ねなく旅行ができる世の中になったとしたら、目的地を決めずにキャンピングカーで全国各地を旅してみたいですね」
どこでも寝泊りができるのが、キャンピングカーの良いところ。そんなキャンピングカーでの旅の楽しさは、アメリカ留学時で覚えたと山崎さん。
「学生時代に、アメリカへ留学をしていましたが、そこで双子の兄弟と仲良くなりました。彼らはプロゴルファーを目指していて、週末になるとキャンピングカーで遠方にあるゴルフ場まで遠征に行き、腕を磨いていました。僕も連れて行ってもらって、一緒にゴルフをするようになりました。キャンピングカーでゴルフ場まで走り、近隣で一泊。翌日、早朝からゴルフをして、また次の街を目指して移動する。ゴルフははじめるきっかけにもなったし、良い思い出です」
また登山は地道に登るイメージがあり、アクティブ志向な山崎さんは敬遠していたというが、今秋、公開が予定されている映画「ミュジコフィリア」の撮影で山登りを経験。その魅力の一端を感じたと語る。
「アクティブに体を動かすのが、好きな性格なので、地道に登る登山にはあまり興味がもてませんでした。スポーツジムがあまり好きではないのも同じ理由です。同じ場所をずっと走るというのが、苦手で……。登山にも同じような印象を抱いていたのですが、頂上に辿り着き、絶景を見たときの感動は想像以上でした。また、そこで食べるご飯も格別で、登山の醍醐味に目覚めた気がします。達成感があり、空気も綺麗。いつか子どもたちと登山して、頂上でご飯を食べる機会を設けてみたいという気持ちが芽生えました」
ふとしたきっかけに未体験の面白さを見出し、ポジティブに向き合う。常に新しいことに挑戦し続ける山崎さんらしい発言だ。ミュージカルの世界を飛び出し、映画やドラマの世界に進出。さらにはコンサートもこなし、今秋には1974年から続く人気トーク番組“おしゃれシリーズ”の司会にも挑む。
「『おしゃれイズム』からバトンを受け継ぐ、『おしゃれクリップ』という番組ですが、古舘一郎さん、上田晋也さんと日本を代表する司会者が担当してきた枠を僕が引き継ぐなんて、ありえないですよね。いまでもめちゃくちゃ怖いです。でも、同時に“行け!”って背中を押す自分もいるんです。挑み続けることで誰かが見てくれて、新しいお話をいただける。だから自分で自分の可能性を決めつけたくないと思っています」
確かに司会業の経験は少ない。しかし、YouTubeでゲストを招き、ドライブをしながら、同業者の本音を引き出すという企画を行い、話題となっていた。番組関係者がその様子を見て、オファーを出したのかもしれない。
「いつも“好き”から始まる、面白がる気持ちを大切にしたいと思っています。文化祭の前日のようなワクワクする気持ちというか。お客さんに楽しんでもらうためにはどうしたらいいんだろう? あの感覚がずっと続いているような精神状態です。子どものころは人前が嫌いだったので、ネガティブな一面もあるのですが、乗り越えないといけない瞬間があると、“何をびびっているんだ!行けよ!”という体育会系の気質が目覚めるのかもしれません。それにみんながやめなよって静止するような状況は、むしろチャンスだと感じるんです」
20代で目標としていた「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」「エリザベート」「モーツァルト!」という4大ミュージカルへの出演を果たし、ドラマや映画といった新たな挑戦をする道を選んだ山崎さん。そして、一歩一歩階段を登ってきただけに説得力がある。今年は大河ドラマでの大役も控える。
「大河ドラマへの出演を一番喜んでくれたのは、祖母でした。自分以上に喜んでくれているので、嬉しかったですね。昨年、朝ドラの撮影で、NHKには通ったのでその延長戦のような感覚で、リラックスして挑めています。でも演じるのが、伊藤博文という誰もが知る人物。長州弁や英語のセリフもあり、求められるハードルが高いのですが、徐々に楽しめるようになってきました。伊藤博文は、僕がこれまで演じたことがないような一面があって、僕の新しい一面も見せられると思うので、期待してください」
新しいことに挑戦し、その壁を軽々と飛び越えていく。これからも山崎育三郎から目が離せない。