自己能力を向上させることが
僕にとって一番の喜び
GOODA読者の目に、俳優・福士蒼汰はどう映っているだろう。ドラマや映画で活躍する爽やかなイケメン? 高身長でスマートな立ち居振る舞いから、クールなイメージを抱くのではないだろうか? しかし、趣味について語る彼は雄弁で、その言葉は熱を帯びていく。
「勉強と運動です。娯楽的な趣味はほとんどなくて、YouTubeを見るくらいですが、それも教育系の動画を見ることが多いです。せっかく時間があるのなら、ためになることをしたいんです。自己能力の向上というのが、僕の趣味であり、一番の喜びです」
開口一番、そう答えた。福士蒼汰という人物を紐解く上で、「自己能力の向上」というキーワードは外せない。それは彼の仕事へのスタンスからも明らかだ。
「100%の自分を表現できる環境でこそ、良い作品が生まれるのではないかと思っています。それは僕にとって居心地の良い現場という意味ではなく、プロデューサーや監督はじめ、作品に関わるすべてのスタッフの皆さんにとっても100%の能力を発揮できる環境であってほしいと思っています。主役を演じさせて頂く現場では、まだまだ未熟ではありますが、座長として共演者の皆さん、スタッフの皆さんが仕事しやすい環境か、常に気を配るよう心がけています。」
とはいえ、多種多様なスタッフが集まる映画やテレビの撮影現場で、そのような環境を構築するのは至難の技ではないだろうか?
秋にどハマりするベージュカラーのセットアップ。定番のコーディネイトも少しゆとりが出るワンサイズ上をあえてチョイスすることで、トレンド感がプラスされる。
遊び心でプレッシャーから解放
個性がクリエイティブの鍵になる
「アイデアや目指す方向性が違うことはあります。でも、そんなときはとことん話し合うようにしています。見てきたものや経験してきたものは全員違いますから、アイデアが違って当然だと思います。僕も自分の意見が絶対に正しいとは思っていないので、この作品にとってどっちが正解? という視点で、お互いが納得するまで話し合います」
それぞれが100%打ち込むためには、どんな作品を目指すのか、イメージを共有するゴールを設定することが大事だというわけだ。そのために議論を尽くす。また、もうひとつ大事にしていることがあるという。
「仕事に対して、前向きに遊び心を持って楽しく取り組むということ。プレッシャーを強く感じ過ぎないようにしています。これをやらなければ! という義務感で挑むより、自分からやりたいという気持ちをもって臨むほうが、物事が良い方向に進むと思うんです。作品づくりには、携わる人から滲み出てくる個性が重要だから。緊張感や義務感が強ければ、自由な発想や個性が塞ぎ込まれてしまいます。だからこそ、遊び感覚を忘れないように心がけています」
もうすぐデビューから10年。注目の若手ではなく、すでに日本を代表する俳優のひとりとなっている。出演作が決まればニュースとなり、その一挙手一投足に注目が集まる。われわれの想像を遥かに超えるプレッシャーの中、どうすれば結果を残せるのか? それは彼が見出した処世術であり、結果を出すための最適解なのだ。
「挑戦し続けたいです。自分らしさを忘れずに、良い意味でみなさんの期待を裏切るような個性も出していきたいですね。自分の中にあるバランス感覚を大切に、求められていることを追求していきたいと思います」
自分の能力をいかに発揮するのか? その試行錯誤はあらゆる大人の課題でもあり、共感するところだろう。
カジュアルなチェック柄だけど、どこか品がある。その秘密は襟元と両袖に配された黒とフロントのゴールドのボタン。子どもっぽくならないよう、足下はパラブーツで決めたい。
語学を習得するコツは
大量のインプットから
再び、趣味の話に戻そう。「趣味は勉強と運動」。勉強とは具体的に語学や歴史などを指し、運動は格闘技や筋トレ、テニス、スカッシュをしているという。
彼が英語学習を趣味にしていることは、ファンの間では有名だ。2014年に出席したローマ国際映画祭では、英語に加え、イタリア語でも流暢な挨拶を披露している。
「言語を学ぶのが昔から好きなんです。第二言語に挑戦するときより、第三言語を学習するときのほうが、飲み込みが早いといわれることがありますが、共感できます。
それぞれの言語がもつ文法の似ている点や違いに気づいたり、ここを念入りに勉強すれば話せるようになるだろうといったポイントが見えてくると思うんです。語学習得のコツは、まず大量にインプットすることだと思います。英語は学生時代にみんな勉強しますし、耳にする機会も多いですが、そのほかの言語の場合、知らないことが多すぎて、インプットが不足しがちです。参考書や単語帳、アプリなどを使って、頭に叩き込んでいきます。映画やドラマを使ってのリスニングは初級者にはハードかもしれません。日常会話でスピードが早く、聞き取りの難易度が一番高いと思います。その言語を話す外国人の友達を見つけて、テキストメッセージでやりとりをするほうが上達への近道だと感じています」
と、言語学習のコツを教えてくれた。こうした外国語の習得は役者にとって将来の糧になる。歴史の勉強も同様だ。
答えを導き出す快感から
知恵や知識を蓄える喜びへ
「歴史上の人物を演じることもあるので、役作りの一環として、勉強をはじめたのがきっかけです。演じる上でその時代に関する知識をもっていたほうが、演じやすいですし、文献や資料を辿れば、どんな服装、髪型で生活をしていたのか、視覚的な情報はもちろん、時代背景や人々の考え方を知ることもできます。それが人物像を掴む大きな支えになります。逆に未来の人を演じる場合には、手がかりがなく、どうしたらいいのか戸惑ってしまうかもしれません」
最近は明治時代に生きた人物を演じる機会が多く、その時代に関する知識が増えてきたという。
「演じる役柄が生きていた時代から歴史を学んでいくほうがリアルに感じられて、知識も頭に入っていきます。歴史の学習は難しいと悩んでいる人もいると思いますが、まったく接点のないことを覚えるのは誰にとっても簡単ではありません。住んでいる地域や関心があるテーマから歴史を掘り下げたり、いかに自分に関連づけていくかが大事です。
そうやって自分との接点を増やしながら学習していると、点と点がつながる瞬間があります。これとこれが関連していたんだと、流れを把握できるようになり、理解も深まっていきます。それが学ぶ醍醐味です」
学生時代から学ぶことは苦ではなかったという。ただ大人になり、学びが趣味になったのは、意識が変わったからだと語る。
「学生時代は理系で、数学の勉強をしていても、問題を解くことに快感を覚えていたように思います。でも、いまは答えを出すことより、自分の知識を蓄えることに魅力を覚えます。新しいことを知ることは自分のためになりますし、それを誰かに伝えると良い影響を与えることもできます。とくにいまはこんなご時世で、親の年齢もあがってきたこともあり、健康への関心が高まって、食事や栄養について調べています」
全身黒でまとめたモードなスタイルは素材感の違うアイテムを組み合わせるのがポイントになる。また、肌の露出が減る時期だが、足首をチラ見せするだけで、軽やかな印象に。
趣味を熱く語っていると
周囲が引いていくのがわかる
その後、ひとしきり最近ハマっているという食事法について熱く語ってくれた。次から次へと知識や言葉があふれ出す熱量に「なかなか周囲の人は理解してくれないんじゃないですか?」と返すと、
「そうですね。だいたい『はぁ……』という気の無いリアクションが返ってきて、周囲が引いていくのがわかります」と笑う。
一度、興味が湧くと、とことん調べ上げずにはいられない性格。だが、きらきらした目で趣味を語る姿には親近感を覚えずにはいられない。しかも、興味があることは次から次へと増えていくという。
「ほかにも興味があってやりたいことはたくさんあります。例えば楽器はいつかやりたいと思っていますし、絵も描きたいんですけど、あまり向いてない気がするので、鑑賞するほうに専念しようかな。楽器はピアノがいいですね。音色が好きだし、弾いている姿がかっこいいですよね。ギターもいいけど、弾ける人が多いから、ライバルの少ないピアノが狙い目だと思ってます。仕事に関連しない唯一の趣味は、テニスとスカッシュかもしれないですね。球技はバスケをやってきましたけど、ラケットという自分の体じゃない外的要因で打ち返すテニスとスカッシュは完全に別のスポーツで面白いですよ」
主演ドラマは自然すぎる
潜入シーンが見どころ
そんな彼が主演するテレビドラマ「DIVER -特殊潜入班-」が9月22日からスタートする。犯罪者を撲滅するためには手段を選ばない、極悪非道で冷酷な潜入捜査官だ。
「潜入捜査官をテーマにした作品はほかにもありますが、今回の潜入シーンはとてもナチュラルで、シーンが変わると突然に大学生になっていたりします。準備を整えて、いざ潜入するといった様子ではなく、あくまで悪をさばく、つぶすという捜査の過程のなかで潜入が描かれます。だから、回によっては大学が舞台の青春ドラマがはじまったかのように錯覚するかもしれません。僕も完全に大学生になりきっているので、二重人格の役柄を演じているような感覚です。それは従来の潜入捜査ドラマにはない魅力かもしれません」
と、ドラマの見どころを語る。また、今回は兵庫県で主な撮影が行われている。
「兵庫県民や神戸市民には馴染みの場所がロケーションになっていますし、訪れたことがない人にも神戸の美しい街並みは印象的だと思います。また、この作品は漫画が原作なのですが、漫画的な芝居は極力排除しています。よりリアルな描写にこだわっています。オレオレ詐欺など実際に起こっている事件や犯罪を題材にしていますし、僕らの日常に潜んでいるかもしれない出来事としてドラマを見てもらえたら嬉しいですね」
アクションシーンもあり、これまでにない冷酷な人物像だという。福士蒼汰の新たな一面が垣間見えるに違いない。
黒のジャケパンで大人っぽくまとめるなら、インナーはTシャツをセレクト。適度なラフさが、オンでもオフでも重宝するはず。