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近道も正解もないから一生飽きない。プロ雀士・滝沢和典が語る‟大人の脳”を使い倒す麻雀の魅力
2026.07.15
日本プロ麻雀連盟16期生としてプロ入り以降、長年、麻雀プロという勝負の世界で存在感を示し続けている滝沢和典さん。最近ではプロ麻雀リーグ「Mリーグ」に参戦する「KONAMI麻雀格闘倶楽部」で選手権監督に就任するなど、新たなステージを踏み出したばかり。一見すると飄々とした物腰で内面を読み取らせない勝負師の印象を受ける。しかし、麻雀の話になると会話は熱を帯び、大好きだというロックバンドの話題に変わると少年のように無邪気な笑みをこぼす。
今年も、外に出るのも躊躇うような酷暑の夏がやってきた。今号のGOODAでは、独自のインドアライフを謳歌する4人の達人が登場。大好きなものやこだわりに熱中する彼らの姿をヒントに、室内で楽しく夏を乗り切ろう。
Photo:Tatsuya Irie/Text:Kazuyuki Nomura
1日10時間以上、月に300半荘。麻雀三昧の日々からプロの道へ
——滝沢さんはどのような経緯で麻雀プロになったんですか?
初めて麻雀牌に触れたのは中学生の頃。友達の家に遊びに行ったら、友達の両親が麻雀をやっていて、なんか面白そうだなと思って入れてもらったのが最初ですね。やってみると面白くて、当時の野球部仲間とこたつで卓を囲むようになっていました。高校生になって軽音楽部に入ってからはバンド組んで音楽やりながら、友達たちと麻雀ばかり。当然、勉強なんて全然やってなくて。それで、高校卒業する時に何もやることなくて、さて、俺どうしようと(笑)。結局高校卒業する直前まで何にも決まっていなかったのですが、バンドをやっていたこともあり、親が「音楽系の学校にでも行ってみれば?」と勧めてくれて。
——音楽系の学校に行ってたんですね。
そうですね。でも、自分で演奏やるほうじゃなくて、楽器をつくったり、直したりというメンテナンスの技術を覚えるほう。いざとなったら、楽器屋さんとかそっち系の道に進めたらとなんとなく思っていたんです。でも、結局1年でやめて、ふらふら生活しながら麻雀ばかりやっていた時に、たまたま知り合いを通じて麻雀プロの方とお会いする機会があって。それで、当時若くて麻雀ばかりやっているやつも珍しかったからだと思うんですけど「そんなに麻雀好きならプロの試験を受けてみれば!?」と勧められたのがプロになったきっかけですね。
——そんなに麻雀が好きだったんですか?
はい、本当に麻雀しかやってなかったですね。学生の頃は学校終わったらすぐ麻雀。 20〜30代の頃も1日10時間以上、月に大体300半荘くらいは打っていましたし、今もネット麻雀含めると打たない日はありません。打ってない時も頭のなかでその日の対局の内容を反芻したりしているので、そう考えると1日の大半の時間麻雀のこと考えています。全く考えないのは、人と会っている時や、お酒を飲んでいる時間くらいかもしれません。
強くなるのに近道はない。だからこそ大人がハマる
——やはり麻雀が強くなるには打ち続けるのが重要なんですね。
そうですね。「どうやったら麻雀強くなりますか?」と聞かれることも多いですが、やっぱり何度も打って経験値をあげていくのが大切だと思います。近道はなくて、自分なりの正解を自分自身で見つけていくしかない。実際に打たなくても、上手な人の対局を見るのもいいと思いますよ。僕らが若い頃は上手な人が打っているのを後ろから実際に見ることは簡単ではなかったのですが、最近はMリーグもあるし、ネット配信で簡単にプロの対局を見ることができる。とても恵まれた環境だと思うし、だからこそ競技麻雀全体のレベルがあがっているのだと思います。
——麻雀配信が好きな人も多いと思うのですが、初心者はどんなところを意識して見ると良いのでしょうか。
好きなプレイヤーを推して応援するのもいいですし、あとは上手な打ち手の打ち筋を見ながら、なぜそう打ったのか自分で考える、個人や団体タイトルなど色々ありますが、解説者も結構重要なんですよ。特に初心者の人は、好きな解説者を見つけるともっと楽しめるんじゃないかと思います。
——解説者ですか。あまり意識していませんでしたが、面白い視点ですね。
やっぱり解説者の方にもそれぞれ考えがあるので、見てる人によって合う、合わないがあると思います。ただ、“見て上達する”という観点でいうと、ある程度間違った打牌は『間違っている』とスパッと解説者が言ってくれると分かりやすいと思います。あとは、喋りが面白い人も僕は好きで、初心者の人でも飽きずに見れるんじゃないかな。
——滝沢さんが面白いなと思う解説者を教えてください。
僕が好きなのは、朝倉康心さん。基本に忠実なんですが、自分の意見もしっかり入れてくれるので、初心者の方でも分かりやすく、参考になると思います。あとは前田直哉さんも好きですね。よく話が脱線するんですが、口上が上手なので聞いていて気持ちがいいし、面白い。もちろん、その他にも個性豊かな解説者の方々がたくさんいるので、プレイヤーだけじゃなく、解説者も意識しながら見るとより楽しめると思います。
結果に波風を立てない。勝負師に学ぶ人生のメンタルハック
——麻雀はどうしても運の要素が絡んできます。そういう部分と、プロはどうやって折り合いをつけているのでしょう?
それはもう、ただ淡々と受け入れる以外ないと思います。麻雀やられている人なら嫌というほど分かると思うのですが、良い配牌が来て、ミスなく打っても勝てるとは限らない。必ずしも実力が結果に直結しないんですよね。だから、何が起ころうと心に波風を立てず、無心で打ち続けることが大切です。
——でも、特に運が悪くて負けが続くとどうしても打牌に影響してしまいます……。
分かります。でも逆にいうと、だからこそ諦めがつくというか。技術不足で負けるのならそれは反省して改善していかなければいけないのですが、どんな人でもずっと勝ち続けることはできないし、負ける時は負ける。諦めるのとはまたちょっと違うのですが、無理なものは無理だと自分の中で折り合いをつける以外ないんですよね。
——その思考は、人生においてもヒントになる気がします。
そうかもしれません。簡単なように見えて難しいのですが、結果に引きずられるとあまり良い結果に繋がらないことは、長い麻雀プロ生活のなかで身をもって知りました。あと大事だなと思うのは、調子が悪くてもアンテナを常に張っておいて、チャンスが来たら絶対に逃さないこと。勝てなくて結果が出なくても、腐らずに準備はしておく。そこが一番大切だと思います。
心のなかで燃え続けるロック魂
——滝沢さんの休日の過ごし方を教えてください。
全然普通ですよ。娘が2人いるので、一緒に公園に行ったり、買い物に行ったり。夜はお酒を飲みながら音楽聴いたり、ちょっとギター弾いたりとか。
——昔バンドを組んでいたこともあり、ロックが好きなんですよね。
そうですね。高校生の頃、初めて自分でCD買ったのがガンズ・アンド・ローゼスでした。その後パンテラとセパルトゥラといったバンドが大好きになって、高校2年生の時にパンテラのライブに行ったのが凄く思い出に残っていますね。そこからアイアンメイデンとか、メタリカ、メガデスとかメタル系も好きになり、NOFXとかグリーンデイといったメロコアもよく聴いていましたね。
ちょうどその頃ハイスタンダードが一種のムーブメントのように大人気になっていたのですが、僕も例に漏れずどハマり。それからドラゴンアッシュが近所の大学の学園祭でライブをしていて、友達がそこに行ってめちゃ興奮して「ヤバいバンドがいる」と教えてくれて。それ以来ずっと今でも大好きです。
——ライブにも行くんですか?
やっぱりライブはバンドの魅力の一つなので、よく行きます。ドラゴンアッシュのライブは何度も足を運んでいますし、この間はハイスタンダードの再結成ライブにも行きました。実は以前、番組の企画で僕がハイスタの曲をギターで練習し、スタジオで披露するというものがあったのですが、本番で横山健さんがサプライズ登場してくださってお会いしたんです。僕らの世代からしたら神様みたいな人なんでめちゃくちゃ緊張したんですが、それ以来たまに麻雀とかもご一緒させてもらったりしています。本当、人生何があるか分からないですよね。
——最後に、今後の目標を教えてください。
今僕が所属させてもらっている「KONAMI麻雀格闘倶楽部」は、Mリーグで去年準優勝したのですが、まだ優勝はしたことないんですよ。だから、今年こそは優勝したい。あとは、さらに腕を磨いて強くなることです。もう30年以上麻雀をやっていますが、それでもまだきっと強くなれると信じていますし、チャンスが来たら確実にものにするために準備は怠らないようにしたい。これまで通り、淡々と。そんな感じです。





