ファッション
「Salomon(サロモン)」のルーツとテクノロジーを知ると、今選ぶべきスニーカーが見えてくる
2024.05.28
アウトドアやロード・トレイルランニングのシーンで優れたパフォーマンスを発揮する、「Salomon(サロモン)」のシューズの数々。クオリティの高さから確固たる地位を築いているが、その技術と革新性をベースに、タウンユースとしてもかなりの人気を誇っている。
今回は、アメアスポーツジャパン株式会社 サロモン ソフトグッズ MDチームの山村 拓さんに話を伺い、ブランドのルーツをひも解きながら、今選ぶべきスニーカーを紹介してもらった。
取材/TAKANORI ITO
協力/Yuri Handa(Amer Sports Japan, Inc. Marketing team Salomon Department)
Salomonのルーツはウィンタースポーツとマウンテンスポーツの2つ
―― まずはSalomonの歴史から教えてください。
「1947年にフランスのアヌシーという、湖に面し、山に囲まれた自然豊かな街でSalomonは誕生しました。土地柄マウンテンスポーツ、ウィンタースポーツが盛んで、スキー板のエッジの研磨工場を営んでいたことがブランドの始まりです」
アドベンチャーレースの競技用シューズを開発
―― シューズづくりはいつから始められたのですか?
「1992年にクロスカントリー用のブーツを流用し、ハイキングブーツをつくったのがきっかけで、そこから一気に靴づくりが盛んになります。マウンテンスポーツブランドとして、2000年代初頭に地球上で最も過酷とされるアドベンチャーレースの競技用シューズを開発。まだトレイルランニングという言葉がそこまでメジャーでない時代から、山で走るための機能を搭載したトレイルランニング用のシューズをリリースしてきました」
これぞ定番と呼ばれるスニーカー
――Salomonのスニーカーの定番アイテムを紹介してください。
「定番アイテムは、『XT-6(エックスティーシックス)』だと思います。 Salomonのスニーカー全般に言えますが、“パフォーマンスライン”という実際にトレイルランニングやハイキングなどで使えるものがタウンユースでも履かれているんです。XT-6はもともとトレイルランニング用のシューズで、独自のテクノロジーが多く搭載されています。
ソールも複数オリジナルでつくられており、このモデルには『コンタグリップ』というオールテレーン(全地形型)のアウトソールが採用されています。このモデルは、“まずは定番の1足から”とお考えの人にはオススメですね」
機能性と耐久性を重視したオリジナルテクノロジー
――Salomonのスニーカーで使われている、オリジナルのテクノロジーを紹介してください。
「Salomonのスニーカーにはさまざまな種類がありますが、複数のモデルに共通する独自のテクノロジーを紹介します。最初は『Quicklace(クイックレース)』という機能で、特殊なシューレースを用いることで、締める、緩めるがワンタッチで可能になります。アドベンチャーレースの競技中は靴の脱ぎ履きに時間をかけられず、その対策として開発されました。シューレースを緩める時は中央のロッカーというパーツを押してずらし、締める時はそのままロッカーを下ろすだけで済む仕様なんです。
シューレースは 『ケブラー』という耐摩耗性に優れた、防弾チョッキにも使われる素材でできています。競技中にシューレースが切れる心配が無いよう、一般的な物よりも4倍強いとされているケブラー素材を採用しました。ベロにポケットがついており、シューレースを結んだ後の余った先端部分を収納できます。これは、走行中に小枝にレースを引っかけないための工夫です」
「もうひとつの大きな特徴として、ミッドソールに板状の『Chassis(シャーシ)』というオリジナルのパーツを搭載しています。プラスチックのようなTPUという素材でつくられており、歩行時の足のブレを軽減して衝撃を緩和するものです。
また、側面についた山型に見える部分は『sensiFit(センシフィット)』と呼ばれており、シューレースを締めると山型に沿って足をホールドする機能になっています。このように、Salomonのスニーカーにはさまざまな技術が散りばめられているのです」
カジュアルな普段使いにもオススメの1足
――ファッションアイテムとして、カジュアルなスタイルにも合うモデルを紹介していただけますか?
「ファッションアイテムとして人気なのは、『XA PRO 3D(エックスエー プロ スリーディー)』というモデルです。現在はパフォーマンスラインとして、9代目までテクノロジーが進んでいるのですが、7代目となるこのモデルはファッションアイテムとしての需要が高く、今シーズンも最新版のモデルと並行してリリースされています」
ファッションアイテムとしても人気のSalomonのスニーカー
――Salomonのスニーカーはファッションアイテムとしても人気ですが、何かきっかけはあったのでしょうか?
「Salomonはもともとスニーカーだけを前面に打ち出してはおらず、シューズもギアのひとつという位置づけでした。2012年に『The Broken Arm(ザ・ブロークン・アーム)』というフランスのセレクトショップとのコラボレーションがきっかけで、Salomonのスニーカーをファッションアイテムとして取り入れる人が急増したんです。
ほかにも、『RALPH LAUREN(ラルフローレン)』のRALPH LAUREN氏や、『COMME des GARÇONS(コム・デ・ギャルソン)』の川久保 玲氏がSalomonのスニーカーを履いてメディアに登場されました。最近では、『MM6 Maison Margiela(エムエムシックス メゾン マルジェラ)』とのコラボレーションの影響も大きいと言えるでしょう。1足に多くのテクノロジーが詰まっている点が、Salomonがファッション界から注目された理由だと思います」
注目したい夏の最新モデル
――2024年夏のアイコンになる、最新作のアイテムを紹介してもらえますか
「今シーズンにご注目いただきたい、『SPEED CROSS 3』というアイテムを紹介します。
目を引くカラーリングは、SPEED CROSSができた時のOGカラーを今季復刻したものです。昨年のスーパーボウルでアーティストの『Rihanna(リアーナ)』氏がSalomon×MM6のスニーカーを履いて以来、ずっと反響が続いています。MM6とのコラボレーションのベースとなったモデルがこのSPEED CROSSなんです。この流れを受けて、今シーズンはSPEED CROSS 3をSalomonのファッションラインスニーカーのアイコン的な存在にしています」
Salomonはテクノロジーを追求し、高いパフォーマンスでアスリートを支える一方、ファッション上級者からのラブコールも絶えない唯一無二なブランドだ。Salomonのスニーカーで何を選ぶべきか決めかねている人にとっては、今選ぶべき1足が見えてきたのではないだろうか。今後もSalomonのラインナップに注目していきたい。
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ファッションライター
伊藤孝法 (イトウタカノリ)
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ファッション、メンズビューティーのジャンルでさまざまな媒体で執筆中。中目黒の老舗セレクトショップOUTPUTオーナーでもあり、ブランドのセールスやPRを手がける。WWDファッショニスタ100人がリコメンド!に参加。故郷北海道でFM番組のパーソナリティーも担当している。