ファッション
“着る”ほどに価値が上がる
日本発「FDMTL」が世界で人気を博す理由
2022.04.28
「着るほどに愛着の持てる服」をコンセプトに、細部にまで気を遣うデニムを中心にしたアイテムを展開する「FDMTL」(ファンダメンタル)。世界中のブランドとのコラボレーションで話題が尽きない「FDMTL」の人気の秘密を、デザイナーの津吉 学さんに聞きました。
取材/TAKANORI ITO
川谷絵音氏とのコラボを始め、新たなアプローチとなる新作が続々!
――本日は、よろしくお願いします。「FDMTL」といえばさまざまなブランドとのコラボレーションアイテムを以前からリリースしていますが、今シーズンのニュースはありますか?
津吉「直近ですと川谷絵音さん(ゲスの極み乙女。Indigo la End)の主催するブランド『LATENCY™️」(レーテンシー)とのコラボレーションアイテムをリリースします」
――川谷絵音さんとコラボレーションというのは、びっくりしました。これまでとは違うアプローチを感じます。
津吉「川谷さんをイメージしたモノクロの『襤褸(ボロ)柄』でつくったワイドシャツと、クマのぬいぐるみ、『OUTDOOR PRODUCTS』(アウトドアプロダクツ)のトリプルコラボウエストバッグの3アイテムをリリースします。イメージムービーもつくったのですが、音楽は川谷さんが担当してくださいました」
――これはすごいですね! こちら以外でも今季、発売予定のものはありますか?
津吉「今季はアウトドアギアを中心としたコラボレーションに力を入れていて、まずはドイツのブランド『HEIMPLANET』(ヘイムプラネット)と製作したテント。これはエアフレームを用いた空気で膨らませるとてもユニークなテントです。韓国の『HELINOX』(ヘリノックス)とはチェアとテーブルをつくりました」
――「FDMTL」がコラボーションするのはアパレルブランドだけとは限らず、さまざまなのも特徴ですよね。
津吉「コラボレーションは基本的に僕がこれまで実際に愛用してきたものをベースにつくることが多くて、例えばこの『OUTDOOR PRODUCTS』(アウトドアプロダクツ)のバックパックは学生時代使っていたものをイメージしています。過去には『VANS』(ヴァンズ)、『NEW BALANCE』(ニューバランス)、『NEW ERA』(ニューエラ)、『Disney』(ディズニー)、『Dickies』(ディッキーズ)、『master-piece』(マスターピース)、『MEDICOM TOY』(メディコムトイ)など思い入れのあるブランドやプロダクトとのコラボレーションをしてきました」
海外での評価を得てから、日本でも人気に
――ブランドの歴史をお聞きしたいのですが、スタートはいつでしょうか? また、海外進出はどういうタイミングだったのでしょうか?
津吉「ブランドのスタートは、2005年ですね。初の展示会は翌の2006年に代官山で開催しました」
――僕も行かせていただきましたが、その頃からデニムは主力商品でしたね。
津吉「そうですね、当初からデニム商品の国内のお客さんの評判は良かったと思います。海外進出に関しては、2012年にはじめてパリの展示会の小さなコーナーで商品だけ飾らせてもらうような感じで出展がスタートしました。その翌年からコレクションのフルラインナップでコロナ禍になるまでは年に2回、主にパリで展示会を開催していました。ベルリン、ロンドン、コペンハーゲン、ニューヨーク、ラスベガスといった欧米、香港などのアジアでも展示会を行っています」
――最初の頃は、どんな状況だったのでしょうか?
津吉「最初は全然取り扱い店舗も決まらなかったし、『オーダーが入らないのに毎シーズン海外の展示会に出て意味あるの?』なんていわれたことも。でも3年間はとりあえずチャレンジしようって決めていました。2年半ぐらいたった頃に、LAのAMERICAN RAG CIE(アメリカンラグシー)というお店に『DENIMBAR』(デニムバー)というコーナーがあるのですが、そこが取り扱ってくれることに決まったんです。それを皮切りに、パリの『Colette』(コレット)とか『BARNEYS NEW YORK』(バーニーズニューヨーク)など、有名店がオーダーをいただくようになりました」
――例えば、ブランド激戦区な「AMERICAN RAG CIE」のような店の中で、ずっとラインナップしてもらうというのはすごいことですね。「DENIMBAR」はバーのカウンターみたいな内装に、お酒じゃなくてデニムが並んでいますよね。では、「FDMTL」は、日本よりも海外の方が先に有名になったのですか?
津吉「日本よりは海外のほうが、先に好評をいただいたと思います。その頃すでに日本でも十分に展開できていたのですが、海外の取り扱い店舗が増えることで日本の取り扱い店舗が増えたのは事実です。アイテム的にはデニムパンツがきっかけですが、ちょうどその頃『VANS』(バンズ)とのコラボレーションがはじまったタイミングでもあったので、それが重なったのもあります。『VANS』は最初日本のみの展開でしたが、ヨーロッパ限定版の発売を経て、去年はグローバル発売となり、全世界のお客様にお届けすることができました」
――『VANS』とのコラボレーション第1弾のインパクトが大きかったですね。「ドーバー ストリート マーケット ギンザ」にも商品が並んだのも印象的でしたね。
「着るほどに愛着の持てる服」がテーマ
――近年、“若者のデニム離れ”がささやかれていましたが、最近また“デニム流行り”が戻りつつあります。「FDMTL」はその起爆剤的な存在になっていると思うのですが。
津吉「『FDMTL』は世界中にお客さんがいるので、“デニム離れ”や“デニム流行り”の感覚はないんです。『FDMTLのこのデニム!』と決め打ちで買ってくださるお客さんが多いのもあり、もはやデニムという感覚ではなく、『FDMTLのパンツを買っている』感覚なのかもしれませんね」
―ー『FDMTL』はカバーオールも人気ですよね。
津吉「『FDMTL』を代表するアイテムはデニムとカバーオールがあるんですが、デニムパンツはストレートのクラッシックとスリムの2型が定番型としてあります。これは『FDMTL』の商品全般にいえるんですが、『インディゴ』『パッチワーク』『刺し子』の3つはデザインの中に入れるようにしています。例えばひとつのインディゴ生地だけを使ってもフラットに見えてしまう。いろんな生地を組み合わせることによって奥行き感が出て立体的になるんですね。更に長く着ていくと経年変化で色落ちしてくるんですが、生地によって色落ち具合やスピードが違うので、それがまたおもしろい。コンセプトとして『着るほどに愛着の持てる服』というのがあるのですが、インディゴものの経年変化は着古して価値が上がると思うので、その部分をすごく大事にしています」
――素晴らしいコンセプトだと思います。このマインドが「FDMTL」が唯一無二で、人気がある理由だと再認識しました。今日はありがとうございました。
PROFILE
FDMTL TOKYO
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿2丁目4−1
03-6721-6561
-
▼話を聞いた人
伊藤孝法
-
1973年北海道生まれ。中目黒の老舗セレクトショップOUTPUTオーナーで、さまざまなブランドのPRなども手掛ける。2014年、WWD日本のファッショニスタ100人にも選ばれ、自身のYOUTUBEチャンネル「ファッションとカルチャーとme」も更新中。