ファッション
1時間に1m編むふんわり生地
スウェットブランド
「gym master」の歴史とこだわり
2022.03.09
1916年、カナダ、ノバスコシア州のカットソー製品をつくる縫製工場として創業し、「NOVA SCOTIA TEXTILES(ノバスコシアテキスタイル)」のファクトリーブランドとして誕生した「gym master」(ジムマスター)。カナダを代表するスウェットブランドして100年続くその魅力と進化していくこれからの展開について、日本のSelling Agentである「グランド・ワン」の吉川さんに話を聞いた。
取材:TAKANORI ITO
100年前から変わらない「gym master」の製造方法
ー本日はよろしくお願いします。まずは「gym master」の歴史からお伺いしたいのですが。
「『gym master』は『NOVA SCOTIA TEXTILES』の創業当時からあったわけではないのですが、ブランド誕生からもうすぐ100年という歴史をもつブランドです。ここに昔のカタログがあるんですが、もともとノバスコシア州のウインザーという街の工場でつくっていたんです」
―これは何年ぐらい前ですか? 1990年代っぽい雰囲気ですが、1980年代っぽくもありますね。
「何年前かはわからないんですが、昔のことをよく知るカナダのスタッフに『今回日本で取材がある』と伝えたら貸してくれたんです」
―貴重な資料ですね。カナダには「HOUSE OF BLANKS」(『Supreme』のボディとしても使われているブランド)など、「gym master」のほかにも有名なスウェットブランドがありますよね。スウェットづくりが盛んなのでしょうか? アメカジフリークの方々の中でも「カナダ産のスウェットが良い」という意見も多いですよね。
「カナダがスウェットづくりに盛んかどうかはわかりませんが、いくつかはありますね。アメリカの『CHAMPION』とか『CAMBER』とはまた違う感じですよね。このカタログにも載っているんですが、『gym master』ではフラットシーマ(特殊なミシンを使った四本針縫製)のラグランスリーブ、ナッピング(起毛加工)などでつくるクルーネックスウェットやパーカーやスウェットパンツは、今も変わらずつくっています。『トンプキン編み機』を使った、糸に負荷をかけずに、1時間に1mというゆっくり時間をかけて編まれた生地が使われていたのですが、とにかくふんわりやわらかに編みあがるんですよ。今も変わらずこの古い機械を使ってつくっています」
―今も同じ製法でつくってるなんて、歴史とこだわりを感じます。昔の機械をそのまま使うということは、メンテナンスにも大変な手間もかかりますよね。その後日本で代理店契約をして展開するようになったのはいつぐらいからですか? 25年ぐらい前は代理店がなかったので、海外ブランド品のほとんどは並行輸入品になり、メーカーから直接買ってラインナップしているセレクトショップに置いてあることがほとんどでしたね。
「現在で20年ちょっと経つので1990年代後半ですね。90年代はほとんど並行輸入商品というのは、そうだったかもしれません」
―現在、「gym master」は何色展開ですか?
「クルーネックスウェットとプルオーバーパーカーに関してはパールグレー、オックスグレー、ブラック、クランベリー、オートミール、キャメル、ディープグリーン、ミッドナイトネイビー、オックスバイオレット、新色がオックスブラウンとオックスオリーブで11色展開です」
―今回の新色のオックスブラウンとオックスオリーブがすごくいいですね!
「ありがとうござます。これが出る前のシーズンではオリーブとキャメルというマットな色が新色として出たので、今回はオックスの霜降り系でリリースされています」
―あと「gym master」といえばグレーの霜降りが特徴的ですよね。このオックスグレーの感じが「gym master」しか出せないトンプキン編みの生地とマッチしている感じがいいですね!
「パールグレーとオックスグレーの2色ですね。“ごま塩調”というか“ソルトアンドぺッパー調”の特徴的なグレーはあまりほかのブランドでは見ないですね」
―90年代には、ラグランスリーブとボディーで色が違う、2トーンのアイテムが
あったと思ったんですが、このカタログにも最近のラインナップにもないですね。
「昔は“クレイジー配色”のアイテムもあったと聞きましたが、今はもうないです」
日本企画製品は「アクティブウェア」
―カナダのブランドを取り扱っている日本の店舗はどのぐらいあるんでしょうか?
「カナダのラインを取り扱っているお店は実は限られていて、10店舗程だと思います。日本企画のものと比べてカナダ産のものは値段も高いので、どこででも買える商品ではなくなってきていますね」
―「gym master」のスウェットは長く着古すと独特な風合いでいい感じになるので、ビンテージや昔ながらのアメカジが好きな人にはオススメですよね。
「取り扱い店のバイヤーさんのなかでも『10年着ています』という方がいて、その方が丁寧に着ているせいもあると思うんですけど、全然キレイで生地的にも全然よれてなくて、『タフなんだなぁ』と思いましたね」
―タグは昔からこのフクロウのマークですか?
「これは昔からデザインは変わっていなくて、ただ日本から発注した分はオレンジのタグになっています」
―そうなんですね! 日本に出荷する分はオレンジタグなんですね。この歴史ある商品たちはどのようなセールスポイントで販売されているんでしょうか?
「サイズ感も、昔ながらの雰囲気も壊さないようにつくり続けています。店によって違うとは思いますが、定番としてシンプルで長く着ることを想定して販売されていると思います」
―次は「インライン」と呼ばれる日本企画の商品のお話をお聞きしたいです。ざっくりとしたイメージなのですが、アウトドアティストを感じますね。インラインはそのあたりがテーマなんでしょうか?
「インラインはネームのロゴの下に『アスレチック&ウェア』と書いてあって、もともとはアクティブ着から始まっています。ちょうどアウトドアブームとコンセプトが重なってきて『gym master』のインラインにアウトドアっぽいイメージをつけたということになります」
―最近のアウトドアブームによってメディアとかお客さんの希望もあってよりアウトドアのイメージが強く押し上げられてると思うんです。例えば「パタゴニア」だって、アウトドア着もあればそのほかのスポーツ着もあるので、大きな枠の中で「アウトドアに使えるアイテムもあるよ!」という認識ですか? カナダ産のオリジナルアイテムは揺るぎないスウェットブランドで、日本企画のインラインに感じては「アクティブウェアだよ」ってことですよね? 近年は機能素材だったり、今っぽいシルエットだったりと、ちゃんと日本のニーズにあったものをリリースされていますね。
「確かに『アクティブウェア』という表現は素敵ですね。そのアクティブウェアのなかのアウドアやスポーツっていう認識でとらえていただけるとよいと思います。日本企画のインラインは、ひとつのコンセプトとしては普段着として着られて、洗濯もイージーケアでどんどんできて、それでもよれなくてコストパフォーマンスが良いものを考えてつくっています。カナダ産のスウェットは10,000円ぐらいでインラインは5,900円くらいなので、“半額”とまではいわないけど、購入しやすい。でもちゃんと長く着られるアイテムになっています」
日本企画商品(インライン)×カナダ産ラインの
オススメな着こなしを教えて!
―最後に今のトレンドが入った「gym master」のインラインとカナダ産のラインを
ミックスしたコーディネートを何スタイルか見せていただけますか?
向かって左
TOPS:スウェット ラグラン ベーシック クルー 11,880円
BOTTOMS:ストレッチスラブ モンスターポケット パンツ 5,390円
中央
TOPS:スウェット ラグラン プルオーバーフーデッド 14,080円
BOTTOMS:ロクヨンクロス ロングパンツ 7,590円
向かって右
TOPS:スウェット ラグラン プルオーバーフーデッド 14,080円
BOTTOMS:ストレッチオレンジフェイスガーデニングパンツ 8,690円
―歴史や背景のあるカナダ産アイテムとトレンドを取り入れた日本企画アイテム。異なるテイストが同じブランドにあり、合わせると不思議とどれもぴったりはまる。これはほかにはない魅力だと感じました。本日はありがとうございました。
▼取材協力
グランド・ワン
〒160-0017
東京都新宿区左門町2グランドール四谷203
TEL:03-3358-1652
公式サイト https://www.grand-one.co.jp
-
▼話を聞いた人
伊藤孝法
-
1973年北海道生まれ。中目黒の老舗セレクトショップOUTPUTオーナーで、さまざまなブランドのPRなども手掛ける。2014年、WWD日本のファッショニスタ100人にも選ばれ、自身のYOUTUBEチャンネル「ファッションとカルチャーとme」も更新中。