南極仕様の国産ダウン「ZANTER(ザンター)」工場で見た!日本が誇る究極の服作り
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    ファッション

    南極仕様の国産ダウン「ZANTER(ザンター)」工場で見た!日本が誇る究極の服作り

    2021.12.17

    日本で初めてダウンジャケットをつくり、南極仕様のダウンも手掛ける「ZANTER JAPAN(ザンタージャパン)」をご存知でしょうか。1956年から現在まで、日本の南極観測隊へのダウンウェアを提供し続け、そのスペックはマイナス60度にも耐えられるほど! まさに日本が誇る究極の防寒着といえる存在なんです。現在はタウンウェアや部屋着まで幅広く展開しています。

    今回は、中目黒の老舗セレクトショップ「OUTPUT」のオーナー伊藤孝法氏が、自らのショップにも展開するZANTERダウンの神奈川県・大和工場を直撃。その歴史やダウンづくりの工程、人気商品について聞いてきました! ハイスペックかつお洒落なダウンをお探しの方は必見です。

    取材:TAKANORI ITO

    ZANTERと南極観測隊の歴史とは?

    神奈川県・大和市にあるZANTERの工場

    ー極寒冷地用作業服をつくる会社としてスタートしているZANTER社。そもそも、どんな経緯で南極観測隊のダウンをつくることになったのか。ZANTER JAPANの営業課長、比多賀さんに聞きました。

    ZANTER JAPAN営業課長 比多賀さん

    ZANTER JAPAN営業課長 比多賀さん

    「先代社長が亡くなっているので、実は当時の詳しい話はわからないのですが……もうずっと、ZANTER社にデザインやスペックなどいろいろと一任されていますね。

    今発売しているダウンパーカーJPの原型も、南極観測隊のものです。マイナス60℃まで耐えられるので、世界で一番寒い村に行くというTVの企画にも採用されました。当時使っていた生地そのものは不明ですが、その頃は素材にナイロンではなく綿を使っていたんですよ」

    ー綿のダウンで極寒の南極に行ってたんですか⁉ それは凄い。

    「ほぼ同時期に、マナスル登頂に挑戦する日本の登山隊のダウンもつくっていて。傘の生地が雪山に良いのでは? ということで傘のナイロンを試してみて、そこから登山にはナイロンというのが広まっていったらしいです(※諸説あります)」

    ーなるほど、そういった経緯が!それは、歴史がありますね。

    ダウンパーカーJP 南極観測隊モデル(参考価格:110,000円)

    究極のダウンはどうやってつくられる?

    ー工場でのダウンの製造って、何人体制でどんな風につくられていくんですか?

    「直営工場と岩手の提携工場合わせて、100人位ですね。デザイナーとパタンナー、縫製する人、商品管理など、すべて日本人で構成しています」

    「まず、デザインとパターンが上がってきます。ダウンは量があるので、サンプルをつくってみないと分からないことも多くて。“ふくらみ”も製品によって違うため、ダウンが何グラム入っているか色分けされた、“ふくらみ座布団”を使って決めていきます」

    ダウンのグラム数ごとに色分けされた“ふくらみ座布団”

    ダウンのグラム数ごとに色分けされた“ふくらみ座布団”

    「どの部分に何グラム入れるかも決めていて、手作業で入れていきます。入れたダウンを手で均等に慣らして縫い目をつけるのもなかなか難しくて。基本的に手作業は直営工場で、量産の縫い合わせは岩手の提携工場でやって、行ったり来たりを繰り返し、一着できるまでに約1か月半かかりますね」

    ー完成まで1か月半もかかるとは……まさに職人の腕の見せどころですね。ダウンの素材にはどのようなこだわりがありますか?

    「ZANTER JAPANの国内縫製品は、ダウン90%、フェザー10%で統一していて、表地にはハイテクナイロンも使います。あと、ちょっとストーリーのある約60年前の生地なんかも使っていますね。このデッキジャケットは、1956年の縫製企画書が出てきて、それを元に型紙を起こしてつくりました」

    1956年の縫製企画書を元につくられたデッキジャケット

    ー実際に工場で製造に使用している機械や、羽毛を入れる部屋も見せてもらいました。どの工程も本当に手間がかかっていますよね。

    「これは生地の通気度を測る機械です。通気性が良すぎてもダウンの羽が出てしまうので、これを使ってしっかりと生地のテストをします」

    「ここが羽毛を入れる部屋です。パーツごとに決まったグラム数を手作業で詰めていきます。例えば17パーツあるダウンジャケットだったら、コレを17回繰り返して、やっと一着分の完成です」

    「そして、この部屋に置いてあるミシンで、新作やコラボアイテムなどのサンプルを縫っています」

    ー南極観測隊のほかにも、サポートしている人がいるんですよね。

    「冒険家の荻田泰永さんに、北極に行くときのダウンを提供しています。ベンタイルコットンという古くからある機能素材でつくったダウンです。ナイロンだと物によって生地が凍ってしまうことがあったりするので、場合によってはコットンが良いみたいです。でも、北極でもすごく汗をかくから寝る時しか着ていないとか」

    ー北極でも汗をかくって……本当に凄いダウンなんですね。

    プロ仕様のノウハウを落とし込んだタウンウェア「ダウンパーカーWP」

    ーZANTERのタウンウェアについても聞かせてください。定番人気の「ダウンパーカーWP」などは、どのような経緯でつくられたのでしょう?

    「古くから得意としてきたプロ仕様のノウハウを、タウン用に落とし込んで良質なダウンをつくろうというコンセプトでブランドが始まりました。それで完成したのがZANTERJAPANの定番アイテム『ダウンパーカーWP』です」

    ーこの「ダウンパーカーWP」はデザイン性も高いですよね。シルエットや大きな内ポケットなど、細部まで並々ならぬこだわりを感じます。

    「ありがとうございます。最初はアウトドア屋さんとか釣り屋さんに卸していましたが、おかげさまで徐々にアパレルブランドとのコラボレーションや別注が増えてきて。現在の枝葉はファッションブランドの方向に伸びて行っています」

    ZANTER JAPANの定番アイテム「ダウンパーカーWP」

    ZANTER JAPANの定番アイテム「ダウンパーカーWP」(参考価格:80,300円)

    ー海外でも売り始めていますが、今後の展開など決まっていることはありますか?

    「今はアメリカ、オランダ、上海、香港、オーストラリアなどで展開しています。まだこれからの話なのですが、WPモデルに変わるような新定番アイテムを考えています。あとは、もう少し手軽に買えて気軽に使える、インナーダウンというか軽ダウンジャケットみたいなものなどもですね」

    ープロ仕様のアイテムが、タウンでより手軽に使えるようになるのは期待大ですね。これからの展開も楽しみにしています。本日はありがとうございました!

    職人技を駆使し、手間暇かけてつくられる国産ダウンの最高峰、ZANTERダウン。その品質とスペックの高さは、今回お届けしたとおり。ハイスペックかつデザイン性に優れたダウンをお探しの方はぜひチェックしてくださいね。

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    • 伊藤孝法
    • ▼話を聞いた人

      伊藤孝法

    • 1973年北海道生まれ。中目黒の老舗セレクトショップOUTPUTオーナーで、さまざまなブランドのPRなども手掛ける。2014年、WWD日本のファッショニスタ100人にも選ばれ、自身のYOUTUBEチャンネル「ファッションとカルチャーとme」も更新中。

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