鍛え抜かれた身体にジャケットをスタイリッシュに着こなす西川貴教さん。徹底した肉体管理、健康維持を20年以上続けているという西川さんの日課は、「1日5kmのランニング」だという。
「フィットネスのエビデンスは毎日変わるので、肉体管理 に効果があると言われている動きや、健康維持に良いとされていたサプリメントが、1年も経たないうちに逆のことを言われることも多いんです。そんななかで『ランニング』は変わらず有用性があるとされているので、僕にとって長年、食事や歯磨きと同様の習慣になっています。あまり長時間走り続けてもストレスホルモンが分泌されるし、長距離を走れる体にするよりも皮下脂肪を燃焼させることに注力しているので、心拍数120前後を維持する“ランニングとウォーキングの間”くらいの“早歩き”で行うようにしています」
性格的には「モノに固執するほうではない」という西川さんだが、毎日のランニングのために、毎年注目してしまう“モノ”がある。
「毎年、スニーカーの機能がアップデートされていくんですが、最初は『毎年買い直す必要あるかな?』と半信半疑だったんですけど、実際試してみると前年よりさらに履きやすいし軽いし走りやすいものが出てくる。2024年1月リリースの『ナイキアルファフライ 3 プロト』を早速購入したんですが、これがすごい。かかとの部分が削られていて前傾になりやすいんです。毎日使うものなので、スニーカーの進化はついつい追ってしまいますね」
TVアニメ「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」(2002年〜2008年)ではT.M.Revolutionとして楽曲を提供、声優としても出演。思い入れのあるこの「ガンダムSEEDシリーズ」の最新作、公開中の『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』では主題歌を担当。その曲の入ったシングル「FREEDOM」は「オリジナルガンプラ」付きの完全生産限定盤も発売した。
「ガンプラブームの渦中だったのが、僕の子ども時代。そんな時代を過ごした自分がまさかガンダムシリーズに出演して、よもや専用機が持てるとは思ってもみなかったので、感無量でした。そういったこともあって、今回特殊な素材を使った素晴らしいクリアタイプ(ポラライズドクリア)の『フリーダムガンダム』を付属した形態も発売しました」
楽曲「FREEDOM」は小室哲哉氏が作詞・作曲・プロデュース。小室さんと西川さんのタッグは意外にも“初”となる。西川さんの力強く艶やかな声で始まる、果てしない奥行きを感じさせる壮大なナンバーだ。
「小室さんが所属しているバンド、TM NETWORKと共通のスタッフがいたことからT.M.Revolutionは始まったので、今回はご先祖と一緒に仕事をさせていただいた思いです。最近のヒット曲はトータル3分くらいで、テンポが早くて歌詞にワードが詰め込まれているものが多いなか『FREEDOM』は5分以上あって、“言葉とメロディーを届ける”ことに注力したナンバーだと思います。不思議な魅力があって何度も聴いて口ずさむうちにどんどん世界観が見えてくる」
2006年に映画版の制作が発表され、その後は長らく続報が途絶えていた劇場映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、実に約18年の月日を経て完成に至った。
「作品と寄り添う形のものを小室さんと1から制作していったのですが、こちらが込めた思いを監督から作品を通して返していただくというリレーができた作品になりました。みなさんに18年という月日をお待たせした以上、冒頭で流れる主題歌には作品を作った人間、関わった人間がどんな思いをこの作品に込めているのかを刻む必要がある。それを表現した結果が今回のアプローチで、歌唱については僕がどうしようと考えたというより、自然と楽曲に引っ張られてこういう形になった気がします」
昭和で視聴者として『機動戦士ガンダム』に出会い、平成でTVシリーズ『機動戦士ガンダムSEED』に初めて携わり、そして令和で再び映画シリーズに名を連ねた西川さんにとって、ガンダムシリーズとはどんな作品なのか。
「キャストのみなさんのフレッシュな表現力もあって、作品は年月の経過をを全く感じない、地続きになっている印象を受けました。『機動戦士ガンダムSEED』以前では、ポピュラーミュージックのアーティストが楽曲を提供する際は、作品の内容やテーマ性とは多少、乖離したものがあったように思います。この20年で『一度でいいからアニメの主題歌を担当したい』というアーティストも増えてきた。キャストのみなさんを交えたイベントだったり、TVアニメの1クールずつで主題歌を変えて物語を紡いでいくシステムだったり、今ではあたりまえになっているものをゼロから作り上げた作品が『機動戦士ガンダムSEED』だと思うんです。
僕自身もアニメやコミック、ゲームが好きな人間なので、この作品を機に主題歌を提供するだけではなくて、作品の世界観を踏襲しながらアーティストとして表現し、聴く人に届けたいという思いが強くなりました。これ以降多くの作品に携わらせていただけるようになりましたし、転換期となった作品だと思っています。社会情勢も変化して、僕らの時代に観ていたアニメの中で起こっていたような事態も、現代では架空のものではなくなってきている部分もある。今後もアニメという舞台を使って、その時代だからこそ届けられる楽曲を発表していけたらと思っています」