話題作への出演が続き、競争の激しい若手俳優陣のなかでも、ひと際、存在感を示している杉野遥亮さん。ドラマ「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」の撮影がクランクアップして間もない12月の某日、インタビューが行われた。まだ経験したことはないが、ソロキャンプに興味津々だという。
「最近まで、仕事モードのスイッチがなかなか切れなくて、興味がすごくあったのに、実現できなかったのが、ソロキャンプです。目の前の仕事に集中してしまうタイプなので、なかなか趣味の時間を作るのが難しいのですが、もし休みが作れたら、行ってみたいと思っています。せっかくならこだわりの道具を買い揃えてから行きたいと思います。一度、雑誌の企画でキャンプ場に行って撮影をしたことはあるんですけど、実はプライベートでは行ってことがないんです。でも、とても興味があります」
もし、ソロキャンプデビューが叶ったら、焚き火をしながらゆっくりオフを満喫したいとか。
「都会だと人も多いですし、仕事もありますから、自分と向き合う時間を作るのが難しい面もあります。だから、自然のなかで火を見ながらボーッとできたら、最高ですね。無になれる空間や時間への憧れがあります。キャンプではバーベキューなど食を楽しむというより、精神的な癒しを求めたいな。あ、でもマシュマロは焼きたいかも(笑)」
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また、キャンプでの新しいアクティビティとして人気が高まっているサウナテントにも心惹かれるものがあると杉野さん。
「俳優仲間の間でもサウナは流行っていて、コロナ前は、よく誘われて行っていました。自分自身のことがわからなくなったり、考えを整理する術を知らなくて、サウナですっきりすることでモヤモヤを解消していたようなところがあります。コロナ禍になって足が遠のいたのですが、サウナテントも一人用のタイプがあれば、体験してみたいですね」
当然、“ととのう”も体験済みだ。
「みんなと同じ感覚かどうかはわかりませんが、自分なりの“ととのう”を経験したことがありますよ。一緒に行く友だちがサウナを熟知していて、それに倣って入っていたら、あるとき、ボーッとするような快感が襲ってきて、これが“ととのう”なのかなと思いました。サウナでリラックスしようと思って来たのに、かえって覚醒して、寝れなくなっちゃうこともあるんです」
売れっ子のため、次から次へと仕事が舞い込む。しかも、現場では自分ではない誰かを演じなければいけない。そのため自分を見失わないよう、リラックスして自分に戻れる趣味や時間を大切にしているという。
「家では、ボーとして過ごすことが多くて、あまり特別なことはしていません。ゆっくり寝られる時間があるなら、いつまでも寝ますし、シンプルな生活です。リラックスするために特別なことをしようとすると、気になってもうリラックスしてないじゃんと思ってしまうタイプなので。ただ、最近は好きなものや、自分に戻れるものを見つけたいなと思うようになってきました。俳優という仕事は自分自身のことがわかっていないとできないと思うし、仕事をしていると知らず知らずに軸がぶれていたり、本来の自分とかけ離れてしまったりすることがあります。昔は戻し方がわからず、心が行ったり来たりして、自分を見失いそうになることがありました。コロナ禍で自分と向き合う時間が増えたおかげで、いまやりたいこと、やりたくないことを精査して、かなりクリアになってきました」
モデル業から演技の世界に足を踏み入れた当初は、演じることへの照れや恥じらいもあり、やっていけるのか不安もあったというが、現場を重ねるごとに俳優業への覚悟が決まっていったという。更なる飛躍のため、仕事に真摯に向き合っている杉野さん。2月11日からスタートする「ミロ展―日本を夢みて」の展覧会ナビゲーターという仕事について尋ねると、真っ先に表現者へのリスペクトを口にする。
「表現というのは、その人の内側からでてきた、人生の苦しさや楽しさが詰まっています。だから、作品を描いている人にはリスペクトしかありません。模倣したり、ましてや、作品を解釈したり、趣味にすることすら、おこがましいと感じてしまいます。簡単に足をふみいれてはいけない世界という思いがあります。ミロも、自分の表現に対して、自信を持ち、堂々としているところは、素敵ですし、尊敬できます。やっぱり作品が世間に受け入れられるかどうかは結果でしかありませんから。自分がやりたい表現を追求していくことが、アーティストの道なんだと刺激を受けます」
ジュアン・ミロは、ピカソに並ぶ現代スペインの巨匠として知られる芸術家だ。杉野さんが人生で初めて訪れた異国の地がスペイン。テレビ番組のロケで約1週間、サグラダファミリア大聖堂が見えるアパートで過ごした。そんな縁で繋がっている。
「番組は美術館や遺跡を周るような内容ではなかったのですが、街自体が芸術的でした。日本では考えられないような景色のなかで暮らすという体験は、刺激的であり、不思議な感覚でした。スペインという土地の開放的な雰囲気も自分に合っていたと思います。いろいろな人のことをみんなが個性だと尊重していて、居心地が良いところだなと感じたのをよく覚えています。これが芸術の街で、表現の自由とはこういうことなのかと、今になって思います」
そんな刺激を杉野さんに与えたスペイン・バルセロナという街。この地で生まれた巨匠のアート展が、2月11日からはじまる。最後に見どころ語ってくれた。
「こういうところを見てほしいというのはなかなかいえないです。なぜなら、楽しむ方法はとそれぞれだから。極端にいえば、作品を見て、ピンとこなくても問題ないと思います。わからないというリアクションも心が動いたという点では感動と同じです。とにかく、何かを感じることが大事だと思います。そのためには、まずは触れてみること。先行きの不透明なこんな時代だから、本質や大切なことって芸術のなかにあると思っています。だからこそ、アートに触れたり、アンテナを張ってみることで、人生がより豊かになるのではないでしょうか?」