KREVA
GOODA 10周年号 スペシャルver.

【KREVAインタビュー】歌詞を導くボールペン 文房具は曲への通過点

Interview KREVA
Photos:TATSUYA YAMANAKA(Stanford)
Text:HIROMI YAMANISHI(HISTOREAL)2022.2.15
大人の好きなモノ語り
2021年末の「NHK紅白歌合戦」では、石川さゆりさん、MIYAVIさんとのコラボで話題をさらい、バラエティ番組では“HIP HOP×文房具”の不思議なグルーヴを主張しインパクトを残した、KREVAさん。今回はお気に入り文房具の最新バージョン、配信チャート1位を記録したアルバム「LOOP END / LOOP START」のデラックスエディションについて、そして2022年が始まった、“今”の音楽に対する思いを語ってもらった。
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どのペンを買うかは、「歌詞を書きたくなるか」どうかに直結する

2021年8月に放映された、バラエティ番組「マツコの知らない世界」では、「文房具の世界」をプレゼン。「黄色黄色黄色」「緑緑緑」と店内に整然と並ぶ文房具にHIP HOPの「ループ感を感じる」と、そのシンパシーを力説していたKREVAさん。その放送で紹介された、「エナージェルインフリー」「ユニボールワン」などを編集部でも購入。確かにその書き味は爽快でクセになる。その放送から半年が過ぎ、KREVAさん最新のお気に入り文房具を聞いた。「最近おすすめの文房具は?」と聞くや否や、おもむろに自身のバッグから3本のペンを取り出した。

「『マツコの知らない世界』では『ユニボール ワン』を紹介したんですけど、今は昨年9月に出た『ユニボール ワンF』が気に入っています。最初は『カラーバリエーション違いが出たな』くらいに思っていたんですが、そうじゃなくてペン先が金属製になっているから、低重心で書き味が一層なめらか。紙の上にインクが乗って軽い力ですらすら書けるし、『これで歌詞が書きたい!』って思いました。なんで全色買わなかったのか、今、後悔しています(笑)」

放送では「マッキー」を使って、歌詞を書くとも語っていた。その話に及ぶとKREVAさんはまたバッグに手を突っ込み、次なるペンを取り出してきた。

「ストックしてある裏紙に歌詞を書くことが多いんです。誰かに見せる段階のものではないので、殴り書きしても耐えられる強さと太さが重要。今は『ユニボールワンF』も使っていますが、以前はペン先が太くて力を入れて書けて、リズムが出やすいサインペンが主流だったんです。僕が買ったサインペンの中でも一番高価なのがこれ、ゼブラの『フィラーレ ディレクション』で、2000円くらい。見た目も高級感があり、ペンの軸をひねってペン先が出るサインペンというめずらしいタイプで、替え芯もある。出会った瞬間『これ、絶対歌詞いける!』と(笑)。買ってすぐ歌詞を書きましたね。やはり僕はどんなペンを買うかは、歌詞を書きたくなるかどうかに直結する」

ユニボール ワンF、フィラーレ ディレクション

そして再び、バッグに手を差し込んだKREVAさん。「今、一番、自分的にきているのはね……」の声に、スタッフ一同「まだあるのか?」と身を乗り出す。

「この研恒社の『スライドノート』、ショールームで見つけて速攻買ったんです。謳い文句は“スライド式リングレスノート” 。引っ張ってスライドしてみたら、その気持ちよさがわかる! 12種類の用紙があって、好きな用紙を選んで買ってファイリングできるんです。めちゃくちゃかっこいいなと思って、今、スケジュール帳サイズとA4サイズを両方使っています」

スライドノート

自身の子供たちの文房具購入に出かけたとき、自分の文房具愛が顕在化したというKREVAさん。GOODA読者世代にもそのおもしろさを感じて欲しいという。

「コンビニで売っている文房具も悪いものじゃないけど、ちょっと探せば、同じくらいの値段でもっと“書いてみたくなる”自分にぴったりのペンが出てくる。僕も別に字や絵が上手なわけではないけど、『このペンならいける』と思うことがあるんです。日々の生活がちょっと変わるので、試してみて欲しいですね」

「文房具の他にはまっていることは?」の質問には、しばし考えてから、「テキーラ」という答えが返ってきた。

「お酒は『テキーラハイボール』しか飲まないといっていいくらい。アルバム収録曲の『All Right』にも『とりあえずテキーラハイボール』という歌詞も入っています。テキーラといっても『プレミアムテキーラ』のみ。テキーラはアガベという世界で唯一、緑の植物からつくられるお酒なんですが、普通のテキーラは“ミクスト”といって、いろんなものが混ざっているんだけど、プレミアムテキーラはアガベ100%でつくられたもの。悪酔いは絶対しないし、自分にはすごく合っている。ハイボールとの割合は、必ずきちんと分量を測って割っています」

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「それしかない」という思いで、音楽制作に向き合っていた

2013年6月18日に日本記念日協会に正式認定された、9月8日は“908=クレバの日”。2021年のこの日には、配信限定で2年ぶりのニューアルバム「LOOP END / LOOP START」がサプライズリリースされ、オリコンデジタルアルバムランキング、ビルボードジャパンダウンロード・アルバムチャート共に1位を記録した。改めてこのアルバムを、今回CDとしてパッケージ化した思いを聞いた。

「正直自分はそこまでCD化にこだわってはいなかったんですけど、思っていた以上にファンの方々から『CD化して欲しい』という声があがったんです。それは素直にうれしかったですね。チャート1位を取れるとは思っていなかったので、いわば“たなぼた”で。音楽仲間や近しい人たちからも『いいアルバムだ』と言ってもらえたことは、それ以上にうれしかったです」

配信アルバム「LOOP END / LOOP START」は、日々変化していく世の中の状況、繰り返される不安と希望が表現された作品だ。今回「LOOP END / LOOP START(Deluxe Edition) 」としてパッケージ化するにあたり、その後に制作された、新曲が2曲追加される。

「少し前、『東京の感染者ゼロ、いけるかも⁇』みたいな状況のときもあったと思うんです。もしかしたらこのアルバムの曲を近々ライブで披露できるんじゃないか? でもまた戻ってしまうかもしれない……。アルバムタイトルと同タイトルのナンバーは入ってなったので、そんな思いで改めて今回つくったのが、『LOOP END / LOOP START』という曲。もう1曲はその『ライブができそうかも?』という気持ちのときにつくった曲で『クラフト feat. ZORN』という、“ものづくり”について歌ったエモーショナルな熱いナンバー。このアルバム自体も、ものづくりにフォーカスしてつくった作品なんです」

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作詞、作曲、トラックメイク、ラップ、プロデュースの全てを自身で行っているこの作品。ライブの開催が不安定なこの時期、KREVAさんの気持ちは、“ものづくり=音源制作”に向いていたのだろうか? 文房具のときのにこやかなKREVAさんと打って変わって、今の音楽を取り巻く事情の話になると表情は硬い。

「気持ちが制作にいっていたというよりも、もう“それしかない”という気持ちで、正直言うと前向きなものではなかったですね。オファーがあって、準備をして世の中に出る前になくなった企画もいくつかあって、そんなことを繰り返すことで日々鬱々としていた。大きな事務所ではないわけだし、これを繰り返していたら潰れちゃうって。ひたすらスタジオにいて、とにかくつくり続ける。自分でつくるばかりで、他の人の音楽も聴かなくなっていたくらい」

それでも、走り出したばかりの2022年。冷静な気持ちで、未来を受け止める準備はできているという。

「ひたすら曲づくりをしていたことで、今更ながら、曲のつくり方のコツをつかんできたので、その状態を逃したくないというのもある。2022年は1か月以上過ぎましたけど、これからどうなるかは誰もわからない。もうやれることは全部やろうと思います。行けるところまで行こう、今はそう思っています」

衣装協力:YOHJI YAMAMOTO(TEL 03-5463-1500)/IVXLCDM(TEL 03-6455-5965)/ルックスオティカジャパン(フリーダイヤル 0120-990-307)
Profile
KREVA

クレバ●1976年神奈川県生まれ。1997年KICK THE CAN CREWを結成、2004年に活動休止後、同年9月08日(クレバの日)に『音色』で、ソロメジャーデビュー。2ndアルバム『愛・自分博』でHIP HOP ソロアーティストとして、史上初のオリコンウィークリーランキング初登場1位を獲得。またアジア人初のHIP HOPアーティストとして『MTV Unplugged』など、“初”の肩書きを多く持つ。2012年よりKREVA主催の“音楽の祭り”「908 FESTIVAL」を開催。2022年は「908 FESTIVAL 2021+1」として、2月17日〜19日の3日間開催。また20日には+αとしてAFTER TALK SHOWも予定されている。

Information
KREVA「LOOP END / LOOP START」

KREVA
「LOOP END / LOOP START
(Deluxe Edition)

6908円(完全生産限定盤A 2CD+DVD)
3908円(完全生産限定盤B 2CD)

2月16日発売 スピードスターレコーズ

2021年の「クレバの日」こと9月08日に配信限定でサプライズリリースされた、2年ぶりのニューアルバムに新曲2曲を追加、インストゥルメンタル16曲を追加した全32トラック収録の2枚組。完全生産限定盤Aには、2021年7月にビルボードライブ東京で開催された、有観客ライブ「KREVA in Billboard Live Tour 2021」で披露された、全15曲のライブ映像が収録されたDVDをセット。

KICK THE CAN CREW「THE CAN」

KICK THE CAN CREW
「THE CAN」

5500円(完全生産限定盤A CD+Blu-ray)
4400円(完全生産限定盤B CD+DVD)
3300円(通常盤 CD)

3月30日発売 スピードスターレコーズ

KICK THE CAN CREWは1997年KREVA,LITTLE、MCUの3MCで結成されたヒップホップグループ。2001年シングル「スーパーオリジナル」でメジャーデビュー。これまでにシングル16枚、オリジナルアルバム4枚をリリース。この度、3月30日に発売される通算5作目のオリジナルアルバム『THE CAN』には、現在配信中の新曲「Boots」を含む全11曲を収録。3MCのクリエイティブな化学反応が炸裂したニューアルバムが遂に登場。