

ファッション
THE COLLECTORS 古市コータローの音楽と古着をつなぐ“遊び心”
2022.11.21
日本が誇るモッズバンド、THE COLLECTORS(ザ・コレクターズ)のギタリストとして35年以上止まることのない活動に加え、ソロアーティストとしても活動している古市コータローさん。多忙な日々と並行して、2017年に東京・目白にオープンさせたのが、自身のプロデュースによる古着店「DUST AND ROCKS(ダスト アンド ロックス)」だ。音楽活動と古着ショップを両立できる、モチベーションの理由について聞いた。
撮影/屋山和樹(BIEI) 取材・文/山西裕美(ヒストリアル)
洋服は自分で「いい」と思ったら、絶対に似合うようになってくる
――「DUST AND ROCKS」は、ご実家を改装して2017年にスタートしたそうですね。
「母がデザイナーで、オートクチュールの店をやっていたんです。母の引き継ぎというわけではありませんが、前から古着が好きだったし、この場所で僕も洋服に関することをやってみたいなと思うようになりました」
――オープンにあたり、どのようにしてアイテムを揃えていったのでしょうか?
「最初は知り合いのディーラーさんから品数を揃えて、その後は自分でロサンゼルスへ買いつけに行くようになりました。例えば、僕が1980年代に1万円で買ったジーパンが下手をすると、今は10万円くらいの相場になっているんです。昔の物はもう弾数が少なく、ロサンゼルスでも『リーバイス501』があるだけで結構奇跡だったりしますから。困ったなと思って、現地の知り合いに探してもらって、オープンに間に合うようリーバイスのデッドストックを50本くらい集めてもらいましたね」

――ミュージシャンをやりながら洋服の買いつけも行うというのは、大変ではないでしょうか?
「好きなんですよね、きっと。嫌いなことだったら大変でしょうけど。体育館5個分くらいの広さの所で一日中洋服を見ているわけですけど、苦にはなりません。アナログレコードをあさっている時の感覚と似ていますね」
――DUST AND ROCKSは「遊び心あふれるヴィンテージ古着」を扱っているとのことですが、コータローさんにとっての、“洋服における遊び心”とはどんなものでしょうか?
「極端な言い方をすると、古着屋をやっていること自体が“遊び”なんです。もちろん遊びだけでは回らない世界ですが、自分としては遊びでやっているという感覚が強くないとちょっとつらいですね。古着の知識は昔からありますが、逆に最近の古着の知識はあまりない。だから、やりながら学んでいる感じです」
――ご自身では、どのようなアイテムを選ぶ傾向が強いのでしょうか?
「自分は着ないけど、周囲の人に『こういうのを着てほしいな』という物とか。女性のワンピースなんかは、知らないうちに自分の好みが出ていると思いますね」

――古着だけでなく、ブランドやキャラクターとのコラボなど、オリジナルアイテムも多いですね。
「最初は古着ばかりで、オリジナルアイテムはTシャツくらいしかなかったんです。でも、新型コロナウイルス感染症が広まってから、来店されるお客さんが減りました。古着は基本的にネット上で売る物ではないので、オリジナルアイテムをつくってWEBで販売するという発想にしないと継続は不可能でした」
――オリジナルアイテムは、どんな人を対象につくることが多いのでしょうか?
「対象の限定はしていません。僕も年甲斐もない格好をしちゃいますし。『もう年齢的にダメかな』とか、ためらう人っているじゃないですか。それはぜひやめてもらって、ちょっとでも“いい”と思ったら着てみて欲しいですね。自分でいいと思ったら、洋服って絶対、似合うようになってくる。
よく言われていることですが、帽子は絶対一人で買いに行かなきゃダメなんですよ。例えば誰かと一緒に行った時に帽子をかぶって見せても、知り合いはその姿を見慣れていないから、『似合わない』っていうんです。でも、店員側から見ればすごく似合っているんですよ。自分が着て『なんかいいじゃん』と思うなら、それでOKじゃないかなと僕は思います」

――トライしてみないことには、選択肢も減る一方ですよね。
「『似合わないんじゃないかな』とビビることが一番もったいないと思う。自分がピンときた物は、絶対に似合いますから」
――ショップ名のDUST AND ROCKSについて。ロックミュージシャンがプロデュースするからには、“ROCK“という言葉を入れたいという思いがあったのでしょうか?
「店舗名の由来は、ポール・ウェラー氏(英国出身のミュージシャン)の曲のタイトル、『ダスト&ロックス(2000年発売のアルバム『ヒーリオセントリック』に収録)』です。ギタリストのChar(チャー)さんが以前に冗談で、『自分がスナックをやるんだったら、“Smoky”(1976年リリースの自身の代表曲)にする』っておっしゃっているのを聞いて、『僕もスナックをやるんだったら、名前は“ダスト&ロックス”に決めているんだよ』という話をいつもしていたんです。スナックではなく古着屋になりましたが、なぜかこの言葉の響きが好きで、気に入っていました」
ファッションも含めて好きにならないと、音楽も100%心酔できない

――THE COLLECTORSは、近年では2年くらいで新譜を出されています。長くバンド活動を続けるためには、やはり新譜が必要だと思われますか?
「新譜なしでただライブをやっていても……、とは思いますね。新譜を出すのは曲をつくる人間も大変だろうし、演奏する側も精神的に気を使うヘビーな作業ではあります。新譜づくりをやめてライブだけをやっているバンドもありますが、何年も新曲がないライブを続けるのはつらいですよね」

――つくり続けなくてはいけないという気持ちもありますか?
「そうですね。それが自然なことなんでしょうね、ミュージシャンとしては」
――最近では、1曲の長さが短くなっていたり、前奏やギターソロを飛ばして聴く人が多くなってきたりといった話を聞きますが、25枚目のアルバム「ジューシーマーマレード」では、現代の傾向に寄り添った部分はありますか?
「一切ないですね、僕としては。でも、メンバーはそれぞれ自分らしさを追求したと思います。僕は何も考えないで、曲のムードに引っかかるギターを弾いた感じ。狙うとろくなことがないので(笑)。ギターソロもありますけど、全然飛ばして聴いてもらってもいい。爽やかさも狙っていないし、『聴いてくれ』っていうプレイもしていないし。僕のギターはイギリスでいえばロンドンっ子、日本でいえば東京っ子なのかもしれません。こういうとき、頑張りすぎない自分がいますね」
――アルバムには久しぶりにコータローさんがボーカルを務められた、「負け犬なんていない」が入っていますね。2013年発売のアルバム、「99匹目の猿」収録の「ごめんよリサ」以来でしょうか。
「そうかもしれませんね。ボーカリストの加藤(ひさし)さんに、『今回歌う?』って聞かれて、『どっちでもいいよ』という感じでした。簡単そうに聞こえるかもしれませんが、加藤さんのつくる曲は独特だから、歌うのが難しいんですよ」
――THE COLLECTORSのアーティスト写真やジャケット写真のファッションは、どうやって決めているのでしょうか?
「若い頃だったらメンバーみんなで考えて、『イメージをつくろう』とか思うかもしれないけど、もういい年齢ですからね(笑)。ドラムスの古沢 ‘cozi’ 岳之なんて、『洋服には一切興味ない』って断言していますから。まぁ、『こういうのを着れば?』ってアドバイスをすることはありますけど。みんな好きなものを着ている感じも売りになるのかなと思います」

――ご自身では、表現したい音楽にファッションは重要になってきますか?
「そうですね、ほかの人の音楽でもそうだな。やっぱりそのアーティストのファッションも含めて好きにならないと、100%心酔できない自分がいる。ファッションとかムードが良ければ、音楽的にはそこそこでも好きになりますね(笑)」
――「ファッションがもう少し好みなら、大ファンになったのに」と思うミュージシャンはいますか?
「例えば自身では、表現したい音楽にファッションは重要になってきますか?
「そうですね、ほかの人の音楽でもそうだな。やっぱりそのアーティストのファッションも含めて好きにならないと、100%心酔できない自分がいる。ファッションとかムードが良ければ、音楽的にはそこそこでも好きになりますね(笑)」
――「ファッションがもう少し好みなら、大ファンになったのに」と思うミュージシャンはいますか?
「例えば『レッド・ホット・チリ・ペッパーズ』は好きですけど、ファッション的にはそんなに好みではないから、ちょっと違うかなとは思います。曲は大好きなんですけど、部屋にポスターは貼らない、という感覚でしょうか」
――今年3月の武道館ライブでも、改めてTHE COLLECTORSは大きな会場が似合うバンドだと思いました。加藤さんは「ブレイクしたい」「もっと売れたい」など、ときどき冗談混じりでおっしゃられますが、その度にコータローさんは「これくらいでいいんじゃない?」的な返しをしていますね。
「何をもってブレイクというのかは分からないけど、武道館が毎回できるようになるのはなかなか難しいのかなと思いますね。今の時代、CDが何百万枚も売れるわけではないですし、成功、ブレイクの形も以前とは違うと思うんですよ。そういった意味でも僕は、バンドが普通に続いていけばいいんじゃないかなと思います。ライブをやればそれなりに人が集まりバンドが継続できているのだから、『これが成功でなくて何なんだ?』と思いますけどね」
――でも、野望があるとすれば?
「まかり間違って何かのきっかけがあったとしたら、東京ドームで演奏してみたいですね。東京ドームでのTHE COLLECTORSのセットリストを考えてみたいです」

古市コータロー
1964年5月30日、東京都出身。1987年11月、THE COLLECTORSのギタリストとして、アルバム「僕はコレクター」でデビュー。以来25枚のオリジナルアルバムをリリース。2017年3月のメジャーデビュー30周年、2022年の35周年では、日本武道館公演を成功させている。
並行して1992年より、ギタリスト、ボーカリストとしてソロアルバムを発表。また、GSバンド「Kotaro and The Bizarre Men」、加山雄三率いる「THE King ALL STARS」にギタリストとして参加するなど、多くのアーティストとも共演。近年では俳優としても活動し、NHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」に出演し、多岐に渡って活躍中だ。
2009年よりスタートした、THE COLLECTORSのボーカリスト加藤ひさしと共に配信するポッドキャスト「池袋交差点24時」が話題となり、2009年にはiTunesのポッドキャスト番組ベスト25に選出され、現在も好評配信中。2023年1月15日(日)から12月10日(日)まで、東京・渋谷のCLUB QUATTROにて、「THE COLLECTORS CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE 2023」を開催。
「ジューシーマーマレード」
THE COLLECTORS

日本コロムビア 2022年11月23日発売 価格:3,300円
デビュー35周年となる、日本が誇るモッズバンド、THE COLLECTORSの25枚目となるアルバム。先行公開されている「裸のランチ」「ヒマラヤ」など、ブリティッシュビートロックとブリティッシュサイケロックをベースにした、独特のサウンド12曲を収録。
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DUST AND ROCKS
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〒171-0031 東京都豊島区目白3丁目14−7
電話/03-6915-3627
営業時間/
12:00〜20:00(平日)
17:00〜20:00(火曜)
11:00〜19:00(休日)
定休日/月曜
※月曜が祝日の場合は営業、翌日火曜が休み
https://shop.dustandrocks.com
DUST AND ROCKSオリジナルTシャツ(Lサイズ)を3名にプレゼント

右から(A)(B)(C)
過去、約100年のブリティッシュカルチャーを撮影した写真の権利を所有している
「Museum of Youth Culture」とのコラボレーションアイテム。イングランドのバーミンガム、スコットランドのグラスゴーにもミュージアムをつくるプロジェクトが進行中のブランドで、日本でのマーケットで初めて取り組むプロジェクトとして、DUST AND ROCKSがコラボレーションする運びとなったもの。
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