俳優業やアーティスト活動に加え、ファッション誌や舞台挨拶で見せる装いでも注目を集める菅田将暉さん。2022年にはそのこだわりを凝縮したスタイルブック「着服史」を発売するなど、若者のファッションリーダー的存在になっている。そんな彼が特に愛しているのが、古着だ。
「普段、僕が着ているのは、ほぼ古着です。新品に古着をワンポイントで取り入れている人も多いと思いますが、僕は逆。革靴とかキャップとかメガネとか、新しいほうが扱いやすいアイテムは新品で揃え、ベースは古着です。今日の撮影でもアルマーニやC.P. COMPANYの古着を着用しましたが、ああいう洋服はいかにも“古着”っていう感じがしません。新しくはないけれど、その分、ずっと長く着られてきたリアルさがあります。生活との距離感がちょうどいいというか。そこにジャージを合わせるようなコーディネイトがナチュラルに感じられて僕は好きですね」
コーディネイトのベースが古着だと言う菅田さん。そこまで魅了される理由はどこにあるのだろう?
「極端な話ですが、新品だけで洋服を選ぼうとすると、今売っているアイテムのなかにしか選択肢がありません。対する古着は過去に発売されたものすべてが対象です。ワンシーズンの新品と、膨大な選択肢がある古着。この違いは大きいですね。それにいつの時代の誰が仕立てたものなのかわからないけど、巡り巡って令和の時代の僕にぴったりだった。そんな時代を超えたストーリー性と、一期一会の出合いは古着ならではで魅力的です。あと基本的に一点モノだから、他人とコーディネイトが被らないのもうれしい点です」
一期一会の出合いを求めて、古着店はもちろんネットショップも巡回するという。
「ネットを通じて世界中の古着が買える時代なので、海外のショップでも買い物をします。先日はよく利用しているラトビアのネットショップから、こんな内容のメールが届きました。“いつも買ってくれているから、サービスで一着入れておいたよ。似合うと思うから、楽しみに待っていてね”って。それで届いた荷物を開けてみたら、真っ赤なチェックのスカートが入っていたんです。いったい何者だと思われているんだろう? ひょっとしたら日本の10代のギャルだと思われている可能性もありますね」
そう言って笑った。また最近は身体を鍛えており、気になるファッションや欲しいアイテムに変化があると話す。
「ジムに通っていて、身体がデカくなってきました。役づくり? いや、ずっとガリガリだったのですが、その体型に飽きてきたし、30歳も過ぎたので、ちょっと運動をしておこうかなと。今までダボっと着ていた洋服がピタッとしてきたので、上はタイトにして、下半身はズルッとルーズにさせる。そんなコーディネイトに関心があって、海外の体格がいい人のインスタをめちゃくちゃ見ています。古着は総じてサイズ感が大きいものが多いのですが、むしろサイズの小さいアイテムを最近は探しています」
また、体格が変化したことで、スケーターっぽいファッションにも興味が出てきたそう。
「これまでは短パンとか8分丈のパンツを履くと、足が細くて貧素に見えてしまうので、スケーターっぽいファッションは避けがちでした。でも、身体が大きいと、腰パンにしてズルズルに履いてもサマになります。本当は髪型も坊主にしたいんですけど、仕事上できないので、それが悩ましいところです。洋服の色も蛍光カラーやシルバー、素材も透明や透け感のあるものなど、筋トレをしているせいか、何かとスポーツ系のアイテムが気になっています」
確かに身体がひと回り大きくなっている。30歳を迎え、今後ファッションの面でも、新しい“菅田将暉”像でファンを楽しませてくれるに違いない。
そんな菅田将暉さんが主演する映画「ミステリと言う勿れ」が、9月15日から公開されている。ドラマ放送時から反響の大きかった作品だが、どんな点が支持されたと感じているのだろうか?
「この作品は会話劇です。だから、原作の田村由美先生の思考やセリフがみんなに刺さったということではないでしょうか? また主役の整くんは、誰もが当たり前だと感じることに対して、それがルールだと誰が決めたの?と、疑問を呈します。その指摘が面白かったのではないかと思っています。また、事件を扱った作品ですが、『ミステリと言う勿れ』という名前にある通り、いわゆるミステリーものではありません。通常の事件モノが犯人を問い詰めていくのに対して、本作では加害者側の論理・理由を探っていきます。特に整くんは加害者と繋がり、その思考をきちんと考える。被害者の救済も第一ですが、加害者側もある意味で被害者として扱う。そんな視点がこの作品の面白いところかなと、個人的に感じています」
また、映画の撮影を前に「またあの戦いが始まるんだなと、ドキドキしてます」とコメントを残していた菅田さん。どんな思いで“戦い”と表現したのか、その思いを聞いた。
「ひとつは膨大なセリフ量との戦いです。今回、打ち合わせの段階から参加させてもらっているのですが、『ここのセリフは残しましょう。必要なんで』と、自分で残した長セリフなのでミスれないという思いがありました。しかも、整くんは『常々思っていることなんですが……』が口癖です。ということは、スラスラと言い慣れていないといけません。それが自分との戦いでした。もうひとつはセリフの喋り方です。彼は人を責めるのではなく、あくまで問題提起のために語ります。だから、セリフに感情を入れ過ぎてはいけないと思うんです。整くんは感情的ではない議論を大事にしているので、その胆力を表現するのが、戦いでもありました」
最後にドラマを見ていた視聴者、あるいは未見の人に向け、映画ならではの本作の魅力を語ってもらった。
「連続ドラマの場合、撮影日数や時間がタイトということもあり、現場を止めて話し合いをするのが難しいという事情があります。でも、今回の映画の現場では、撮影の準備に時間がかかることもあり、共演者と話し合いの時間を持つことができました。みんなで謎を解いていくようなストーリーで、特に関係性が重要な作品なので、会話のやりとりや、リアルなリアクションの練度を高めることが必要でした。たとえば途中、ファミレスで会議をするシーンがあるのですが、それぞれが作品に対して抱いている意見を出し合うことができました。ドラマ版では、僕がひとりで考え解決することが多かったのですが、今回はみんなで考えて解決しています。その作業が実際にできた点はドラマとの違いですし、映画版ならではの魅力になっていると思っています」