2019年3月号以来、2度目の本誌、登場となる小池徹平さん。「釣り」がテーマの本号の表紙を飾るにふさわしいゲストだ。自身のYouTubeチャンネルでも、たびたび釣りの模様を配信している。釣りは幼い頃、父親の影響ではじめたのだという。
「あれは、いつごろだったかな。中学生のときだったと思います。父親がなぜか突然、釣りにハマりだしたんです。家に釣り道具が増えていけば、自然とこっちも興味を持つじゃないですか。“やってみるか?”と父親にいわれて、連れて行ってもらったのが、はじめての釣りでした。安い道具を買ってもらってブラックバスを釣りに行ったのをよく覚えています」
ビギナーズラックで大物を釣り上げ、ハマってしまった。王子感のある小池さんだけに、そんなドラマチックな展開を予想したが、まったく釣れなかったという。しかも、しばらく釣果をあげることができなかったそうだ。
「まあ、釣れなかったですね。近所に野池があったので、自転車に乗って一人で釣りに行くようになったんですけど……」
釣りの神様に試されていたのかもしれない。本気で釣りをするつもりなのかと。その日は突如、訪れた。
「いつものようにルアーを投げて、巻いていました。目の前までルアーが戻ってきて、また釣れなかったかと思った瞬間にブラックバスが現れて、食いつくところが見えたんです。衝撃的な経験でしたね。釣りって、めちゃくちゃおもしろいじゃん! それで一気にハマりました。以来、プレゼントに何がほしいと親に聞かれたら、釣り道具をリクエストするようになって。道具を揃えて、上京するまでは、頻繁にバス釣りをしていましたね」
狙った獲物がかかった瞬間の興奮や、魚を逃さずに手繰り寄せるまでの緊張感は、釣りをやったことがない人には伝わらないかもしれない。とくにバス釣りでは釣れても魚を逃すのが基本だ。したがって、何が楽しいの? と不思議がられることもある。小池さんはバス釣りの醍醐味をこう表現する。
「ここにブラックバスがいるかもしれないと、想像して、狙ったところにルアーを投げる。それで思った通りに、ヒットしたときの快感ですね。いつも同じ場所に魚がいるとは限らないし、そのときに使っているルアーとの相性もあります。“今日は、このルアーかな?”と、地形も考慮しながら、投げていきます。同じルアー、同じ場所でも釣れないこともある。だから頭を使いながら、その日の正解を探して、釣る過程を楽しむのが、バス釣りのおもしろさだと僕は思っています」
また、小池さんはコロナ禍になり、海釣りにもチャレンジするようになったという。同じ釣りでも海は勝手が違うと語る。
「イサキやメジナ、アカハタ、先日は杉浦太陽さんとイナダを釣りに行ったのですが、あまり釣れなかったですね。海釣りとバス釣りでは、何もかも違います。でも、海での釣りは、気持ちいいですよね。スマホを見る暇もないし、非日常で、リフレッシュできます。それに最近は釣って魚を捌いて、食べることの喜びも感じています。子どもたちも喜んで食べてくれるし、自己満足の趣味に終わらないのが、海釣りの楽しさです」
将来的にはタイを釣りあげたいという。そして、親子で釣りに行くのが、夢だと語る。
「自分が釣りをはじめたのは、父親の影響でした。子どもの頃、弟と三人で釣りをしたのは、楽しい思い出として記憶に残っています。だから、僕も将来、息子たちと釣りに行けたらいいな。男同士でキャンプもしてみたい。釣りには、一度だけ連れて行ったことがあるんですけど、怖がっていたので、少し早かったのかもしれません。でも、ときどき思い出したように、そのときのことを僕に話してくれます。だから、楽しかったんでしょうね」
近年は出演ミュージカルでも高い評価を受ける小池さんだが、5月17日(火)からのミュージカル『るろうに剣心 京都編』の公演を控える。当初は2020年秋に上演を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、中止となっていた作品だ。
「まさか上演できるとは思ってなかったので、うれしい思いはあります。ただ、素直には喜べない面もあります。稽古が始まって千秋楽が終わるまで、誰かが欠けるようなことがあれば中止を余儀なくされてしまう可能性もあるんです。だから、引き続き、感染防止の対策を徹底しなければいけません。お客さんも不安でしょうから。とにかくやるべきことをやるだけです」
そう言葉に力を込める小池さん。また、本作の見どころのひとつが、360°回転する客席を活かした演出だ。ステージだけではなく映像をスクリーンに映し、音楽や照明が一体となった演出がなされる。映画化もされた人気作だが、気負いはない。
「みんなが知っている作品なんで、むしろ、それを演じられるのは光栄です。原作のイメージがあっても、おもしろければいいと思っているので、楽しんでもらえるようなミュージカルにしたいですね。だって、あの剣心が歌うんですよ。その時点で原作にはない見どころじゃないですか。ミュージカルって華やかなイメージがありますが、悲しみやセリフでは伝えられない思いを歌で表現できるのも魅力。迫力のあるサウンドにのせた歌声、一流のダンサーのパフォーマンスは、まあ、美しいんです。非日常感を味わいに来てほしいですね」