今夏は大人の色気が際立つシックな装いに大注目。しかも、異素材を組み合わせたり、ストールでアクセントを付けるなど、ひと工夫を加えるだけで着こなしのグレードが格段にランクアップする。そんな上級シックでスマートな夏を過ごそう。
Photos : SATOSHI OSAKI
Styling : MASAHIKO KURODA
Hair&Make : KAORUKO ISHII
ハイテクスニーカーを合わせ
足元に軽やかさをプラス
フォーマルも異素材使いで
立体感を生み出す
ストールを巧みに使い
胸元に視線とボリュームを集める
知的なモノトーンスタイルは
ジャストなサイズ感がキモ
Interview
漫画が原作のコミカルな役を演じたかと思えば、シリアスな二枚目役でドラマに華を添えることもある上川隆也さん。20年を超えるキャリアを持ち、俳優として確固たる地位を築いている。演技の幅の広さの裏に、どんな素顔をもっているのかと思えば、自分を大きく見せようという虚栄心がまるでない、驚くほど実直な方。
「演技をさせていただいている間は自分に多少なりとも価値があると思っていますが、果たして芝居をしていない自分に価値があるのか、測りかねています。自らを虚飾するような演出を伴わせることができないというか、するに及ばない人間だという自覚があります」
そして、「役を離れてしまった自分への価値は重要ではない」とまで言い切る。私服へのこだわりを聞けば、「ちゃんと洗ってあるもの。身の丈に合っていて、サイズ感に齟齬がないもの」とだけ答える。もちろん外見に無頓着ということではなく、会う相手や場所、いわゆるTPOにだけしっかりと気を配る、というシンプルな考え方。
生活のすべてが役者という仕事を中心に動いているのだ。
「あまり人前に出るのが好きではなかったのですが、演技をしたり役を担っている間だけは、普段の自分では思ってもみないことや、日頃は口にも出さないようなことを、何食わぬ顔で言うことができます。それがとても面白く思えたんですよ」
そんな上川さんが、いま挑んでいるのは、WOWOW開局25周年記念ドラマ『沈まぬ太陽』だ。時代を超えて読み継がれる名作の多い山崎豊子氏原作で、スケールの大きさから、映像化は不可能だと言われていた同作。上川さんは主役の恩地元(おんち はじめ)を演じ、タンザニアやドバイでのロケも敢行したそう。
「タンザニアではアルーシャという山の裾野の街に拠点を置き、そこからキリマンジャロの麓にある平原に出かけ、撮影を行いました。シマウマが目の前を横切ったり、インパラやヌーの群れに遭遇したりと、広大なサファリパークに放り出されたような感覚でした。現地の方に伺ったら、僕らが訪れた時期は年間を通じて、一番すごしやすい季節だったそうです。確かに気温は40度を優に超えていましたが、湿気のない乾いた風が心地よかったですね」
こうした海外ロケで撮影された、壮大な景色が本ドラマの見どころのひとつとなっている。そして、恩地元を演じるうえでも、大きな意味を持つ撮影になったという。
「似たような風景の場所を日本で探して、さもアフリカにいるように撮影することも映像的には可能だったのかもしれませんが、あの広大な自然に立ったときの感銘は恩地を演じる僕の心情にもそのまま滑り込んできました。アフリカは恩地が左遷され続けて、行き着いた場所。台本を読んだ段階では彼の心情を汲み取れない部分もありました。でも、現地に行くことで虐げられた場所であると同時に、彼を再生させてくれた場所でもあったのだとはじめて実感することができました」