インプットすべき エンタメ作品たち

エンタメ初め。Entertainment works '25

2025年がスタートした。今年も仕事やプライベートに充実した毎日を送りたいと、意気込んでいる読者も多いだろう。ビジネスマンが結果を出すために大切なことはたくさんあるが、インプットもそのひとつ。日頃から良質なエンターテインメントに触れることで、感性が磨かれ、アイディアも出るようになる。ただ、自分の好みだけで作品を選んでいては、偏るだろう。そこでアートや映像作品、そして漫画に精通したプレゼンターたちに、今年見るべき作品や展覧会を厳選してもらった。これらのエンタメは、必ずインプットされたし。

Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)

2025.1.15

2025年にインプットすべき 漫画・漫画家

書籍や雑誌の市場が縮小するなか、コミック市場は右肩上がりの成長を続けている。アニメや映画化される作品も多く、ドラマの原作になることも頻繁だ。紙のコミックスはあまり読まなくなったという人でも、通勤時間はスマホで漫画!という人もいるのでは? そんな漫画だが、Webでの連載やマンガアプリも増えたことで、年間に発表される作品が膨大な数になっており、そのなかから素人が良作を探し出すことは難しい。そこで、大量に作品に目を通している漫画読みたちに、おすすめの作品・漫画家を聞いた。

まんだらけスタッフ・臼井宏允が選ぶ 2025年の漫画・漫画家は?

臼井宏允

2010年、まんだらけ入社。現在は中野店コミックフロアで総責任者を務めている。テレビ、雑誌への執筆などメディア出演も多数。なお、まんだらけ各店では【2024年面白かった漫画を語ろう】特設コーナーを展開中!まんだらけコミックスタッフが2024年を彩った傑作漫画を、それぞれ厳選し、手書きキャプションとともに紹介している。漫画選びに迷ったら、ぜひ参考にしたい。詳細はこちら
https://www.mandarake.co.jp/information/event/2024/shonen-caption/

漫画家・あらゐけいいち

漫画家・あらゐけいいち

2006年に「コミックフラッパー」にて漫画家デビューを果たした、あらゐけいいち先生。その後、「月刊少年エース」にて『日常』の連載を開始した。同作は2011年にテレビアニメ化され、2012年には『日常 Eテレ版』としてNHK Eテレでも放送されるなど、一躍、人気漫画家へ。そんな『日常』の連載が終了したあと、約1年の準備期間を経て「モーニング」にて連載をスタートさせたのが、『CITY』だ。普通の“CITY”に住む、ちょっと普通じゃない人々の生活を、主人公・南雲美鳥をはじめとした多彩なキャラクターたちを通して描いた良作。

臼井宏允

大手出版3社で連載を抱えながらもXにて近況の1ページ漫画やイラスト仕事、個人誌制作など、驚きの仕事量で読者を常に魅了し続ける、あらゐけいいち先生に注目しています。唯一無二の世界観や色彩は、他の作品からは得難い癒しを与えてくれます。2011年放送の「日常」と同じく京都アニメーション制作で、2025年に「CITY」のTVアニメ化が決定しており、今年は更なる躍進の年となりそうです。

panpanya『そぞろ各地探訪』

panpanya『そぞろ各地探訪』

2000年代後期から自身のウェブサイトやpixivなどで自作イラストの掲載を開始したpanpanya(ぱんぱんや)。2013年に単行本『足摺り水族館』にて商業誌デビューを果たし、以降、年に1冊のペースで短編作品集を白泉社より発表している。緻密に描き込まれた画と、現実と空想が混在した世界観が作品の大きな特徴で、日本のみならず世界中にファンをもつ。

臼井宏允

夢の中のようでもどこか懐かしさを感じる風景や豊かな感性の描写に、世界から注目を集めているpanpanyaさん。旅関係の連載や個人誌をまとめた新刊『そぞろ各地探訪』は、一般的な漫画の枠組みに囚われないこだわりぬいた装丁も素晴らしく、紙で所持する喜びを感じます。2025年4月の一般流通に先駆けて、12月より一部書店にて先行で販売が開始となりました。各書店でデザインが異なる、特典しおりもあるので、各地を探訪するのも面白そうです。

マンガ大好き芸人・吉川きっちょむが選ぶ 2025年の注目漫画

吉川きっちょむ

吉本興業所属のピン芸人。芸人活動の傍ら、Threads/ストーリーズでおすすめ漫画を紹介するなど、漫画に関する情報発信を行なっている。こうした活動が実り、吉本イチ最新の漫画に詳しい芸人としてメディアに出演するほか、『朝日中高生新聞』で連載も担当している。よしもと漫画研究部部長。マンガ好きっちょむチャンネル(https://www.youtube.com/@kittyomz)

売野機子『ありす、宇宙までも』 (小学館)

売野機子『ありす、宇宙までも』 (小学館)

朝日田ありすは、容姿端麗で人気者。彼女は幼い頃に両親からバイリンガル教育を受けていたが、両親の死によって結果的にどちらの言語も拙くなり、日々の授業についていくことができなくなる。そんななか、ありすが出会ったのは、孤高の天才・犬星類だった。犬星は算数オリンピックをはじめとしたコンクールに参加すると常にグランプリを奪っていくような成績優秀者だったが、性格の悪さから、皆に敬遠されていた。そんな犬星が朝日田ありすの夢を応援するようになる。両親がいる天国に近づくために、一人の少女が日本人初の女性宇宙飛行士船長になるまでの物語。

吉川きっちょむ

諦めることに慣れてしまった現代の老若男女が読むべき作品。早くに両親を亡くしバイリンガル教育が半端になったため日本語も英語も拙いまま成長した少女が、とある出会いから自らの現在地を自覚し、一歩踏み出し、宇宙飛行士を目指す。若くして自らの人生を諦め、生まれ変わってやり直すことばかり考えている少女の悲痛さに涙し、自分の状態に名前が付き、再び立ち上がる健気さにまたグッとくる。朝ドラのように全世代に響く再生と成長の物語。

外薗健『カグラバチ』 (集英社)

外薗健『カグラバチ』 (集英社)

刀匠を志す少年チヒロは、父の下で日々修行に励んでいた。おちゃらけた父と寡黙な息子。笑いの絶えない毎日がいつまでも続くと思っていたが…ある日悲劇が訪れる…。血塗られた絆と帰らない日常。少年は憎しみを焚べ、決意の炎を心に宿す…。シリーズ累計(発行部数)130万部を突破した週刊少年ジャンプで連載中の剣戟バトルアクション漫画。

吉川きっちょむ

2024年に続いた『呪術廻戦』『僕のヒーローアカデミア』の完結前からジャンプの次の看板としてメキメキと頭角を表してきた、刀と妖術の現代バトルアクション復讐劇。『NARUTO』の画風に影響を受けた正当後継者であり、映画『ジョン・ウィック』をはじめアクション映画の引き出しを感じさせるコマ運びは構図・カメラワーク・演出のセンスがずば抜けている。次にくるマンガ大賞2024コミックス部門1位も納得の凄み。

マンガライター・ちゃんめいが選ぶ 2025年の注目漫画

ちゃんめい

マンガライター。マンガを中心に書評・コラムの執筆のほか作家への取材を行う。月に読むマンガの数は100冊以上。主な執筆媒体に、ダ・ヴィンチWeb、Real Soundブック、文春オンライン、コミックナタリー、QJWeb などがあり、トークイベントや雑誌のマンガ特集にも出演している。X(@meicojp24)にておすすめのマンガ情報を発信中。

塚田ゆうた『RIOT』 (小学館)

塚田ゆうた『RIOT』 (小学館)

舞台は海が見える穏やかな田舎町。近所には本屋さんもレコード屋さんもないけれど、スマホであらかた手に入る。そんな令和の高校生「シャンハイ」と「アイジ」が主人公。彼らが知らず知らずに惹きつけられたのは、どういうわけだか「紙の雑誌」だった。だったら作ってみたらいいじゃん! そんな軽いノリではじまった挑戦だったが、彼らの出来心は「静かな革命」を起こしていく。閉塞感と焦燥感を抱えながら、初期衝動で突き進んでいく、懐かしくて新しい文化系青春ストーリー。

ちゃんめい

著者にとって初連載となる本作。令和の高校生がZINE(紙の雑誌)を作る物語で、誰かと一緒に“好き”を共有する喜び、手探りの青い情熱、そして眩しいほど初期衝動が詰まっている。過去に体験していないはずなのになぜか懐かしさを覚えてしまう、通学路や教室の情景、体温の通ったキャラクター描写にも注目。

志波由紀『悪魔二世』 (KADOKAWA)

志波由紀『悪魔二世』 (KADOKAWA)

母を亡くしたばかりの高校生・菊光は居候先の親戚に煙たがられている。なぜなら、菊光の父親は「悪魔」だから。悪魔の強大な力と人間の優しき心を併せ持つ、二世の少女の物語。新鋭・漫画家、志波由紀のデビュー作。現在、KADOKAWAが年10回刊行している漫画誌『ハルタ』(Harta)にて連載中。

ちゃんめい

マンガ好きたちの間で熱狂的な支持を集める『ハルタ』にて連載中。こちらも著者にとっては初連載作品で、主人公は人間の母と悪魔の父の間に生まれた少女・菊光。彼女は親から受け継いだ力で悪魔退治をするのだが、まるで白昼夢のようにふわっと日常から非日常へと切り替わる瞬間たるや…。著者特有の凪を感じるような唯一無二の筆致が、空間はもちろん、人間と悪魔の曖昧さを加速させ不思議な読書体験へと私たちを誘う。

アニメと漫画好き芸人・天津飯大郎が選ぶ 2025年の注目漫画

天津飯大郎

お笑いコンビ「天津」のボケ担当。2024年2月に天津飯大郎に改名した。アニメや漫画好きで知られ、アニメ関連のイベントMCなどを多く務めるほか、漫画原作も手がけている。TBSラジオ毎週日曜19 時から「川島明のねごと」、TBS ラジオ毎週日曜20 時から「ラジオ五等分の花嫁」、文化放送超A&G+で金曜22時から「本渡上陸作戦」、そしてニッポン放送 Podcast 毎週木曜配信「田所あずさと天津飯大郎のどうせワレワレなんて…」にレギュラー出演中!

タアモ『僕だけが知ってるんだぜ』 (講談社)

タアモ『僕だけが知ってるんだぜ』 (講談社)

ワケあって転校した高校生の平家和玖は、転校先の学校でクールな同級生・小裏さんと出会う。有名モデル・あかりを姉に持ち、いっさい笑わない小裏さん。孤高の存在かのように見えた彼女だったが、ひょんなことから和玖は小裏さんの笑顔を見てしまい……。『たいようのいえ』などで知られる漫画家・タアモによる青春ラブコメディ。現在、『good!アフタヌーン』(講談社)で連載中。

天津飯大郎

1話を読んだだけで、今までいろんなラブコメを読んできた体内の細胞が「名作!」と叫びました。設定、主人公のひたむきさ、ヒロインの可愛さ、2人の表情、そして1話のラストの言葉。これは傑作です。おそらく2025年単行本が出たら賞を取る、そんな作品です。

さかめがね『遠くに行ってしまった気がした推しが 全然遠くに行ってくれない話(草村しげみ)』

さかめがね『遠くに行ってしまった気がした推しが 全然遠くに行ってくれない話(草村しげみ)』

人気VTuber・草村しげみは、長い下積みを経て現在はチャンネル登録者数が130万人を超える人気配信者。チャンネル登録者第1号の古参ファン・ナナシノは過去と違い有名になった彼女の現在を嬉しくも少し寂しくも感じつつ、いちリスナーとして草村しげみの配信を支え続けていた。そんなナナシノを彼女も大切に思い続け、彼のコメントに反応したり、アンケートでナナシノの意見を採用するのだった。そんな二人を他のファンも微笑ましく見守っている。「次にくるマンガ大賞2024」のWebマンガ部門で第3位を獲得した作品。

天津飯大郎

登録者数130万越えの人気Vtuberが、一番最初に登録してくれた「ナナシノ」という古参を、当時と変わらず接するという話なんですが、心にキュンキュン刺さりまくります。草村しげみの可愛さ、一途さが最高で、それと配信中流れてくるコメントの質も高く面白さも抜群です。