
近年は邦画や国内ドラマへの出演に加えて、海外作品でも活躍している福士蒼汰さん。きっと各地で名店に足を運ぶ機会もあるだろう。そう思い、尋ねると、福士家のお正月の過ごし方に話が及んだ。
「名店というテーマを聞いて、真っ先に頭に浮かんだのは、毎年実家でお餅を注文しているお米屋さんのことです。古くからお付き合いがあるお米屋さんなのですが、祖父が考案したと聞いているレシピで、正月用のお餅を作ってもらっています。昆布餅と呼ばれる昆布を練り込んだお餅で、粒が残るくらいに粗く突いた餅米を使うのが、福士家のこだわりです。店主の方が高齢なので、いつまで作れるかわからないと言われているのが不安ですが、これを食べないと新しい年がはじまった気がしないくらい、僕にとっては欠かせないお正月料理です」
焼き餅にしたり、お雑煮に入れて食すのだとか。
「お餅を食べ終えたら、そこへまた新しいお餅をお雑煮に加えます。そうやって継ぎ足していくうちに、だんだんと出汁の味が濃くなり、さらに美味しくなっていくんです」
話すうちに思い出したのか、福士さんの表情がほころんだ。また、誕生日など記念日に家族で必ず集まる、行きつけの海鮮屋さんがあるという。
「家族みんな海鮮好きで、とくにエビやカニなどの甲殻類や貝類が好物です。去年も姉の誕生日には、家族でそのお店に集まりました。大人になると、それぞれに予定があるものですが、なんだかんだ予定を合わせて、毎年集まっています」
家族との団欒には、いつも名店の存在があるわけだ。
「ほかにも、よく訪ねるお店があります。たとえば、大阪の難波にある日本橋・藤久。事務所の方に教えてもらって通うようになった和食のお店で、好みに合わせて料理を提供してくれます。『海鮮は好きだけど、生の貝が苦手』と伝えると、さっと七輪を持ってきて、焼いた貝を食べさせてくれたり。最後の晩餐に決めているほど、『焼き蛤』が大好物です(笑)。仕事で大阪に行ったら、予約が取れるか、必ず電話しますね。岡田准一さんに連れて行っていただいた九州の小倉にある天寿しさんもそう。あまりの美味しさに感動して、近くを訪れるたびに立ち寄らせていただいています。ああ、また食べたいな」

次々と出てくる名店や食のエピソードを聞いていると、食に対するこだわりの深さを感じるが、本人は「好きなもの以外は、まったくこだわらない。味よりむしろ栄養素を気にします」と笑う。好きなものにはとことんこだわり、それ以外は無頓着。
「ファッションに関しては、体型が変わらない限り、同じものを長く着続けるタイプです。少し前に仕事で増量する機会があったのですが、持っていた服の大半が着られなくなってしまい、数年ぶりに買い物に行きました。服をまったく新調しない年もあります。そんな調子なのでファッションには疎くて、スタイリストさんに買い物に付き添ってもらうこともあります。ただ、いざ買うとなると、こだわりたくなるんですよね。パンツはストレートタイプが好みで、シルエットもトップスはタイト気味、ボトムはちょっとゆとりがあるといいですね。いわゆるAラインみたいなシルエットが多いと思います。90’sの少しレトロでかわいいスタイリングも気になりますが、『頑張っておしゃれしてます!』って見えちゃうと恥ずかしくて」
また、普段使っているカバンは長年使っている、愛着のあるものだという。
「数年前に手作りのカバンをプレゼントでいただきました。これが台本を入れたりするのにちょうどいい大きさで、いつも現場に持って行くのですが、もうボロボロになってきて。でも、それを作った方に伝えると、直してくれるんです。しかも、そのたびにアップデートして戻ってきて(笑)。『間口が閉まるようにボタンを付けました』とか、『ショルダー掛けできるように変えておきました』って。おかげでずっと愛用しています」

そんな福士さんが出演するフジテレビ系ドラマ『東京P.D. 警視庁広報2係』が現在、放送中だ。警視庁の広報課を舞台にした異色の社会派警察ドラマで、福士さんは強行犯係から突然広報課へ異動してきた、主役の今泉麟太郎を演じている。
「今泉は正義感が強くて、人を守れなかった過去にすごく責任を感じています。だからこそ、強い人間でありたいと思っているのですが、広報課に異動させられてしまいます。自分がやりたい仕事ではなく、戸惑いを感じていたのですが、彼の持つ熱さや真面目さが、広報課で生きる瞬間があり、それが周囲の人にも影響を与えていきます。そして、警視庁という巨大な組織の渦に巻き込まれていき、彼の正論や未熟さが衝突を生むストーリーですが、社会の理不尽さを炙り出すヒーローだと思って演じています」
本作は、警視庁で報道記者の経験を持つ人物が原案者となっており、リアリティーにこだわっている。
「たとえば、事件の実名報道で起きる加害者や被害者の人権問題。あるいは報道協定が警察とメディアで結ばれた時、何を公にし、何を秘匿するのか、情報がコントロールされているケースがあります。日頃、僕らが見ているニュースでも、裏側では駆け引きや情報を出す側の思惑があったりします。そんな、実は身近で起こっている出来事を扱い、いま見ているものがすべてじゃないことが明るみになっていきます。加害者の実名は報道されず守られているのに、名前が報じられた被害者はネットで叩かれる。今泉を通して、こうした事件や事故にまつわる問題点が伝えられる作品になっていると思います」
刑事・警察ドラマといえば、事件の捜査を中心にしたアクションやコメディ作品が多く、メディア対応を担う広報課を扱ったものは少ない。葛藤や熱さを秘めた今泉を演じる福士さんは必見である。