江口洋介
YOSUKE EGUCHI

深刻な顔をしても幸せはやってこない。息長く活躍する、江口洋介のライフスタイル

2011年9月に創刊された本誌、GOODA。
13年間にわたって男性の憧れのライフスタイルや
ファッションスタイルを模索してきた。
価値観は時代によって変化するため
ひとつの正解があるわけではないが、指針は見つけたい。
そこで、1990年代から現在まで
いつの時代も“かっこいい”の最先端にいる俳優・江口洋介に
第一線で活躍し続けるための秘訣と
自分をアップデートするライフスタイルについて聞いた。

Photos : TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Styling : SHOGO ITO(sitor)
Hair&Make : RYUJI NAKASHIMA(HAPP'S.)
Text : SHINSUKE UMENAKA(verb)

2024.9.17

第一線で活躍を続ける秘訣は自分に飽きないよう変化し続けること

90年代は数々のトレンディドラマに出演。トレードマークだったロン毛は、当時の若者に絶大な影響を与えた。その後、年を重ねるごとに演技に円熟味が加わり、日本を代表する俳優へ。そして、作詞作曲を自ら手がけるシンガーソングライターとしての顔ももつ。30年を超えて、第一線で活躍を続ける江口洋介さんは、“自分に飽きないようにする”ことが大切だと語る。

「色々な役をやらせていただくので、自分自身に変化を求めるのはもちろんですが、大事なのは気分良くやること。無理をしてもしょうがないし、楽しめないと良い表現なんてできないんじゃないかな。だから、人生を楽しむためには、洋服でテンションをあげたり、食事や音楽も、好きなものや気に入ったものをどんどん取り入れる、つまり“自分に飽きないように変化し続ける”必要がある。自分の手がとどく日々の暮らしが整えば、その先にある仕事もテンポ良く進んでいくと思っています。気持ち良くやれたら、結果もついてきますから」

また、常に刺激を探していると語る。ステージに立ち続ける海外のアーティストたちの姿も刺激を与えてくれるという。

「先日、ロンドンまで行って、ブルース・スプリングスティーンのライブを観てきたのですが、74歳だというのに、3時間歌いっぱなし。オールスタンディングだったのですが、お客さんからパワーをもらっているみたいで、ぜんぜん疲れた様子が見えないんですよ。公演は2デイズだったし、超人的です。あんなパワフルな歳の取り方を見せられると、こっちも負けてられないなって励みになります。それに彼はずっと応援歌を歌っていますが、それを照れずに続けています。背負っているものがあるからこそ、できることなのかもしれません。孤独な人間に対する優しさが根底にあって、それを何十年も続けるとあんな人間になれるのかもしれません」

江口洋介

ベテランは いじられるくらいがちょうどいい

また、長く活動するうちに、大半の撮影現場では年長者になった。共演者やスタッフの多くが年下だ。そのため江口さんは自身の振る舞いに気を配っているという。

「撮影現場では、気難しい人だと思われないよう、“軽い人”でいることを心がけています。共演者が深刻そうだと関わりにくい。“軽さ”ってコミュニケーションを取るうえで、武器になると思うんです。だから、軽く、明るく、が僕のポリシー。現場に着いたら、新しいものを仕入れたいっていう気持ちもあるし、座っていることはほとんどありません。考え込んで、撮影を止めてしまうなんてもってのほか。俺みたい年長者がそれをやってしまうと、空気も悪くなって、マイナスなことしかありません。ベテランは、いじられるくらいのほうがバランスがいいんです。難しい顔をしないためにも、気分良く現場に行くようにしています。もちろん若い頃は自我を出して、意見がぶつかることもあったんですけど、今はそんなことをしても意味がない。だから、軽やかに、気持ち良く。これでいいんですよ」

大御所や重鎮といった立ち位置や印象を良しとせず、現場の空気をつくるために気さくな人であることを心がける。経験からくる大人の余裕が、江口さんの魅力でもあるのだろう。

江口洋介

歌うことで自分を鼓舞して みんなを勇気づけたい

そんな江口さんだが、近年は俳優業と並行して、アーティスト活動に力を入れている。今月には楽曲「Ride On〜新しい日々」がデジタル配信され、10月23日には26年ぶりとなるCDアルバム「RIDE ON!」のリリースが決定。さらに11月にはビルボードライブ大阪と、ビルボードライブ東京でのライブも決定している。俳優業に加え、自分で作詞作曲をし、シンガーソングライターとしてライブもこなす。二足の草鞋を履く理由を尋ねると、江口さんはこう答える。

「音楽をはじめたときも、俳優をやめるの?って言われていました。俳優をしているのなら、音楽をやる必要ないじゃんって揶揄されることもあります。でも、自分でクリエイトしたいし、やりはじめたら、そんな外野の声は気にならないですよ。音楽は何もないところから自分でつくるのに対して、俳優はスタッフが準備を整えた現場に最後に入って、仕上げをする。全然違う作業だけど、つくり上げるクリエイティブな仕事という意味では同じで、両方をやっていると、それぞれが良い影響を及ぼします」

一時、休止していた音楽活動に再び取り組みはじめたのは8年ほど前だという。しかし、コロナ禍を経て、歌いたい気持ちが増したそうだ。

「歌うことで自分を鼓舞したいという気持ちがあるのですが、一番は聴いてくれる人を勇気づけたいから。その思いはコロナ禍を経て強くなりました。僕らは、当たり前のことが当たり前でなくなってしまう経験をしましたし、自分に何かできることはないかと考えたときに、ギターが一本あれば表現できるんだと再認識しました。ふつふつと歌でみんなを勇気づけたい気持ちが湧いてきて、どんどん曲が出来上がっていきました」

日比谷野外音楽堂でライブをするのが、いまの野望のひとつだと語る。

「いままでやったライブのなかでも、野音には強い思い入れがあります。東京の空を見ながら歌う。いろんなホールでライブをやってきましたが、あの体験は特別ですから」

Information
デジタル配信シングル 「Ride On〜新しい日々」
シンガーソングライター
江口洋介の再始動を祝う
脚本家・坂元裕二との共作楽曲

劇場版 アナウンサーたちの戦争

10月23日に発売される26年ぶりのCDアルバムからの先行配信シングル。アレンジをトオミヨウが手がけ、作詞は盟友である脚本家・坂元裕二との共作楽曲になっている。新しさと懐かしさが同居する楽曲に、江口の想いを込めたポジティブなメッセージソング。11月6日にはビルボードライブ大阪、11月12日にはビルボードライブ東京でのライブが決定している。

作詞:坂元裕二、江口洋介 作曲:江口洋介 編曲:トオミヨウ
9月25日(水)よりダウンロード販売およびストリーミング配信予定
https://www.universal-music.co.jp/eguchi-yosuke/

江口洋介
プロフィール
江口洋介(えぐち ようすけ)
1968年1月1日生まれ。東京都出身。1986年、俳優デビュー。1990年代に入ると、『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』『愛という名のもとに』など人気テレビドラマに立て続けに出演し、脚光を浴びる。1993年の『ひとつ屋根の下』ではテレビドラマ初主演を飾った。以降、数々のテレビドラマ、映画に出演し、2024年には『沈黙の艦隊 シーズン1 〜東京湾大海戦〜』(Amazon Prime Video)や、『忍びの家 House of Ninjas』(Netflix)など、配信ドラマにも参加。また、1988年にはシンガーソングライターとしてアーティストデビューを果たし、これまでにシングル11枚、アルバム12枚をリリースしている。