今年3月の第45回日本アカデミー賞で、「ヤクザと家族 The Family」と「劇場版 きのう何食べた?」の演技が評価され、新人俳優賞を受賞した磯村勇斗さん。今後も出演作の公開が続々と控えている。そんな“旬”の男の素顔は、実にGOODA的だった……。
映画鑑賞やサウナが趣味で、最近のマイブームは釣り。2017年のNHK 連続テレビ小説「ひよっこ」では、見習いの料理人を好演していたが、調理シーンを自ら演じるほど、包丁の扱いに手慣れている。そして料理道具には、こだわりがあると語る。
「18歳で上京してから、ずっとひとり暮らしをしていて、厨房でのアルバイトの経験がもあったので自炊は苦ではないですね。パパッとつくることもあれば、献立を考えて手の込んだ料理に挑戦する日もあります。お皿を買うのも好きなので、盛り付けにもこだわりますね。また鋼の包丁や、鉄のフライパンなど、きちんとケアしないと錆びてしまう調理道具を吟味して購入したり、徐々に手に馴染んでいく過程を楽しんでいます。1点モノのブーツみたいに磨いて育てています」
料理のレパートリーも和食からスパイスカレー、そしてフレンチと幅広いという。
「レシピはほとんど見ません。アルバイト時代に教わった知識と勘が頼りです。目分量で味付けをし、味覚が覚醒する瞬間というか、想像を超えるような美味しい一品になったときはテンションがあがります」
ただし、魚を捌くのは苦手で、それが悔しいのだと磯村さんは語る。
「魚は上手く捌けないので、スーパーで手に取るのは、いつも切り身。でも、隣を見ると、鮮魚が丸ごと売っていたりするじゃないですか。いつか、そっちに手が出せる男になりたいなって思っています。まだ捌いたあとの生ごみの臭いが気になるし、挑戦する勇気が出ませんが、今年から釣りをはじめました。ゆくゆくは船舶免許を取得して、自分の操縦でマグロを釣る。それを船上で捌いて、その場で食べることをゴールにしています。実現したら、きっと素晴らしい趣味になるだろうな」
そんな磯村さんの多彩な趣味生活に、近年、新たに加わったのが、観葉植物だ。
「まだ10鉢くらいしかないのですが、コーデックスも持っています。都心の園芸ショップよりも割安で手に入る郊外の店舗に足を運んでは、買い増しているのですが、いまの3倍くらいには植物を増やしたいなと思っています」
自宅のグリーン化に熱を入れはじめたのはまだ1年くらいだという。しかし、そのきっかけは想像の斜め上をいく、“犬”という回答だった。
「本当は犬を飼おうと思っていたんです。でも、その頃、観葉植物を枯らしてしまって……。“植物ひとつ育てられない男に、犬を飼う資格はない!”と、まずは植物を愛して、自宅を癒しの空間にすることを自分に課したのが、はじまりです。ただ、改めて植物を育てるようになって、いろんな発見がありました。頼りなかった植物の葉が増えて、大きくなっていく。その過程を見ていると、愛おしくなってくるんですよ。水をあげるときも愛情を込めると、葉がピンとして、枝もキュッと引き締まっていく気がします。“お、ありがとうっていってるな”って、それを見るたびに、植物と通じ合えたと感じるんです」
そして、磯村さんに、これから観葉植物を育てはじめる人へのアドバイスをお願いすると、こう答えてくれた。
「最初のつまずきになりがちなのが、水やり。品種によって水をあげる頻度は変わるのですが、コーデックスと呼ばれる塊根植物は、乾燥地帯など厳しい自然環境で育つので、茎や根に水分を蓄えます。だから、頻繁に水をあげる必要がないので、初心者にも扱いやすくて、オススメですよ」
6月17日(金)からは、磯村さんが出演する映画「PLAN 75」が劇場公開される。主演は倍賞千恵子さんで、本作は第75回カンヌ国際映画祭の「ある視点部門」にも出品される予定だ。舞台は、高齢化社会が一層進んだ架空の日本。75歳以上の高齢者が自ら死を選び、それを国が支援する「プラン75」という制度が成立した世界で、磯村さんは役所場で申請業務を淡々とこなす青年を演じる。説明的なセリフを極力、廃した演出が印象的で、ドキュメンタリーのようなリアリティを感じさせる作品だ。
「脚本を読んで世界観に魅了されました。たまたま日本の高齢化社会が進んだらどうなってしまうんだろう? って、考えていたこともあり、自分の感覚と作品がリンクして、出演したいと思いました。荒唐無稽なストーリーだけど、現実にこんな制度ができてもおかしくないと思わせるリアリティがあります。『PLAN 75』という作品を通じて、世の中を良くするための何かを考えるきっかけになってくれれば、嬉しいですね」
と、出演を決意した理由を語る。また、本作では倍賞千恵子さんや、たかお鷹さんなど、大ベテランとの共演になった。撮影を通じて、何か学びがあったのかと尋ねると、こう答えてくれた。
「みなさん、すごく自然体でカメラの前にいるように感じました。無理をしないというか、椅子に座っているだけでも、佇まいが違います。若い俳優だと、あの味は出せません。人生経験や、お芝居の積み重ねから生まれる説得力なのだと思います。僕もその域まで達したいです」
作中で、高齢者たちは自ら、人生の結末を選択することになる。磯村さんは自身のエンディングを考えたことはあるのだろうか?
「お芝居はずっと続けて行きたいな。死ぬまで。でも、その反面、この世界から離れて、大自然のなかで暮らしてみたいという願望もあります。あとは、人類が誰もやっていないことを挑戦するのもいいですね。たとえば、ブラックホールに飛び込むとか。それが人類のためになるなら、喜んで志願します。歴史に名前を刻むことができるじゃないですか。後世、ブラックホールに突入する行為をISOMURAって呼ぶようになるかもしれませんね(笑)」