数ある料理道具のなかでも、キャンプや登山で使用するアウトドア用の調理器具は使い勝手はもちろんのこと、コンパクトにしまえる収納性や、持ち運びやすい軽量性など、高い機能性が求められる奥深い世界です。キャンプ人気の高まりを受け、豊富な種類が登場していることもあり、長く愛用できるものを吟味して選びたい人も多いはずです。またBBQなどカジュアルなアウトドアレジャーから、ソロキャンプや軽登山といったよりディープな世界にハマる人も増えています。そんな入門者がまず手を伸ばす料理道具のひとつ「クッカー」に注目。荒井康成氏が選び方やオススメの逸品を紹介します。
Styling&movie&photo:YASUNARI ARAI/Edit&Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)
2020.7.15
クッカーとは、キャンプや登山などアウトドアで調理を行う際に使用する携帯用の小型鍋のことです。カレーなどの煮込み料理に使ったり、ラーメンやスープなどの汁物の調理、あるいはご飯を炊く飯ごうとしても使ったりすることができます。アウトドア用のバーナーの火力にあわせて、家庭で使う鍋よりも、小ぶりな点も特徴です。
また完成した料理をお皿にもらず、そのまま食べるときにも扱いやすいサイズ感や軽さ、そして、複数の鍋を重ねて収納できる構造も、荷物を極力減らしたい登山家やキャンパーから愛される理由となっています。
そんなクッカーには、寸胴鍋のような深さのある円筒形のほか、弁当箱のような楕円型や角型など、形状の異なるタイプが複数あり、素材もステンレス鋼やアルミニウム、チタンなどさまざまなものが登場しています。
どのようなポイントでクッカーを選べば良いのでしょう?
アウトドアといっても、設備が比較的整っているキャンプ場での料理なのか、一人で優雅に過ごすソロキャンプなのか、はたまた登山なのか、場所や目的はさまざまで、当然クッカーに求められる性能や特徴は変化します。
たとえば、チタン製のクッカーは熱伝導が優れているため、気温が低い場所や強風で薪の火が安定しない状況での使用であっても調理が可能です。対して、ステンレス鋼のクッカーは軽さという面ではチタンやアルミには劣るものの、その分、耐久性と保温性に優れています。そのため大人数でのキャンプで使用したり、BBQに持参したりする調理器具として向いています。
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スノーピーク
「ソロセットチタン クッカーセット SCS-004TR」軽くて強度の高いチタン製。深型鍋タイプのクッカーは、ポット内にガス缶とストーブが収納できるため、荷物をコンパクトにまとめたいときに重宝する。フタのツマミが熱に強いシリコーン製なのもうれしい。
参考価格 7,678円
クッカーの形状や使用している素材によって、得意とする料理分野が変わる点も事前に押させておきたいポイントです。
たとえば、トランギアのメスティンはフタの閉まりが固く、密閉性に優れているため、ご飯を炊く際に吹きこぼれにくい設計になっています。そのため、クッカーの中でも最も炊飯に向いています。
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トランギア
「メスティン TR-210」1925年創業のスウェーデンメーカー「トランギア」のクッカー。バージンアルミと呼ばれる高品質のアルミで製造されている。ランチボックスとしても使用可能。炊はんの目安は約1.8合まで。
参考価格 6,480円
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男爆鉄板
「メスティン専用 約90mm x 150mm」メスティンと組み合わせて使用する目的で作られた鉄板で、メスティンにぴたりとスタッキング(収納)できるサイズに設計されている。大久保掴み(取っ手)や高級ヘラ、そしてリネン収納袋・保管用耐油紙がセットに。
参考価格 3,680円
また、ステンレスのクッカーは錆びにくく、洗いやすいため、油を多く使う料理や、トマトなどの酸を含んだ料理に適しています。加えて保温性に優れているため、煮物などを多めにつくって、みんなでシェアして食べるといった用途が考えられます。
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ソラ
「キャンピング鍋4点セット クッカーセット」大小1点ずつの鍋、フタ兼用フライパン、そしてフタ兼用皿の4点がセットになった商品。アウトドア用はもちろん、災害時にも重宝する。すべてステンレス鋼。
参考価格 9,752円
荒井 康成 YASUNARI ARAI
料理道具コンサルタント/Kitchenware Stylist
洋菓子店店長、和陶器店主を経て、フランス陶器エミール・アンリ社の日本法人設立に携わる。以後、日本初の「料理道具コンサルタント」として独立し、「料理通信」「ELLE gourmet」など、各食情報誌でのコラム執筆やスタイリング撮影、Panasonic「ふだんプレミアム」や魔法びんのパイオニア「サーモス」のInstagramディレクション、「キユーピーサラダクラブ」や「カルビーフルグラ」など食品会社の販促物スタイリング撮影、食の学校「レコール・バンタン」では講師として、多岐に渡り活動中。著書に「ずっと使いたい世界の料理道具」(産業編集センター刊行)。http://www.araitools.com